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現代短歌最前線-前田康子 感想2

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

前田康子②

 

君の傘失くせしことに始まれる今年の夏も短からむや

 

 この歌なんとなく好き。この歌が好きなのは、安定感なのかなという気がします。「君の傘」なくしちゃうんだけど、それで関係が壊れたりはしないんだもん。「今年の夏も」って表現からは、去年の夏も来年の夏も一緒で、もしかしたらまた君の傘とか何かまああんまり大事じゃないものはなくしちゃうかもしれないけど一緒だよね、ってニュアンスが感じられるから。お互いにちょっとしたミスとか認識の違いとかを許し合ってずっと一緒にいるんだっていう感じがする。

 

水鳥は水に眠るや 川ひとつ越えざる家出繰り返しては

 

 これも、「家出」はするんだけど川ひとつ越えない、って感じが好き。これって家出を繰り返すのは水鳥なのかな。それとも自分なのかな。水鳥のことだとしても、自分を重ね合わせているはず。

 「川ひとつ越えざる家出」は、「家出」じゃないよね。散歩の範疇だよね。それが好き。なんというか、自分の発想にはまるでないぶっ飛んだこととかを詠んだ歌も好きなんだけど、自分にも理解できる心情とかを自分には表現できない言葉で歌われた歌が素直に好きです。いいなって思う。

 もしかしたら「どこへも行けない」って意味なのかもしれないんですが、そうじゃなくて、本当はどこへも行けるのにここにいる、って歌だと受け止めました。本当はどこへだって行ける「鳥」だけど、ここにいるんだよ、って。

 

二十代君より先に終わりて瑠璃星髪切虫(るりぼしかみきり)に会う日の暮れ

 

 この歌で「るりぼしかみきり」が歌われていますが、正岡豊の歌で

 

あなたいま声明を口にしていたわ ルリボシカミキリだけ見ていたわ

 

というものがあり、なんだろう…、この虫、何か歌心を掻き立てる存在なのかな…と思ってググった。なんかすごい草間彌生感のある虫でした…。確かに物申したくなるかもしれません…。るりぼしかみきりに会ってみたいですね…。

 

 

もらってもどうせ片方落とすのにどうして秋に生まれたのだろう (yuifall)

 

 

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