いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

現代短歌最前線-前田康子 感想1

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

前田康子

 

腕枕滑り落ちる首引き寄せる 私には大切な大切な首

 

 東直子穂村弘と読んできて、何だか現実に戻ってきた感じがしますね。そしてとてもかわいい♡これって、「私」が腕枕してるわけだから、相手は恋人なの?それとも子供?

 この人の夫が同じ『現代短歌最前線』に載っている吉川宏志だと知っていて読むから相聞歌に余計萌えるんだよな…。「私には大切な大切な首」ってときめくよ…。そして私が個人的に吉川宏志の短歌が好きだからよりときめきます♡

 

「万葉は春の時代」と書にあればあどけなきまま二人逢いたし

 

 青春時代を過ぎてから出会った恋人に「春の時代に逢いたかったね」と言っているんだろうか。それとも今まさに春の時代だから、あどけないまま逢いたい、ということなのかな。「春」だから「あどけない」とも考えられるけど、人生の春、青春期にはすでにあどけなくはないような感じもします。時々は全部忘れて無邪気に会おうよ、ってことなのかも。

 どちらにせよ、「出会うのが遅すぎたね」的な重たい感じではなく、軽やかなイメージです。一緒に万葉集読んでるのかなぁ。万葉集の現代語訳の写真集を好きだったことを思い出しました。三枝克之の『恋ノウタ』ですね。

 

クッキーをぼろぼろ零したセーターで同性のごと我を慰む

 

 この「同性のごと」慰む、というのは、抱きしめるとかそういう身体的な行動ではなくて言葉で慰めるということだろうか。若かったころ、確かに、恋人(異性)よりも友達(主に同性)の方がどう愛していいか分からない、というか、愛情を示すのに身体表現を使えないっていうのは難しいなと思った記憶があります。これについてはもしかしたら女性同士よりも男性同士の方が強く葛藤するのかも。

 この歌では、クッキーがぼろぼろ零れているセーターで彼女を抱きしめることを躊躇って、言葉で慰めようとしたということなのかなあ?その読みだと相手は多分すごく理知的な人なんだろうなーと思う反面、クッキーをぼろぼろこぼしちゃってるわけですから、ちょっとずれた学者タイプなのかしら。汚い服のままでなりふり構わず抱きしめにいったり、服を脱ぎ捨てるような愛の行為で「慰める」よりも、言葉を使う人なんじゃないか?というのが都合のいい方の妄想です(笑)。単にそういうタイプの男性が好みなだけですけど。そして「我」の方も、慰められながらも自分の悲しみに浸っていないというか、相手のセーターのクッキーのかすなんかに目がいっているあたりが面白いなって思いました。

 この「我」はこの「同性のごと」き距離感をどう思っているのだろうか。もどかしいと思っているのか、ありがたいと思っているのか。確かに、一緒にクッキーとか食べながら慰められてるのって女友達みたいだよね。単にそういうシーンなのかもな。「ちょっと!今日こんなことあったんだけど!聞いてよ!」「じゃあ甘いものがいるね」って海外ドラマかよ(笑)。Gleeでカートがレイチェルのためにクッキー焼いてたシーン思い出したわ(笑)。しかし「ぼろぼろ零す」のはやっぱり女友達(やゲイ友)ではなくストレート男性な感じがしますね。

 単純に考えると、「我」は悲しんでいるというよりもちょっと落ち込んでる感じで、もう今日はやけ食いだ!って以前貰ったまましまい込んでいたクッキーを取り出したところに夫が帰ってきて、「どうしたの?」ってなって、「ちょっと聞いてよ!」とか言いながら2人でクッキー食べながら愚痴言ってて、夫は「そうなんだー、大変だったね」とか聞いてくれるんだけどクッキーをぼろぼろ零してて、それ見てなんかどうでもよくなるっていうか、悩みよりもその食べかすの方が気になって仕方ない状態になっている状況をイメージしました。

 

 

「友達に戻ろう」どこへ戻るんだ、出会い頭の恋だったのに (yuifall)

 

 

 ところで全然余談ですが、短歌関連の記事アップし始めてから1年経ちました。なんかめっちゃたくさん色々書いた気がするけどまだ1年か…。この調子でどこまでやれるんだよ感はありますが、しばらくは淡々と続けるつもりです。

 そして1年経っても短歌の読み方全然分からない自分に衝撃だわ。

 

 

現代短歌最前線-前田康子 感想2 - いろいろ感想を書いてみるブログ

現代短歌最前線-前田康子 感想3 - いろいろ感想を書いてみるブログ

現代短歌最前線-前田康子 感想4 - いろいろ感想を書いてみるブログ

現代歌人ファイル その176-前田康子 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ

「一首鑑賞」-125 - いろいろ感想を書いてみるブログ