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短歌タイムカプセル-平井弘 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 平井弘

 

男の子なるやさしさは紛れなくかしてごらんぼくが殺してあげる

 

 これは、殺すのと殺さないのとどっちが優しいんでしょうか。優しいから殺せないでいる男の子に、「ぼくが殺してあげる」って言ってるの?それとも殺すのが優しさだから殺そうねって言ってるのかしら。一体何を貸してなにを殺すのか?無限に想像が膨らむシチュエーションですね。

 塚本邦雄の感想の時に書いたのですが、自分だったらそれが優しさだと分かっていても殺せるだろうか、と。だけど、自分には殺せない、って思っていても、実際は殺すかもしれないとも思います。やさしさじゃなくても、単に殺すかもしれない。

 ナチスドイツ時代の強制収容所のノンフィクションとか、人間に対する心理実験の本なんかをよく読むのですが、それを見てると人の心を操るのなんて簡単なんだという気がして。多分私は操る方にはならないけど、操られる方にはなるかもしれない。それが正しいと信じれば殺すかもしれない、という怖さがあります。

 震災関連の風評被害とか今回のコロナウイルス騒ぎとかを見て思いますけど、人は自分が正義に裏打ちされていると信じればどれほどでも他人に残酷になれるし、それが集団になればより顕著になる。多分、正当な理由があるって信じさせられて、かつ集団の一員になれば簡単に殺すかもしれない、と思います。それが一番怖いです。

 

 この人もそんな風に感じていたんじゃないかな、って、

 

このさき石を投げることがあるだらうかたまたま落ちてゐたとして

 

という歌を読んで考えました。石が落ちていたら投げるだろうか。それが優しさだって言われたら殺すだろうか。COVID-19に感染した人が嫌がらせされて自殺した、という話を聞くたびにこの人の歌を思い出します。命を守るための感染予防のはずなのに、感染した人の命を奪ってどうするんだろうか。本末転倒ではないか?

 

 ところで、

 

ねえむうみんこつちむいてスコップのただしいつかひかたおしへます

 

っていったい何なんだ(笑)。スコップをどうするんだよ!ってちょっと及び腰になってしまうよね(笑)。ムーミンママに聞けよ!いつも花壇いじくってるやろが。

 

 

だいじょうぶわたしはちゃんと殺せるわだけど理由はあなたが決めて (yuifall)

イデオロギーはない正当化もしない奪われるとき正義は意味ない (yuifall)

 

 

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