書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
服部真里子
幸福と呼ばれるものの輪郭よ君の自転車のきれいなターン
これはなんとなく子供かなぁと思いながら読んだのですが、他に子供の存在を感じさせる歌がないので、恋人かもしれません。でも、「幸福」「自転車」っていうと、初めて自転車に乗ろうとしてる子供を見守る親が目に浮かぶなぁ。後ろから押してあげて、手を離して、がんばれ!って。でも「ターン」だからやっぱり大人かなぁ。さすがに初めてでターンはできなかろう(笑)。
花降らす木犀の樹の下にいて来世は駅になれる気がする
来世は駅かー。駅というと、誰もの最終目的地ではなく、通り過ぎる場所のイメージですけど。そういう存在になりたいってことなんだろうか。
人の手を払って降りる踊り場はこんなにも明るい展翅板
ここに取り上げられている歌は全体的にちょっと寂しいけど明るくて、でも明るいのになんか苦しくて、それでもきれいだなって感じさせる歌が多いなと思いました。「駅になれる」だし「人の手を払って降りる」んだから他人と交わらずすれ違っていくだけ、っていう感じがする反面、「君の自転車のターン」を「幸福の輪郭」って描写しているところに、人との関わりを拒絶しきれない思いもあるような気がして、その苦しさや、どこかぽっかりとした明るさが胸に迫ってくるように感じました。
なんで「明るい」って思うんだろうな、って考えながら読んでみると、「ひかり」って言葉が入った歌が多いからかもな。20首中6首に「光」に関連する言葉が入ってました。他に「明るい」「春」「花」もよく登場します。逆に言うとそんな言葉がふんだんに使われてるのに苦しい感じがするのはなんでなのかな。。
食洗器の水音優し清流のせせらぎよりも夜に染み入る (yuifall)
後頭葉まで突き刺さるプリズムは素肌に遠い季節の狂気 (yuifall)
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