書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
山中智恵子
一九四五年夏なかりせばこの世紀老いることなけむ
遠からず死ぬと思ひし三十路(みそぢ)ありいま喜寿にしてあくがれのごと
戦争や震災をテーマにした歌について感想を述べるのは私にはかなり難しいのですが、この人の歌でぐっと胸に迫るのはこういったものです。1925年生まれ、終戦の頃20歳ですよね。戦中戦後を生きて、2006年に亡くなられています。
こういう人が見てきた世界、考えること、思い浮かぶ言葉は私とは全く違うのかもしれないと思いながら読みました。「わが骨」「冥き遊星」「工作人」「天皇制」といった言葉の一つ一つが、ただの言葉を超えて胸に迫る気がします。
多度山に豆食みしこときみありて雪ふる夜を玉砕くごと
にしても、どうしても「玉砕」という単語を連想させるし、雪の夜に山で豆を食べるという情景も、どうしても、明るくはないです。
八月を越え三月を生き延びて大正の女はかくまで強し (yuifall)
祖母と母とをんなの系譜繋ぐごとミツバアケビはぱくりと割れて (yuifall)