「一首鑑賞」の注意書きです。
343.どこへも届かぬ言葉のやうに自転車は夏の反射の中にまぎれつ
(阪森郁代)
砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで澤村斉美が紹介していました。
知らない人が乗っている自転車なのかなぁ、と思いました。見知らぬ自転車が通り過ぎて行って、夏の反射の中にまぎれて見えなくなって、確かにそこにあったのに知らないままだ、と。
鑑賞文でも「走り去っていく自転車を見かけたのだろう」としている一方で、
この歌の前には
ぎゆつとかたい空気を詰めて自転車の前輪後輪ともに頑(かたくな)
という1首。タイヤを指で押すとしっかりと空気が入っている、その手ごたえが「頑」だというところに、準備万端の自転車を好もしく思う気持ちが表れている。
こうも書いています。てことは「自分が乗っている自転車」という可能性もあります。自分が乗っているんだけど意識の中では俯瞰していて、私を見ている人にとって、この自転車に乗った私は通り過ぎていって夏の反射に紛れる見知らぬもので、人生の中で行き違っても交わることはないのだと。
走ろうぜ胸が破れるほど踏んで お前を何も知らないままで (yuifall)