「一首鑑賞」の注意書きです。
275.ふとぶとと水を束ねて曳き落とす秋の滝、その青い握力
(大森静佳)
砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで山下翔が紹介していました。
ただでさえ短い短歌ですが、その中でもごく短い部分、一節とか一単語でも心惹かれるといい歌だなぁって思ってしまいます。この歌の場合は「青い握力」ですね。この言葉選びがかっこよくてしびれました。作者名見たら大森静佳だったのでまたぐっときました。鑑賞文にも
やはり結句の「青い握力」にしびれる。その力さえ、美しいとおもってしまう。水、滝であるから、「青い」力は見えない。美しさにはりつき、まぎれ、しかし除きがたくある〈力〉というものをおもってしまう。あるいは力そのものが滝であり、滝そのものが力であるように、あまりにも現前化しすぎたためにかえって隠れてしまった力をおもう。
こんな風に書かれていて、やっぱりそうだよね!って嬉しくなります。
滝そのものが「落ちるもの」なんだけど、滝が水を束ねて「曳き落としている」ようだと。そこには何か強い意志みたいなものを感じます。ただ高いところから低いところへ水が落ちていくのではなくて、滝そのものの意志によって落とされているんです。
「秋の滝」がまたいいよなぁって思いました。日本の風景という感じがします。個人的には、滝といって真っ先に思い浮かんだのがナイアガラフォールズで、ひと目見てものすごいインパクトだったからもう忘れられずイメージに直結してしまっているのですが、この歌で詠われているのはもっと範囲の狭い滝だと思う。狭くて高い滝。そして「秋」という単語で、絶対に日本の滝だな、ってなぜか確信します。紅葉を見に山に行って、滝の下から上を見上げるときのあの感じ。普遍的な日本の秋というあの感じ。それを思い出しました。最後に「青い握力」で締められていて、心の中で勝手にイメージしている紅葉と青い滝が鮮やかなコントラストを描きます。ほんとかっこいいなー。情景描写が散文でも短歌でもほんとダメな人間なので、こういう歌とても憧れます。
デジカメが200万画素だった日の滝を落としてゆくきみのゆび (yuifall)
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