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短歌タイムカプセル-大森静佳 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 大森静佳

 

部屋に雨匂うよ君のクリックに<はやぶさ>は何度も燃え尽きて

 

 小惑星探査機はやぶさのことですよね。外では雨が降ってて、彼はパソコンのモニターではやぶさを見てて、何度も動画の再生を繰り返してるのかな?この歌の空気感がすごく好きだ。

 私「はやぶさ」ってサンプルを持って帰ってきたと思い込んでたのですが、この歌を読んであれ?って思って調べたら、カプセルだけ回収されて本体は燃えちゃったんですね。。それにしても燃え尽きる瞬間の動画撮られてるんだ…、と思ってググったらすぐヒットしたわ。YoutubeNEC公式チャンネルで見れたわ。この時の「はやぶさお帰り」って呼びかけだけ聞いた覚えがあって、それで帰ってきたと思い込んでたんだなぁ。最後「ああ、消える消える消える…」って言ってて、この動画をこの人の彼氏(多分)も見てたのか…って何か聖地巡礼的な気分になりました(笑)。「感動した!」とかコメントついてたけど彼氏も書いたのかな…。

 

 この人は89年生まれで、歌集は2013年なので24歳までの作品(というか多分もっと若いですね。大学生くらい?)ですが、静かで落ち着いた印象の歌が多いです。雨とか秋、冬、という単語が使われている作品が多くて、あんまり明るくはない。「死後」「墓」「モノクロの写真」「生前」など、死を連想させる歌も多いです。だけどあまり悲壮感漂う感じではなく、

 

老けていくわたしの頬を見てほしい夏の鳥影揺らぐさなかに

 

からは、一緒に老いていきたいといった願いが感じられます。まあ、一緒に老いていくというのが24歳(未満)の願いとして明るいかどうかはともかく…。

 あとは

 

生きている間しか逢えないなどと傘でもひらくように言わないでほしい

 

も好きだな。美しくてちょっと薄いブルーグレーみたいなイメージですかね…。いや、このアンソロジーに載ってる歌しか知らないのですが…。

 

 この人の歌、雰囲気がよくてとても好きです。10代前半の頃に読んでた恋愛小説のこと思いだした。狗飼恭子とか江國香織の。この人の歌を読んでいるとその頃の心に戻れるような、澄んだ湖の水面にさざ波が立つみたいな気持ちになります。今度歌集買ってみようかなー。

 

 

錆びていく林檎みたいに色のない動画みたいにとおいきみだよ (yuifall)

映写機を回してほしい愛よりも証拠を ネガティブフィルムに 焼いて (yuifall) 

 

 

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