書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
こんな虚偽が次々まかり通つても許せるのかといへば 許せる
これは面白いですね。後に続く歌からすると、奥さん？が見ているドラマのようです。この人は医学部卒で医学博士みたいなので、医療ドラマかなあ。こんなの現実にはあり得ないよって思いながらドラマ見ちゃう気持ち、分かります(笑)。1928年生まれの男性が作った歌だと思うとなんかきゅんとするなあ。「許せる」ってたった3文字にすごいときめいた(笑)。
美しい花ばかりあるわけぢやない雑草(あらくさ)は風のなかの寂しさ
これはなんとなくですけど「世界に一つだけの花」へのアンチテーゼかなーみたいな。そりゃあ花屋の店先に並んだ花はどれも綺麗だろうよって思いますよね…。そしてI love youさえ言えずにいたら1/3も感情は伝わらないだろって思いますよね…（この歌詞のさりげない狂気がすごい笑）。
この人めちゃくちゃ有名なのに代表歌がピンと来なくて（無知ですみません…）、ググったら
海こえてかなしき婚をあせりたる権力のやわらかき部分見ゆ
この歌の作者か！って（ほんと自分が馬鹿でがっかりです）。
色々調べてたらはてなブログ内で「短歌のピーナツ」というブログを発見し（もう更新はされていないようで残念なのですが…）、堂園昌彦・永井祐・土岐友浩が短歌の評論を読んで書いてるブログですって！マジで私得じゃん！山田航のブログには日参しているのですが(笑)、また楽しみが増えたなー♡
この中の第５３回 佐藤通雅『岡井隆ノート 『O』から『朝狩』まで』
という記事で岡井隆についてすっごい色々書いてあって、めっちゃ面白かったです。作歌の演習期というのは先行する歌人の模倣から始まり、自分自身の文体を確立して初めて一人前の歌人になる、という記載があって、こうやって色んな人の歌を読みながら歌を作ってみよう！という試みは路線としては間違ってないな、と思う反面、一人前にたどり着くことはないだろうな、と改めて思いました（が、歌人になろうとは思ってないのでいいのですが…）。
まあ私のことはともかく、岡井隆は大御所になってからも色んな文体を模倣?するというか作風をどんどん変えまくってきたみたいで、以下引用ですけど
ただ、岡井隆が「すごい歌人」なのはある意味常識なのですが、恥ずかしながら、私自身は岡井隆がどう「すごい」のか、いまいちピンと来ていませんでした。いや、わかるんですよ、重要さは。でもなんというか、肌感覚ではわかっていないというか。
しかし、こういう感想の方、実は意外と多いんじゃないかと思っています。
前衛短歌の三人衆といえば、塚本邦雄、寺山修司、岡井隆ですが、このなかで岡井さんが一番わかりにくいです。なんというか、「岡井隆」というイメージの核を捉えにくいんですね。こう、人に説明しにくいというか……。
それには理由が二つあります。まずひとつめは、岡井さんが、作風をどんどん変えまくってきたからです。
アララギっぽかったかと思えば、前衛短歌の象徴的な文体を確立したり、かと思えば、また「私」に還ったり、記号を試したり、口語になったり、和語を取り入れたり。現在に至るまで、短歌のあらゆる文体・技法を次から次に試行している印象があります。当然、そのイメージはころころ変わりますから、「これが岡井隆だ」と言いにくい。と、ともに実人生上でも、いったん全てを捨てて九州に行ったり、批判をしていたはずの歌会始の選者になったり、表面的な思想信条もまるで変節しているかのように見えますから、昔からのファンもどんどん振り落とされていきます。
引用終わり。
私が岡井隆の代表作って何だろう…って思ってたのとか、「短歌タイムカプセル」に収録された20首の中でも作品の振れ幅大きすぎだろ、とか思ってたの、みんなそう思ってたんだ…！ってすごい納得しました(笑)。
リンク貼っときます。
あと私が毎日少しずつ記事を読んでる山田航のブログも
献身を美化するようにヘリが飛ぶかわいいことが全てだもんね (yuifall)
