書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
岡崎裕美子
したあとの朝日はだるい 自転車に撤去予告の赤紙は揺れ
*テーマ的にセクシャルな話題を含みますので注意してください。
セックスして、あまり寝てなくてだるい朝に家に帰るところで、駅前か繁華街かどこかで自転車に撤去予告の紙が揺れている、という、寝た相手との関係がちょっと刹那的な印象を抱く歌です。
これ読んでて、ものすごーく昔に読んだ小説の記憶がおぼろげによみがえったのですが、今思えば読んだときまだ子供だったような気がするけど、女子高に入学しちゃった男子がハーレム的な話で(ラノベではない)、かなり記憶がおぼろげなのですが(なので間違ってるかも)、一日に何回できるかやってみようって5回だか6回だかしてそのたびに貝殻を拾うのですが、女の子は貝殻を1個だけ残していなくなる(あんたとしてよかったのは1回だけだったよ、みたいな感じだったのかそもそもセックスを回数でとらえること自体が男の子っぽい発想だってことだったのかは覚えてない…。ていうか私がそういう意味合いを認識できる年齢でなかった気がする)っていうシーンを思い出した。こんな曖昧な情報をネットに上げていいのかどうか分かりませんが…。
今ググってみたら西田俊也の「少女A」という小説のようです。内容違ってたらほんとすみません(笑)。
汗染みの脇の下まで愛されて両生類のように自由だ
っていうのもあるのですが、女の人が詠むセックスの歌にどうもずっと苦手意識があったんです。先に言ってしまうと今はそうでもないんですけど、ずっと苦手だったの、どうしてかなって考えてて。「女の人」って言い方もちょっと自分でもうーん、って感じなのですけど、例えばこの人の
Yの字の我の宇宙を見せている 立ったままする快楽がある
とか、
生理中のFUCKは熱し
血の海をふたりつくづく眺めてしまう (林あまり)
乳ふさをろくでなしにもふふませて桜終はらす雨を見てゐる (辰巳泰子)
みたいな歌が昔は読めなかった。男性の
指からめあふとき風の谿は見ゆ ひざのちからを抜いてごらんよ (大辻隆弘)
だしぬけに僕が抱いても雨が降りはじめたときの顔をしている (加藤治郎)
あたたかいからだのなかに倒れたいバターナイフがめりこむように (吉川宏志)
花匂ふ君がこころに夕暗のほのかに触れて身をあやまてり (伊藤佐千夫)
みたいなのは平気で、女性の歌だとロマンス系統の
抱きながら背中を指に押すひとの赤蜻蛉かもしれないわれは (梅内美華子)
とかはそれほど抵抗なかった。
なので、単純に剥き出しな感じのやつが苦手なのかな、ロマンチック寄りの歌と比べると冷めたリアル感が生々しいからかな、ってもともとは考えてたんですが、男性の歌だと
いつまでも扉を叩くようにして僕は子宮にとどこうとする (吉田純)
みたいな全然ロマンチックじゃないやつでも割と平気で。やっぱり男性の身体感覚って私にはリアルじゃないから生々しさを感じにくいのかな、とか、例として挙げたような歌は痛みor快楽(というか露悪的な感じ)の両極端に振れてる感じがするからかな、とか、色々考えてたんですけど、でも自分で分からないポイントは、なんで短歌に限って苦手だったのか、ってことです。
小説とかは全く平気なんです。それこそわりと子供の頃からストーリー内で性行為が描かれるような本も普通に読んでたし(男性作家女性作家問わず)、ローティーンの頃は山田詠美と江國香織にはまってたし(当時の文学少女あるある)、なんで短歌だけ?って。
まー、濡れ場ってそこでどうしてもストーリーが止まるから小説だと飛ばし読みがちだったので、短歌だと飛ばし読めないからかな…。でもなー、良質な文学作品だとセックスがストーリーの核になる話とかもあるしな。むしろそういうのは男性作家より女性作家の作品の方が断然好き。宮木あや子とかすごい好きだし。なぜ短歌だけ苦手だったのか理由が分かりませんね…。
とまあずっとなんとなくもやってたんですけど、今回のmy短歌ブームで岡崎裕美子をはじめとする女性歌人のいわゆる「性愛短歌」を色々読んでみて、なんか平気になりました。ずーっと苦手だったのにここ数か月で克服したわ(笑)。多分、短歌そのものもですけど短歌の解説も色々読んで感じ方が変わったのかもって気がしてます。辰巳康子の上記の歌とか今はむしろ好きだし。
とはいえなぜずっと苦手意識があったのかはまだ結論が出ていないので、もっと色々読みながら考えてみようと思ってます。
あと歌人を男女で分けて論じるのも微妙に抵抗があるのですが、身体感覚についてはどうしても交換不能な面があるので仕方ないのかなという気もしていて、そこも自分ではまだ割り切れていない。。
もっとして、と早くおわれ、がせめぎ合う、フローリングに膝を擦って (yuifall)
性愛は傷口なるか前をゆくジャージの少女の脚の細さよ (yuifall)
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