書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
佐藤よしみ
血痕のごとき日本を残したる地球儀一つ売られゆく冬
確かに地球儀の日本列島って赤く塗られてて、しかも太平洋の青をバックにぽつんとあるもんだから血みたいに目立つよなぁ。だけどこんな風に言葉にしたことはなかったです。
この人の歌も全体的に暗い雰囲気です。「雪の奇形」「おとうとの死」「魚卵の眼」「微量なる毒」「殺戮」など、でも、なんか、分かるーって思うものが多いんだよなー。
つくならばなりきるまでの嘘をつけあっけらかんとほほ笑みかえす
とかもさー、ああそうだよなって思いながら言葉にしなかったことをこうやって鮮やかに切り取られると、やられたなーって感じします。
ところで夏が好きなのですが、
傷つきし舌にレモンの酸みちて瀑布のごとき夏はゆきたり
この歌にきゅっとした。あの舌がちょっとひるんじゃう感じ、その一瞬の怯えとかその後ひろがっていく酸味とかがああ、夏の切なさだなって思って。傷に酸ってのも夏っぽいです。
耐熱のコーヒーサーバー火にかけてぼこぼこ茹でる卵の死骸 (yuifall)
時間距離遮蔽を忘れないでくれ放射線とか失恋とかは (yuifall)