2025年11月19-25日
・笠井潔『夜と霧の誘拐』
・芥見下々、北國ばらっど、瀬古浩司『劇場版 呪術廻戦0 ノベライズ』
・芥見下々、北國ばらっど『呪術廻戦 夜明けのいばら道』
・コーディー・キャシディー(梶山あゆみ訳)『とんでもないサバイバルの科学 恐竜絶滅から、ポンペイ、黒死病、タイタニックまで、史上最悪レベルの大事件をどう生きのびる?』
以下コメント・ネタバレあり
・笠井潔『夜と霧の誘拐』
これはすごく面白かったです。妻が射殺されたのと全く同じ日に夫が2人の子供を誘拐する玉突き誘拐事件を起こし誘拐した子供に射殺されるが、2人を撃った拳銃は全く同じものだった…という殺人&誘拐の二重事件と、ナチスのユダヤ人絶滅政策は歴史上類を見ない絶対悪であったかという問いが重ねられる形で進行します。このシリーズ、“観念の殺人”という名目で金銭や愛憎のもつれ、復讐などでない常人には理解しづらい動機の殺人を思想的に説明するような流れであることが多いのですが、今回に関しては事件の動機やからくりが理解しやすかったし、思想との関連も無理なく説明されていたと感じました。特にハンナ・アーレントがモデルと思われる人物との議論とラストシーンが興味深く、これが最新刊であることを考えると、イスラエルの現状を踏まえて書いたのかなと思わされます。ラストシーンを彩るニーチェの「怪物と戦う者は、みずからも怪物とならぬように心せよ。汝が久しく深淵を覗くとき、深淵もまた汝を覗いているのだ」という言葉、『呪術廻戦』の夏油に捧げたいですね。
・芥見下々、北國ばらっど、瀬古浩司『劇場版 呪術廻戦0 ノベライズ』
・芥見下々、北國ばらっど『呪術廻戦 夜明けのいばら道』
というわけでノベライズ読んでみた。ラノベなのは分かって読み始めたので文体や内容に文句言う気はないですが、映画ゼロはエヴァ感すごかったです。あと五条先生好きじゃないといずれにせよしんどいよね。『夜明けのいばら道』の最後の1年生3人が遊びに行く話が一番好きでした。
・コーディー・キャシディー(梶山あゆみ訳)『とんでもないサバイバルの科学 恐竜絶滅から、ポンペイ、黒死病、タイタニックまで、史上最悪レベルの大事件をどう生きのびる?』
『空想科学読本』と『○○のサバイバル』シリーズを合わせて歴史に当てはめたみたいな話。とても面白いです。ピラミッド建造に携わったらどうなるか、海賊黒ひげと一緒に航海したらどうなるか、などをシミュレーションしながら楽しく歴史が学べます。ドナー隊の越冬事件を読んで八甲田山死の彷徨を思い出しましたが、あれは餓死ではなく凍死か。アメリカ史上最大の竜巻のことは知らなかったのでかなりびっくりしたし、逃げ切るの絶対無理だなとも思いました。まあ他もだいたい無理だけど…。
もしも若い雲たちが自室の壁にポスターを貼るとしたら、それはきっとトライステート竜巻がミシシッピ川を渡ったときの姿である。記録に残る気象災害の歴史のなかで、三月の午後二時三〇分にあなたがゴーハム駅の窓から眺める黒い霧ほど不吉な予兆はほかにない。
とあって笑った(笑っていいのか分かりませんが…)。こういう翻訳ものにありがちなジョークとても好きなんだよな。
他にも歴史の大事件からの逃げ延び方を知りたい人はぜひ。まあ大事件が西洋に偏り過ぎなのと政治的な大事件は除外されているので、ナチスドイツ統治時代のユダヤ人の生き延び方やスターリン統治時代のウクライナで餓死を逃れる方法なんかは分かりませんが…。こういうの中国版あったら面白そうですね。しかし翻訳の誤りと思われる科学的記載のミスが数カ所にあり少し気になりました。「脳のガラス化」ではなく「硝子化」だし(ガラス=硝子なのですが硝子化というのはヒアリン化のことでガラスになることではない)、「体が飢餓になると最初はタンパク質と脂質を分解するが最後は筋肉を分解してしまう」とありますがこれは誤りで、最初に分解されるのは糖、次に脂肪、そして最後に蛋白質(筋肉含む)です。
前から気にはなっていたのですが電子書籍がないので後回しになっていた本。ソ連で起きた少年少女を対象にした連続殺人事件を追う…という内容なのですが、ただのサイコスリラーではなく、当時の社会情勢が殺人事件の捜査にも影を落としており非常に読み応えのある話です。「平等であれば犯罪は起きない」という信念のもと犯罪率までもが事前に決められている共産主義社会で起きる殺人は、“事故”とみなされるか、精神障害者や同性愛者など“正しいソ連国民”でないとみなされた人間の犯行と決められています。よって犯罪捜査は国家への反逆行為とされ、それをすることで自分だけでなく家族全員を危険にさらすことになります。この状況で無垢な少年少女を殺した真犯人を捕まえることができるのか…。まだ上巻なので下巻が楽しみです。