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読書日記 2024年7月31日-8月6日

2024年7月31日-8月6日

・川上和人『そもそも島に進化あり』

・クリストファー・R・ブラウニング(谷喬夫訳)『普通の人びと ホロコーストと第101警察予備大隊』

アガサ・クリスティー青木久恵訳)『そして誰もいなくなった

バーバラ片桐『家に帰って一人で泣くわね』

・岡真理『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』

渡辺航時海結以『小説版 弱虫ペダル 巻島・東堂 二人の約束』

アガサ・クリスティー(中村妙子訳)『春にして君を離れ』

・チャールズ・ディケンズ(池央耿訳)『二都物語』上下

 

以下コメント・ネタバレあり

・川上和人『そもそも島に進化あり』

 川上和人の本面白いので3冊読みましたが、やはり鳥の本が最も面白かったです。この島の本はやや硬めでしたね。恐竜の方が専門外なためか軽めなテイストで、鳥の本は「鳥大好き!」って感じだったのですが島の本はちょっと真面目な感じが出てました。まあ根は真面目な方なのでしょう。でもわりとしっかり科学的な内容を難しく感じさせず読ませる技術すごいなと思ったし、さらっと読めて面白かったです。でもやっぱり、「自分は島でこんなことやった!」みたいな内容が少なかったのでそこが残念でした。そういう場面が一番面白いもん。大型の鳥をとっ捕まえて羽に何がくっついてるか調べるシーンとかとても笑えた。

 

・クリストファー・R・ブラウニング(谷喬夫訳)『普通の人びと ホロコーストと第101警察予備大隊』

 普通の市民だったドイツ人が「第101警察予備大隊」に所属してユダヤ人虐殺に関わった心理的カニズムについての本。ホロコーストというと絶滅収容所の悲惨さにフォーカスが当たりがちですが、それ以前に絶滅収容所ユダヤ人を連れてきた人、ユダヤ人を捕らえた人、絶滅収容所以外の場所で殺戮に関わった人たちがいるわけで、その内容が詳細に書かれていてけっこう気分が悪くなりました。でも中国やマニラ、朝鮮(当時)で日本軍がやったことを詳細に読んだらもっと気分悪くなるだろうな…。

 有名なスタンフォードの「看守と囚人」の実験にも触れられていましたが、私はサディストではないけど、多分「規則を守り秩序を維持しなければならない」という強迫観念は強い方だと思うので、自分が「看守側」になったら何をやらかすか分からず空恐ろしいです。そういう意味でこの本に登場する「普通の人びと」の行動の恐ろしさは他人事ではないと思いました。自分はそういう外的圧力や秩序に逆らって他人の尊厳を守ることができるだろうか。ここでは加害者側になったドイツ人たちは「嫌ならやめてもいい」と選択を委ねられたりもしていたのですが(それがより心理的重圧になった側面もあるそうなのですが)、日本軍だったら「嫌ならやめてもいい」とはならないよな、と思い、それでも命懸けで逆らえるだろうかと考えると本当に怖いです。こういう、何らかの属性(人種や性別、宗教、性的指向や身体障碍、精神疾患の有無など)で他者と隔絶させられる事態が訪れませんように、と思った。もちろん、当然、自分が被差別側になりたくないというのもありますが…。

 

アガサ・クリスティー青木久恵訳)『そして誰もいなくなった

 思えばアガサ・クリスティーは『アクロイド殺し』しか読んだことがなかったんですよね。普段古典ミステリはあまり好きじゃないんですが、これはとても面白かったです。米澤穂信インシテミル』はもちろん、綾辻行人十角館の殺人』とかクローズドサークルで全滅系の話の元ネタは全部これかぁ、と。今読んでも面白いのがすごい。ミステリって純文学と違ってSFやポップミュージック的なところがあり、昔のものより今のものの方が面白いところは正直否めないのですが、さすがアガサ・クリスティーだなと思いました。とりあえず『春にして君を離れ』買ってみた。『オリエント急行殺人事件』も読んでみたいのですが、名作なだけあってすでにオチ知ってるんだよな…。

 

バーバラ片桐『家に帰って一人で泣くわね』

 バーバラさんのBLは表紙も内容も過激なので普段避けているのですが、文章力は確かだし面白いんだよなー。あのドエロな感じさえなければ…。これはわりと表紙大人しめで読みやすいです。内容はわりと珍しいオネエ受。私はオネエキャラだったら攻より受になってほしい派なので(だって攻めるならなぜわざわざオネエ??)、このキャラは強気かつ健気で好感が持てました。

 

・岡真理『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』

 パレスチナ問題、うっすらした知識しかなかったので知りたくて読みました。ちょっとここで浅い感想書くの憚られる感じなので、ぜひ読んでほしいです。長く続くヨーロッパでのユダヤ人に対する差別、ナチスドイツの台頭後ユダヤ人に対する扱いが西洋社会でトラウマ化していること、その罪悪感をパレスチナに押し付けて知らん顔していることなど、人種差別と宗教差別が混じり合ってここまで来てしまい、欧米の白人優位社会でこの問題をどう解決できるのだろうと絶望的な気持ちになりました。今まで寄付とかはしてましたがお金が正しく必要な人に届いているとはとても思えなくなり…。一体自分に何ができるのか、色々考えましたがうまくまとまらないです。とても辛い気持ちになります。

 

渡辺航時海結以『小説版 弱虫ペダル 巻島・東堂 二人の約束』

「組んでない、敵だ」って言い張ってるけど結局レースで組んでないか?とか思いながら読んだ。小説版はこれしか読んだことないのですが結構面白いです。原作者監修とのことで公式のものとして読める安心感もある。しかし巻島が東堂に「なぜオレなんだ」とか聞くの解釈違いですね。そんなこと聞くか?速いからに決まっとるやろ?てか男がそんなこと男友達(だかライバルだか)にいちいち確かめるか?べたべたしすぎでは?「べったりした友情は苦手」と言っておきながらわりとべったりしてる巻ちゃんです。

 書いてる人、『はたらく細胞』のノベライズと同じ人でした。

 

アガサ・クリスティー(中村妙子訳)『春にして君を離れ』

 カズオ・イシグロの『日の名残り』みたいな感じの話でした。人生を振り返る過程で全てがひっくり返るようなことに気づくんだけど、結局それに背を向けてしまうという…。でもこれ、夫も同罪っつーか割れ鍋に綴じ蓋だよね。モラハラ妻が子供の養育によくないこと知っていながら自分のプライドとか契約のために離婚しないわけだし。結局、弁護士を続ければ稼ぎはいいから妻がいなくても使用人を雇えば子育てできたはずなのに「妻に無理やり弁護士を続けさせられている」という言い訳のために離婚することもなく、一方で農場の主になれば妻なしで3人の子どもを育てることになっただろうけどその苦労を避けるために夢を追うこともせず、長女には嫌われ、長男には去られ、メンヘラ次女とだけ心を通わせあっているわけで、夫も同情の余地なしだなと思った。クリスティーの筆致がすごくてぐいぐい読ませます。

 

・チャールズ・ディケンズ(池央耿訳)『二都物語』上下

 こっちはちょっと読みづらかった…。途中まで何の話なのかいまいちよく分かんなくて。途中から面白くなったのですが、映像向けの作品だと思いました。実際映画化とか舞台化とかよくされてるみたいですね。主役の男性2人がよく似てる、ってことがビジュアルで分かった方が作品を味わいやすいような気がします。