書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
中島裕介
モルヒネを打たずに心を縫うような痛みだ今日の空の高さは
時々空を見上げるだけで心がめちゃくちゃ痛む日ってありますよね。これ読んではっとしたのは、痛いのが特別なんじゃなく、痛くないのが麻痺してたんだっていう、コペルニクス的転回の瞬間だったからです。本当は心は世界に対して無防備で痛いもので、でも普段は麻酔をかけていて、だけど不意にその切れ目というか無防備に晒される時間があるんだなって。
あと面白かったのは携帯の予測変換機能だけを使って作歌したという
後半の文学的な意味でいい天気予報は当たらないから
ですかね。なんかいい感じに意味深になってて面白いです。そういえばAIに短歌だか俳句だか詠ませたっていう企画があったような。意味不明に思わせぶりな作品がたくさんできそう。そういう自分の思考を超えたところにあるものに触れられた時って胸を衝かれるし、まだ自分にも感性が残ってる、ってほっとします(笑)。
それから英語の短歌もいくつかあって、どれも韻を踏んでて面白かったです。
Staring at the star of Bethlehem, she’s a starving stargazer!
(ベツレヘムに導かれても東方で妻らは飢える天動説者)
Please keep me keen to kiss a knight of knowledge in a Kafkaesque Kaleidoscope.
(覗き込む僕を模様にする君は悪夢のような万華鏡以て)
みたいな感じです。
しかしイメージ的には英語の詩って頭よりも語尾で韻を踏む感じがしますけどどうなんだろう?rush/brush/hushとか、call/fall/all/steal/realとか。ちょっとふざけていくつか作ってみた(笑)。
くるぶしの傷に物語があって心の縫い目は数えられない (yuifall)
ごめん今は違うんだでも愛してるきみの名前の予測変換 (yuifall)
Put on Purple or Pink for the Psychic Party at Palo Alto (yuifall)
(紫かピンクを着てねパロアルト 気狂いじみたお茶会だから)
Make me surrender darling, you are the amber eyed hunter giving a drunker groggy slumber. (yuifall)
(アンバーのひとみは度数の高い毒 みつめて、きみに跪かせて)