「一首鑑賞」の注意書きです。
179.A god has a “life file”, which is about the collapse of my cool core.
(罪色の合わせ鏡のその奥の君と名付けた僕を抱き取る)
(中島裕介)
また英語短歌ですが、今回は日本語のルビがふってあるという点で前回と微妙に違います(あと、作者は日本語ネイティブの方な気がします)。
中島裕介の短歌は『短歌タイムカプセル』で好きになって、それからブログ読んだりもしていました。歌集は読んでいないのですが、知っている英語短歌はいずれもこのように英語と意味が異なる(というか、必ずしも一致しない)日本語のルビが付いてある感じです。
この歌の英文の部分を無理に直訳しようとすれば、
ある(一人の)神は一つの「命のファイル」を持っている、それは私の冷えた中核の崩壊についてのものだ
となります。おそらく life file は(実際に打ち込んでみるとよく分かるのですが)駄洒落というかアナグラムなので、そういう言葉遊びな感じがします(ついでに言えば、collapse, cool, core も全て頭文字coの言葉遊びな気がする)。
仮に日本語のルビと意味を合わせて読もうとすると、my cool coreは「君と名付けた僕」なのかな。それがcollapseするので「抱きとる」のだろうか。だからこの a god は自分自身というか、自分の中にいる自分を規定するアイデンティティ的な存在で、自分の中へ中へと入っていく感じ、それそのものがlife file であり、合わせ鏡なのかなあと思いながら読みました。すっごく平たく言うと、合わせ鏡(life file)で自分を見ていて、その一番奥の(まるでもう自分ではないかのような)自分が崩壊し、それを抱きとる、という感じです。
鑑賞文ではもっと面白い読み方が書かれています。
“life file”の内容を推測するたび、持ち主の“A god”の属性が変化する。この歌では、現実の意味が言葉化されるのではなく、言葉そのものが言葉の意味を規定してゆく。
(中略)
そうして言葉は無限の意味を繁殖させ、無限の上句と無限の下句とが何通りもの融合を繰り返し、互いの関係を生まれ変わらせる。そしてその関係は、短歌本文と日本語のルビとの関係にも広がる。
A god, life file, my cool core いずれも色々な解釈が可能で、一つの言葉の解釈によって他の言葉の解釈が変わっていく、という読み方です。その英文の解釈の仕方によって、更に日本語の「罪色」「合わせ鏡」「君と名付けた僕」の意味の取り方も変わってくるだろう、と。
確かに、様々な解釈が可能な歌だと思います。鑑賞文では「A god」について「神のように崇拝される人間か、アイドルかもしれない」と書いてあって、その解釈も面白いなと思いました。要は「ネ申!!」っていうアレですよね。
あと、life file は「アルバムか日記帳」の可能性もあると。もちろん、「cool coreは核の比喩かも」といった解釈もありますし、とことん真面目な方向にも不真面目な方向にも解釈が可能で面白いです。
Microwave's voices rant on, the latent meaning of life is contaminated (yuifall)
(圧勝のラブゲームだね才能が甘いラリーを拒絶してくる)
*実は単なるアナグラムです。
Microwave = Warm voice
Voices rant on = Conversation
The meaning of life = The fine game of nil
Latent = Talent
Contaminated = No admittance