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短歌タイムカプセル-永田和宏 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

永田和宏

 

あの胸が岬のように遠かった。畜生! いつまでおれの少年

 

 この歌に出会った時の衝撃は忘れられません。こんなに鮮やかに少年時代の焦燥を切り取った歌があるかなと思います。そしてその先にいるのが、妻になる河野裕子なんだと思うとものすごくときめくし胸がぎゅっとします。。

 

きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり

 

もですけど、若い頃の恋の歌がとってもとってもいいなぁ。少年と海、っていうモチーフが好きで、寺山修司

 

海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手を広げていたり

 

流産をしたる我が猫ステッフィに海を見せたし童貞の日の

 

とかすごい好きなんですよね。こういう、少年だったことがある人しか詠めない歌。

 

 この人の『たとへば君』に心の底から感動したのですが、冒頭で奥さんとの出会いについて書いていて、内容もそうだし、40年前の恋をこれほど鮮やかに率直に描けるというそのこと自体に涙が出るほど心を揺さぶられました。40年間、愛し合ったといってももちろん穏やかな日々ばかりではなかったようなのですが、お互いを思いあって過ごした日々がつづられていて。出会いから河野裕子の死までが率直に描かれていて、読んでて本当に泣きました。

 

 ちなみにこの人は細胞生物学の研究者としても著名な方ですが、『タンパク質の一生』という本面白かったです。一般新書なので学術書としては非常に基本的な内容なのですが、読みやすかったし、研究に対する熱意が伝わってきてうきうきしました。詳しい研究内容知りたかったら論文読めって話ですよね…。ちょっとググったら2017年~2019年の論文がいくつか引っかかったのでAbstractだけざっと読みました。

 しかしこういうの読んでると、自分の人生って何なんだろうな…とか考えてしまって駄目ですね…。こうやって複数の分野でご活躍されている方もいるのになぁ。。いやー、比べんなって話ですけど(笑)。

 

 

傷痕として初恋を語るとき処女のわたしの憎しみにあう (yuifall)

繰り返し一方向にミオシンを歩かせているぼくのクリック (yuifall)

 

 

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