書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
正岡豊
クリスマスはなんて遠いの……スリーブレスTシャツで川岸を歩けば
確かに…。クリスマスは遠そうですね…。スリーブレスTシャツの季節にどうしてクリスマスのことなんて考えたんだろう…。むしろ、ハロウィンが終わった11月1日からクリスマス感出されることにうんざりしています。11月1日にクリスマスはなんて遠いの…うっとうしいなこの2か月弱…って思ってます。リアル時間ではもう12月になってしまったのでそろそろ精神的には妥協してきてますけど(笑)。
みずいろのつばさのうらをみせていたむしりとられるとはおもわずに
これは、毟り取った方なのかな、毟り取られた方なのかな。どっちにせよ主人公は子供ですね。捕まえた虫の羽を何の気なしに毟ったのか、無防備に心を預けていたら手ひどく傷つけられたのか。最初は恋の歌かな、って思ってたんですけど、恋にしては無防備すぎますよね。「むしりとられるとはおもわず」に恋なんてできるものだろうか。
何度もしつこく(これからも)書きますが、海外ドラマgleeが好きで、好きなシーンの一つに、
「恋の相手に心を預けて、大丈夫だって自分に言い聞かせる。でもいつ手ひどく裏切られるかなんて絶対に分からないんだ。それでも信頼は選択だ。僕は何があってもきみを信じて愛していくって決めたよ」
っていう場面があって、恋ってそうだよな、って思ったんです。「むしりとられるかもしれない」と思いながら「つばさのうらをみせる」のが恋だって。
この人の歌、これもですけど、
きみがこの世でなしとげられぬことのためやさしくもえさかる舟がある
なんかも、すごくすごく言葉が美しいしすごく好きだなって思う反面、好きだって思う自分に浸りきれない感じがして、なんでだろうってずっと考えていて。それで気づいたのは、多分この人のこういう歌ってジュブナイルなんだと思うんですよね。もちろん良質なジュブナイルは大人の心にも響くけど、やっぱり対象年齢が違うなって。青春時代を過ぎた自分が浸ってていい歌じゃないなって感じました。
なんというか、愛情の一般的な段階として
①毟り取られるとは思わずに翼の裏を見せる(子供)
→②毟り取られるのが怖くて翼の裏を見せられない(青春)
→③毟り取られるかもしれないと思いながら翼の裏を見せられる人を愛する(大人)
→④毟り取られるとは思わずに翼の裏を見せてくる人を守る(親)
みたいに進行していくとして、この人のこういう剥き出しの心が詠われた歌は②期の人向けだなって思うんです。だから今②期にいる人に出会ってほしい歌だなって思います。
でも多分、もっと年を重ねたらまた感じ方が変わったりとか、人生のその時々のステージで読み方が変わる歌もあると思うので、もう少し時間を置いてみようかな。
あとは、やっぱりアンソロジーなので他の歌のことは知らないし、「この人の歌がどうこう」っていうんじゃなくて「この歌はこう感じた」って意味です。
革命はなんて遠いの……それなりの信念なしに暴徒と化せば (yuifall)
刺すよりは消えちゃう方が楽でしょう、これ以上何を思えばいいんだ (yuifall)