書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
小野茂樹
あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ
これは夏の恋の思い出の短歌として完璧だと思います。初めて読んだとき衝撃でした。こんなに端的に、こんなに短い言葉で、あの夏の記憶を全て蘇らせる歌があるのかと。一緒に夏を過ごした彼女の数限りない表情はどれも唯一のもので、僕にまたそれを見せてほしいっていう、あー、分かる。私も「あの夏のたった一つの表情」を思い出したよ。誰しもが思い出すのではないでしょうか。
五線紙にのりさうだなと聞いてゐる遠い電話に弾むきみの声
これも好きだな。遠距離恋愛なのかな。それとも旅行中とかかな。電話の向こうから楽しそうな彼女の声がしていて、話は多分聞き流してるんだけど美しい音楽みたいだなって思ってるんだよね。「ねえ、ちゃんと聞いてる?」とか拗ねられちゃいそうです。かわいい♡
幼児用プールを出ないきみはまだ愛した夏に傷つきたくて (yuifall)