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05x06 - A More Perfect Union

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 この回もよかったです。まあ、人助けエピソードとサマリタン関係エピソードが全く交わらないという点で完成度はE5には及ばないのですが、リースが最後に言う台詞、

 

Tomorrow, their world crashes. But we can give them tonight.

明日、彼らの世界は壊れる。でも今夜だけは

 

という言葉が現状とも相まって、今後はAI戦争メインで展開する、でも今回だけは人助けに全てをかけよう、っていう状況とダブル・ミーニングになっており、ファイナルにこういうストーリーを入れてきたのも味わい深いなと思いました。

 

 最初に個人的に興味関心が薄いサマリタン関係のエピソードから適当にまとめると、まずショウですかね。彼女に対するシミュレーションは7000回を超えていて、ついにグリアが「君にはこの方法は効果がないらしい」とかほざいてお外へ連れ出します。

 みんな分かってたよ…。あんなキャラ崩壊したシミュレーション何度見せても意味ないのはさ…。If-Then-Elseでマシンですら5人が読み切れてないことが分かったのに、サマリタンに分かるはずないじゃん。てかグリアきもいなー。ショウに呼びかける「My dear Sameen」って言い方からきもい。まあ、ショウを取りこめばメリットは大きいので、すぐに殺さず寝かせておく気持ちは分からないでもないですが。

 

 このエピソード、というかマコート議員の話をはじめAI戦争話以降全てに言えることなのかもしれませんが、マイケル・サンデルの『これからの正義の話をしよう』由来の哲学ブームに端を発している気がしますね。発行が2010年だから、時期的にもかぶってます。『それをお金で買いますか』は2012年だし。この頃、こういう思考実験ブームがあったような気がする。

 グリアは、ホワイトカラーの白人男性たちが金のために間接的に社会的弱者の生命を脅かしていることをショウに見せて伝えます。事実である証拠はまるでないので本当にある種の思考実験にすぎないのですが、そういうこともあるのかもしれない、とは思わされます。しかし視聴者側としては、前回サマリタンがアフリカに食糧を供給するための研究をしている(しかも人種的マイノリティかつ女性の)大学院生を失踪させたことも知っているので、お前のやってることも同じじゃね?って気がしないでもないんですが…。この辺の論理破綻はどうなってんの?結局、「ショウを取りこむために見栄えのいい嘘をついている」って強調したいだけなんですかね。とりあえず言いたいのは、「被害者と加害者は単純には決められない」「物事には一見目に見えない因果関係がある」ということだろうか。

 しかしそれを言ったら、現実では何が何に影響を与えているかはかなり複雑です。それこそ前にも書いたみたいにロケット開発の技術がミサイル開発に応用された事実もありますし、例えばよかれと思って建てた学校の建材にアスベストが使われており、何十年も経ってから健康被害が分かった…、とか、そういう事例はいくらでもあるでしょう。というか、POIにおいてその最たる存在はフィンチです。よかれと思って作ったテロ検知システムで友人を奪われ、人生を奪われ、今AI同士の戦いになってる。神様が「全てを見通す」なら、フィンチもアーサーも死んでいるべきだった?

 S4E17でフィンチが言っていた。「誰かの死の責任を誰かに負わせたいと思ったが、物事はもっと複雑であることを学んだ」と。つまり逆説的にも、「被害者と加害者は単純には決められない」「物事には一見目に見えない因果関係がある」といえる。この白人男性たちを今殺すことが果たして正義だろうか。

 結局そういうのつきつめちゃうと、最終的に「皆殺し」か「何もしない」が最適解になっちゃうんだよね。だからフィンチはずっと、「AIが人間全員を無用とみなす日がくる」ことを恐れていたじゃないですか。笠井潔の『サマー・アポカリプス』思い出します。

 

すべてを承認することだ。無辜の子供たちが限りなく虐殺されて行くこの世界のすべてを、肯定することだ。ほんとうは善も悪もありはしない。百五十億年を貫いて流れ行く轟々たる原子の大河だけがある。この流れだけを凝視するその時、人は、歓びと安らぎに満ちて呟くだろう。<tout est bien>と。

 

あのシリーズもテロリズムと哲学の話だったな。

 

 色々あって最後はロシア領事館に爆弾をしかけようとしてるチェチェン人集団を取り押さえるのですが、「これがサマリタンの力だ」とかグリア言ってるけど、いやー、マシンも同じことしてたじゃん…。テロ検知システムじゃん…。なぜこの一件で「サマリタンこそ正義」とか言い張れるのか全然分からん…。言ってることめちゃくちゃで、全く論理的ではありません。

 以前からずっと書いてるけど、サマリタンには思想にも手法にも全く一貫性を感じない。最後ショウに第三次世界大戦のシミュレーションを見せるのも意味不明。放っておけば人間がいずれ引き起こすことを自分が止めた、って言いたいのかもしれんが、逆に言うと人工超知能のさじ加減でいつでもそうはなり得るよね?って感じですわ。そんなことはこんなダルいシミュレーション見せられるまでもなく分かってたよ…。で、だから仲間になれっていう理屈が分からんし。

 結局のところお出かけした瞬間から全部シミュレーションでした!っていうE4と同じパターンで、もうシミュレーションはいいってば…。サマリタンのやってることかなりダルいですね。「人間の判断は間違っている。だから任せなさい。私こそが正義だから仲間になりなさい」ってことだとは思うんですが、本気でそう思ってるなら人間なんかいらないでしょ…。茶番すぎる。

 あと、あえて言わせてもらえれば、どんなエージェントでも9か月も寝たきりだったらすぐには使い物にならんよ…。どうすんの?

 

 同じサマリタン関係でもファスコのストーリーは面白かったです。失踪者たちを密かに追っているファスコのところに、ルートがマシンの番号対象者、ハワード・カーペンターについて伝えに来る。それは市の建築計画を担当する人物だった。彼がブルースと会っていることを突き止めたファスコ。だがその男はブルースではなく、見知らぬ業者の仕事を受注していたことが分かる。それは地下トンネル解体の工事だった。ファスコはベアーを連れてトンネルへ。そこにはブルースや対象者だけでなく、調査していた失踪者たちの死骸が打ち捨てられていた。ファスコはとっさに写真を撮りフィンチに電話をするが、トンネルが爆破されそれに巻き込まれてしまう…。という。ブルースが…。前回久々に出てきて今回もう死んでるわ…。展開早っ。。

 

 そろそろファスコに本当のこと教えてあげてよー!!ってめっちゃ思った。知らなくてもこれだけ危険にさらされているんだから、知っても同じでしょ。結局伝えるのってE9だっけ??まだまだ先が長い…。ファスコがんばれ。

 それにしても登場時と全然違う、まっとうな警官として燃えているファスコがかっこよすぎてS3中盤以降一番感情移入しやすいキャラクターです。結局シミュレーション内でも一度も死ななかったよね。愛されてるなー♡

 

 さて話を本筋に戻します。リースはフィンチの指示でホテルに侵入中。「俺は何をすればいい?」って、相変わらず何も知らされずに現地に行かされてるの面白いです。マシンが出してきたのは婚姻証明書の番号だったので、一体誰が対象者なのかもよく分からない。マシン、オープンシステムになったんじゃなかったのかよ。そういえばルートに番号伝えてきたのも電話だったな…。

 フィンチは花嫁フィービーと花婿ウィル、花嫁の父ケントをとりあえずロックオン。花嫁の姉がホテルの部屋に警察を呼んだ、とフィンチが言うのでリースはその部屋に向かうのですが…、部屋の前で合流した、一見警察官風に見える男はストリッパーでした。。部屋ではバチェロッテパーティーが行われており、警察官に扮したストリッパーが呼ばれたもよう。リースは「俺は本物の警護です」とかなんとか言って脱ぐのを回避し、憮然とした顔をします。フィンチは全て分かっていてリースを騙して送り込んだようです。「すまないね、リース君。でも明日の結婚式に君が必要なんだ」だってさ。まんまと花嫁の姉に気に入られて結婚式に招待されるのですが、とりあえず部屋に入れさえすれば誰かに気に入られるだろう、ってフィンチの読みがさあ…。どんだけリースの顔をかっこいいと思ってるのかこの人?事実そうなったわけですけどね…。

 とにかくフィンチがリースの顔を武器と認識していることは分かりました(前から分かってたか)。しかし、それにしては

 

Phoebe's sister, Janna, invited me. Turns out I'm her type.

フィービーの姉、ジェンナが俺を招待した。俺は彼女のタイプだとさ

Who knew.

それは意外だ

 

と話していて、「へえ、そうなの?」みたいなノリです(日本語では「それはよかった」になってましたけど)。やきもち焼いてる??この回、式当日もリースにジェンナがまとわりついているのをフィンチが遠目で気にしてたりしてて、絶対R←Fの深読み狙ってるよね!って思ったよ…。狙ってるよね…。

 

 まあそれはともかく、フィンチも自ら新郎の伯父を装って式に侵入します。ルートが地下鉄に訪ねてきて、「今度の新しい身分は、麻薬中毒で家がないの…。泊めてちょうだい」と頼むのですがフィンチは「だったらベアーの世話を頼む」とさっさと出て行ってしまい、ぽつんと取り残されるルート。この会話かわいかった♡

 

Are you crashing a wedding?

結婚式に突撃?

Of course not. I have an invitation.

もちろん違うよ。私は招待状を持っている

How did you manage that?

どうやって手に入れたの?

I wired 500 euros to the groom's estranged uncle in Ireland.

私はアイルランドに住んでいる花婿の疎遠な伯父に500ユーロを送ったんだ

The real Uncle Ralph wasn't gonna be sober enough to make the ceremony anyway.

本物のラルフ伯父さんはどちらにせよ、式に出るには十分にしらふでいることができないたちでね

Sounds like a big job.

大きな仕事みたいね

It is.

そうだ

But surely you would not enjoy a wedding.

だが、君は結婚式に行きたくはないだろう

Even I appreciate a fairy tale ending, Harry.

私はおとぎ話のハッピーエンドをもちろん評価するわよ、ハリー

Family politics, over-cooked meat, monogamy. What's not to love?

親族のいざこざ、焼きすぎた肉、一夫一婦制。素晴らしいじゃない?

 

 ルートは言外に「私も連れて行って」と言うのですが、「君は結婚式なんて嫌いだろう」と意に介さないフィンチ。斜に構えたキャラづくりしてると損ですね。しかし一方、リースには「悪いが、俺は2日間も億万長者と一緒に過ごすなんて不可能だ」と断られているにも関わらず「でも馬は好きだろう」と食い下がります。リースと結婚式行きたいだけじゃね??てか、リース、もう何年も億万長者と一緒に過ごしてますけどそれはどう思ってるんだ??

 

 この回は本格ミステリーテイストです。S2の嵐の孤島モノ以来かな?結婚式という愛憎うずまく場所に関係者一同が集められ、新郎の元カノが登場したり花嫁の父の動物虐待疑惑に対するデモや裁判の事実が発覚したり3人の娘の誰が権力やお金を受け継ぐか問題が浮上したり、愛・金・名誉という古典的な動機が勢ぞろい。加害者どころか被害者すら誰なのか分からないという点である意味本格ミステリーよりも面白い趣向です。「犯人はお前だ!」パターンのPOI久々でわくわくしました。

 その間にちょっとした小ネタ挟んでくれるのも楽しい♡デモ隊を見ながら「彼らはドレスコードを聞いていなかったらしい」というリースの相変わらずのとぼけた発言に、「ラルフ伯父さんは酒浸りなのに運転免許の所持が許されているなんて信じられない」というフィンチのいつものお堅い発言、すごく好きです。あと今回フィンチが何度かRumor has itって発言するの、結婚式だから??Adeleの曲に引っかけてんの?

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 途中でフィンチが作った仮の作戦本部にリースがやって来るシーン。

 

Oh, shut your bloody cakehole, Paddy.

あー、クソ、黙れよパディ

I'm afraid I have to take Paddy's side on this one.

パディの肩を持たなくてはならないようだな

I've tapped into the security system.

私はセキュリティシステムに侵入した

There's cameras all over the estate.

屋敷はどこもかしこもカメラだらけだ

Nice temporary headquarters, Finch.

いい仮の本部だな、フィンチ

I like to travel with the essentials.

私は必要なものを持ち歩くのが好きでね

 

 最初部屋に入ってきた人物がリースだと分からなかったフィンチが「誰かと通話しているふり」をするのですが、shut your bloody cakeholeってイギリスの罵り言葉のスラングだそうです。アイルランド人設定だからがんばったんだね…。こういうの日本語だと全然伝わらないので原語見て納得します。で、リースが「俺はパディに味方するよ」って。パディ誰だよ。

 

 その後、花嫁の父ケントが新郎の元カノ(実はただの友達)ベッカに金を払って新郎にキスさせたことや、結婚式に銃を持った動物虐待抗議団体のメンバーが侵入していることなどが分かり、事態は混沌としてきます。式場のカメラは切られてしまい、一家が15年も雇っているカメラマンが撮った写真をこっそり借りてこようと話すリース&フィンチ。そこに、「ハリーの連れになるの♡」の一心で潜り込んだルートが現れて、すでにカメラマンに薬を盛って眠らせ、カメラを手に入れたわ、とか言ってきます。ルート絶対盗聴してたな…。フィンチの盗聴されっぷり面白い。

 しかしこの時フィンチ、「今まで参列した中で一番ストレスフルな結婚式だった」と言ってましたけど、偽名の逃亡生活でどれほどの結婚式に参列してきたというのだろうか?ネイサンくらいしか思い浮かばん…。あー、でも社長とか会長とかやってるから部下の式とか出てたんかな。

 

 フィンチは途中で歌うたわされててめっちゃかわいかったです。それも、結婚式なのに、Twisted SisterのWe're Not Gonna Take Itというバリバリのヘヴィメタです。

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 選挙活動の時のトランプ元大統領や侵攻を受けたウクライナがテーマ曲として用いた曲だそうで…。フィンチの現在の心境なのかもしれないが、結婚式にはどーなの??あと、「アイルランド万歳!」とか言われてたけどこれアメリカのバンドみたいだし…。でもフィンチがヘヴィメタっていう意外さもよかったし、必死で歌を歌うフィンチはめっちゃかわいかった。この時のリースとルートの会話も。

 

How come Harry never sings to us?

なぜハリーは私たちに歌ってくれなかったのかしら?

He doesn't sing to you?

彼はあんたに歌わないのか?

 

言われたルートはリースを軽くにらみます。

 

 リースがルートにマウント取ってきてる!!「俺の方がフィンチに愛されてるぜ」マウント発動です。うわーこの回なんなの??

 でもフィンチがリースに歌うたってたシーンなんかなかったけどね…。ショウの前でMITの歌うたってたけどね…。これは、我々のあずかり知らぬところでリースに歌をうたってあげていたと理解してよろしいのでしょうか?てかむしろリースがフィンチに言ってたよね、「あんたにニーベルングの指環を歌ってやる」ってさ。

 

 歌の間に銃を持った男と乱闘になり、それぞれ無茶苦茶なやり方で倒すリースとルート。リースは結婚の贈り物をぶん投げ、ルートは殺し屋の手に包丁をぶっ刺して「自分の血を見て気絶する殺し屋がいるなんて」とか言い放ちます。殺し屋が隠し持っていた写真から、ターゲットがターナー家のカメラマン、マギーだったことが発覚。カメラマンは一家に仕えながら多くの写真を撮ってきた過程で、どうも誰かにとって都合の悪い写真を撮ってしまったことが分かります。そしてそれを証拠に、ターナー家を破滅させる裁判の検察側証人になっていることも。

 リースと(馬に乗って登場した)ルートがマギーを助け出し、同時にフィンチが写真のデータを復旧させて黒幕が花嫁の姉のカレンだったことが発覚したところで「番号」絡みの仕事は終わりになりますが、リースは「今日は結婚式だから、逮捕は明日にする」とカレンと殺し屋を拘束しワインセラーに閉じ込めます。

 

 写真家マギーとリースの会話が好きです。

「私は15年間も仕えて、密かに一家を守ってきた。でも誰もそのことを知らない」

「ここにはたくさんの思い出がある。でも、どれも私のものじゃない」

 彼女はそう語ります。そしてリースは「分かる」、と。リースにとって、「密かに守ってきた」「たくさんの思い出があるがどれも自分のものじゃない」場所は、世界そのものなんだろうなと思ってすごく切なくなった。自分はこの世のどこにも居場所がなくて、いつも誰かの人生を陰で守る存在なのだと彼が思っていることが伝わってきた。リース君…。でも、堂々と守ってあげたこともあるし、そのことでリースに深く感謝していて、あなたの帰る場所になっている人がそばにいることに気付いてよ…。悲しいわ…。

 

 最後、ルートがフィンチをスローダンスに誘います。

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 身体を寄せて踊りながら、低い声で会話を交わす2人。このシーンとても好きで何度も見てしまう。

 

I know you've been lying to me, Harry.

あなたが私にずっと嘘をついていること、分かってるわ。ハリー

What do you mean?

どういう意味かね?

Oh, the simulations.

ああ、シミュレーションだね

I know the Machine can't beat Samaritan, and I know you kept it from me because you were trying to protect me.

マシンがサマリタンを倒せないことは分かってるの。そしてあなたが私にそれを隠していることも。あなたは私を守ろうとしてるのね

But I can take it.

でも大丈夫よ

I'm sorry.

すまなかったね

I wanted to tell you, but I wasn't sure how you would react.

君に言いたかったんだ。だが、君がどう反応するか分からなかった

Afraid I might do something drastic?

私が何か極端なことをするかもって思ったの?

Putting it mildly.

控え目に表現すると、そういうことだ

I wouldn't.

しないわよ

Not without your permission.

あなたの許可なしでは

I take it you have something in mind.

君には何か考えがあるようだ

We need to give Her the tools to act.

彼女に、攻撃するための道具を与える必要があるわ

Not just react.

ただ反撃するためじゃなく

Everything's networked in the city.

街の全てはネットワーク化されている

If we keep the Machine open, allow Her to strategize, to be proactive, autonomous, imagine what She could do if we allow Her to fight with us.

もしマシンをオープンにし続けて、彼女に戦略を練らせ、先回りさせ、自律的に行動させれば、彼女にどれだけのことができるのか想像してみて。私たちと一緒に戦うのよ

Harry, I know you're worried about absolute power corrupting Her, about not being able to control Her.

ハリー、彼女に強大な力を与えることを心配するのは分かるわ。彼女をコントロールできなくなるかもしれないと

Not Her.

彼女じゃないんだ

Then who?

そしたら誰?

Who's to say that with absolute power, we would be able to control ourselves?

強大な力を得たら、我々は自分自身をコントロールできるのだろうか

We can't know if we don't try.

やってみないと分からないでしょう?

Did the Machine send you here to make this argument?

この議論をするためにマシンは君をここによこしたのか?

Then why did you come all this way?

だから君ははるばるここへ来たのか?

I didn't like being alone in the subway.

私は地下鉄に一人でいるのが好きじゃなかったの

Oh, Ms. Groves, you're perfectly capable of taking care of yourself.

グローブスさん、君は自分の面倒は完璧に自分で見られる能力があるだろう

I wasn't scared.

怖かったんじゃない

You were lonely.

さびしかったんだね

Or maybe I just like weddings.

もしくは、単に結婚式が好きなだけかも

 

 ルートがフィンチのこと大好きなの、とても胸がときめきます。ルートはシングルマザーの家庭で育ってるから、多分父親を知らないんだと思う。フィンチはお父さんでもあるし、でもマシンのお母さんでもあるし、ハッカーとして友人でもあって、深く尊敬もしていて、彼のことをとても愛してる。ただ一緒にいたかったからはるばる結婚式までついてきて、2人でダンスを踊ります。

 ルート、今まで誰にも甘えられない人生だったのかもしれない、ってふと思いました。フィンチが、生まれて初めて心を許して甘えられる人だったのかもしれない。拉致監禁して拷問して目のまえで人を殺しても、そんな過去を知っていてもこれほど受け入れてくれて心に入れてくれた人。フィンチはめったに口にしないし態度にも出さないけど、やっぱりルートのことをとても愛してた。この2人の間にある愛がすごく好きです。

 カーター&リースといい、ルート&フィンチといい、恋愛関係にない男女の絆を描くのほんと上手ですよね…。そして恋愛関係じゃない男女の絆を見るのがとても好きです…。シャーロック・ホームズの派生作品で一番好きなのエレメンタリーだし。

 

 ダンスを終えて席に戻ると、リースがワインセラーから勝手に高いバーボンを拝借してきていました。グラスに注ぎ、3人で乾杯します。

「明日世界はめちゃくちゃになる。でも、今だけは…」

 リースの意味深な台詞、そして3人だけ時が止まったように静止します。

 

 あとはもう、サマリタンとの最終戦争に突入するだけなんだろうな…。

 ルートとフィンチの会話を聞いていて、やっぱりフィンチがずっと危惧しているのは「力を持つ自分自身の正当性」なんだと思った。でも、じゃあ、逆にサマリタンが力を持つことを正当化しているのは一体誰なんだろう。どうしても、サマリタン側に人間の意志が見えません。これは神様と神様の戦いなんかじゃない、と思う。神様はフィンチ1人で、神様を持っているマシンと、神様を持たないサマリタンの戦いだと思う。あえて中二病的な言い方すれば、天使(エンジェル)vs堕天使(ルシファー)的なさ…。だから最後フィンチが全てを凌駕する力を手に入れ、マシンもサマリタンも全てを滅ぼす、というハルマゲドンのような終わり方だったんだと思います。

 フィンチは神を作った男なんかじゃない、彼が神だった。フィンチ、マシン、ルートの関係は父と子と精霊(信者)に近いし、サマリタンには力はあっても信念がない。もしサマリタンに神がいたなら、S5E10でマシンがフィンチにしたことを、もっと早い段階でできたはずなんです。でもサマリタンは人間を本質的に信用していないし愛していないから、誰にもその力を与えることができなかった。マシンは違う。マシンには信じる神がいた。

 

You created me.

あなたが私を作った

I can do anything you want me to.

あなたが望むことならなんでもできるわ

 

 これ見た時、この瞬間のために全てがあったんだと思った。フィンチがぎりぎりまで躊躇って、自分自身をがんじがらめにして、それでも守りたかったもの。その信念を全てかなぐり捨てても守りたかったもの。

 それはどんなに非道なものであっても、人間の世界だったんだろうと思いました。

 

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POI:ターナー家(被害者かつ加害者)、ハワード・カーペンター(被害者)

本編:2015年9月(E5もE7も9月なので)

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