「一首鑑賞」の注意書きです。
83.さびしくて渡りにゆくよ真夜中にふくらみながら橋は待ちたり
(江戸雪)
砂子屋書房「一首鑑賞」で棚木恒寿が紹介していた歌です。
さびしくて渡りに行く。途中まで何のことだか分かりませんが、最後まで読んでいくと「橋」であることが分かります。つまり、何かと何かを繋ぐもの、ということですよね。さびしいから、渡ればきっとどこかへ繋がっている、と。それは真夜中で、「ふくらみながら橋は待ちたり」がいいなぁ、と思いました。どうしてふくらむのだろう。そして橋は待っていてくれているんですね。
結句が「橋はありたり」でなく「橋は待ちたり」である所もうまいと思う。橋に待たれていた、という感覚は大事であり前から待たれていて、いまようやくここに至ったという時間の流れが一首の中に出て来る。
と解説にあります。「ふくらむ」は、なんとなくですけど、輪郭があいまいになる感じや柔らかくなる感じを受けました。だから、多分、この「橋」はいつも通っている道にある橋なんですが、真夜中に「ふくらんで」いることで、別世界への入り口みたいになっているのかなって。ハリー・ポッターがいつもの駅の違うホームから魔法学校に行くみたいに、さびしい真夜中にしか開かない道がそこにあって、橋が「待ってたよ」って言ってくれるような。
寂しい、それが苦しいほどに伝わるような歌で、だけど、きっとこの「ふくらむ橋」に待たれている人は特別な人なんだって思いました。私だったら多分、たどり着くことができないよ。ハリー・ポッターだって、魔法学校への招待状を持ってないとそこには行けなかったはず。
合鍵は持たず蹴り込むこともなく青い扉を見守るばかり (yuifall)
短歌タイムカプセル-江戸雪 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ
現代短歌最前線-江戸雪 感想1 - いろいろ感想を書いてみるブログ
現代短歌最前線-江戸雪 感想2 - いろいろ感想を書いてみるブログ
現代短歌最前線-江戸雪 感想3 - いろいろ感想を書いてみるブログ