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「一首鑑賞」-84

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

84.唐突に物干し竿は現れて隣家に人が住み始めたり

 (荒井直子)

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」で棚木恒寿が紹介していた歌です。

sunagoya.com

 面白いですね。まるで物干し竿が人を運んできたみたいです。賃貸の戸建て集合住宅みたいなとこに住んでて、ある日気付いたら隣の家に物干し竿がかかっていて、洗濯物が干してあって、「あ、人、住んでるんだ」みたいな。お引越しとかなかったのか(笑)?挨拶も??

 

 この歌では、主体は物干し竿の存在を見て初めて隣家の引っ越しに気付いたようだ。おそらく引っ越しの挨拶もなかったのだろう。事実はどうであれ、読者は作品からそのような想像をするのである。想像を含めて、歌のリアリティーであり、作品の力であると私は思う。

 

と、鑑賞文にあります。引っ越し挨拶がなかった可能性についてはそうかもしれないって思うのですが、引っ越しそのものは気付くのではないかな??だってこの歌の情景って都会のマンションとかではないような…。住宅街の戸建てを連想します。庭がお互いに隣接しているか何かで、物干し竿が見えるわけだから。しかも一人暮らしとかでもなさそうで、主婦がいそう。少なくとも夫婦ではありそう。

 

 なので私の空想では、この人は週末の間、家族でどこかへ出かけてたんです。で、日曜日の夜に帰宅して、その日はもう休んだ。次の朝、夫と子供を送り出して洗濯をして庭に出て、さあ干そうとしたときに「えっ??隣の家に物干し竿かかってるやん。誰か住んでる!」ってなったのではないかと(妄想です)。

 

 しかしここまで考えて、やっぱそうでもないかも、って思いました。時々、ベランダもバルコニーもないアパートの窓辺に物干し竿がかかっている光景を目にしますが、この人もそういう家に一人暮らしなのかもしれないと思いました。自分も洗濯しようと思って窓を開けたら空き家だったはずの隣の部屋の窓にも物干し竿があり、しかも窓にカーテンがかかっているから「あ、引っ越してきたんだ」っていう。

 

 でもなー。アパートの隣の部屋に対して「隣家」っていう言い方するかなぁ。やっぱり戸建て説を推したいですね。少なくとも隣のバルコニーが普通に目に入ることのないマンションではなさそうです。この「物干し竿」「隣家」という言葉からイメージされる情景が人によって違いそうで面白いなって思いました。

 

 

予報では「洗濯日和」 洗濯は天気と関係ないドラム式 (yuifall)

 

 

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