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現代短歌最前線-江戸雪 感想4

北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

江戸雪④

 

貝殻をダッシュボードにころがせばうっすらと月いつも冷たい

 

 最後はちょっと病んでる系集めてみた。全体的に「うすく」て、冷たくて、狂ってるし病んでるんですね。

 月の光ってどうして狂気とか冷たさを連想させるんだろうなー。太陽の光が反射してるだけなのにね。不思議です。光に当たっても温かくないから冷たく感じちゃうのかな。なんか青白いし。そういえばこないだ月食でしたね。昔夜に海の近くをうろつくの好きだったことを思い出しました。でもこの歌では「ダッシュボード」なので、車で来てるんですね。一人なのかな。誰かと一緒なのかな。大学時代にけっこう大勢で夜に海行って花火したなーって思いだした。そのうち何人かのグループに分かれてはしゃいだり語り合ったりしてさ。

 色々な光景が想像可能ですが、誰かと一緒に海に行って、貝殻を拾ったりなんだりして、帰ってきて夜になって別れて一人になってからその貝殻をダッシュボードに転がして、ちょっと砂がこぼれてきたりして、月が照らしていて、光ってるのに冷えてる、ってふと思うような感じです。

 

うすうすとわたしを平たくうつす窓 街はダリアのように病んでる

 

 窓に映る系は、梅内美華子といい、なんか暗い感じですね。平面で色彩が薄い感じがそう思わせるのかな。「ダリアのように病んでる」ってどういうことだろうな。豪華でちょっと危うい感じがするからでしょうか。花言葉に「不安定」とあります。ググったら、昔は有毒と思われていたらしいです(事実ではないそうです)。

 ダリアというと寺山修司

 

ダリアの蟻灰皿にたどりつくまでをうつくしき嘘まとめつついき

 

を思い出します。あとはロサンゼルスの『ブラック・ダリア』ですかね…。

 

陽のうすき道の桃の木見上げたりパラダイスはたぶん狂気のことだ

 

 「パラダイスとは狂気のこと」はなんとなく分かる気がする。脳内の一瞬の幻なんだよね。だけど、パラダイスは狂気でも、狂気はパラダイスではないですね。

 「陽のうすき」道は、陽が陰っているのかな。それともうっすら射しているのかな。桃の木が道にある場所って、あまり都会という感じがしないのですが、そういう場所を歩いていて「パラダイスとはたぶん狂気のこと」ってどうして考えたんだろうと思います。桃源郷からの連想かな。

 

 

少しずつずれたシグナル 放射線よりもはかなく透過して 夜 (yuifall)

 

 

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