山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
北川草子
目にみえないものをたよりに生きていて改札口があんなにとおい
この人は『短歌タイムカプセル』でも登場していたのですが、夭折されていたことを初めて知りました。。1970年生まれで2000年に亡くなられているとか…。全て20代の歌なんですね。
カタカナ語を柔らかく用いて童話的な歌を詠む人だなーと思っていたのですが、
アトピーのくまのプーさん抱きしめて綿くずみたいにまるまって寝る
こんな歌あってちょっとびっくりしました。プーさん、アトピーなんかい。優しさだけじゃない、何かひりひりとした痛みのようなものが伝わってきます。解説に
人魚や天使、神といったモチーフは超人間的なものの比喩ではなく、おそらくはそのままの存在だろう。ファンタジックな世界に生きながら、しかし傷つきやすい心と悲しみを背負っている。透明で澄んだ詩世界が、モチーフとうまく混じり合っている。
とあり、
きみのいない朝のしづけさ まなうらに人魚の失くした尾がひるがえる
ごらんあの天使は胸を病んでいてそれであんなに背がまるいんだ
などの歌が引用されています。歌集タイトルも「シチュー鍋の天使」だそうで、これは亡くなられた後に有志で編纂したものだとか…。歌のイメージ通り、白くてふわふわしていて繊細な感じの方だったのかなぁと想像しました。
ボルヴィックのふたをがりりと噛んでまたやっちゃったねとわらうくちびる
この歌もかわいいな。ペットボトルのふた噛んじゃうことあるよね…。噛むのもわらうのもくちびるで、そこにだけフォーカスされてるのにセクシャルな感じはなくてちょっと遠いような明るさがあります。
指なんて四つでいいよと青い目で笑うスポンジボブはやさしい (yuifall)