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現代歌人ファイル その34-香川ヒサ 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

香川ヒサ 

bokutachi.hatenadiary.jp

二つとも旨いそれとも一つだけまたは二つともまづい桃二個

 

 この人の歌面白いです。桃が2個あって、どっちもおいしいかどっちかがまずいかどっちもまずいかだなーって歌にしちゃうんかい(笑)。どっちも微妙とか、どっちかは固い系の桃でどっちかは柔らかい系の桃で好みが分かれるとか、どっちかが白桃でどっちかが黄桃とか、考えると色々ありそうですね…。どっちか腐ってるとか…。

 写生系の歌ですね。静物画なんだけど、明らかにその人タッチみたいな感じの。

 

パン、バター、紅茶と卵 同じもの食べ続けつつ私である

 

 これは、しみじみ分かります。食べるもの見ながら、自分がこれらからできてるってマジかよーって思うし(笑)。なんか自分の中でブームが来ると延々と同じメニューを食べ続けてしまうので(一時期は朝食プロテイン、昼食はサラダ+焼き芋だったし、この記事書いた当時はベーグルに激ハマりしていて5か月くらい朝昼ベーグルでした)、時々我に返ってあー、私ってこれでできてんのかーとか思います。

 

入り口に警官がゐて出口にも警官がゐて途中にもゐた

 

 こういうのってそのまんまやろ系統の、いわゆる「ただごと歌」に分類されるのかな?それともそういうのとは違うのかな。解説が面白くて、

 

 このような作歌スタイルの背景には、共同体主義的な発想への疑問がある。〈私〉という個が共同体のなかに埋没していくことを決して受忍しようとしない。つねにたったひとりの個として世界に真向かっているような姿勢がある。日常の些事に思えるような歌の素材は、社会を円滑に進める歯車の一部であると同時に、どこか非人間的な気持ち悪さも持っているのだ。(中略)(香川の歌は)個人である〈私〉だけではどうすることもできない領域というものが世界に存在することの再確認である。言い換えれば、「身の程をわきまえている」ことの強さがあらわれている歌なのである。

 

とあります。一つの歌から、その人の精神性そのものを読むような「読み」は難しいのですが、解説読んで色々考えさせられました。

 

 

「目を見せて」瞼めくってくる医者の水晶体の白濁を見る (yuifall)

 

 

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