北溟社 「現代短歌最前線 上・下」 感想の注意書きです。
桃の蜜てのひらの見えぬ傷に沁む若き日はいついかに終らむ
有名歌人が必ず一度は詠んでいるのではないかと思われる「桃」の歌ですね…。桃って柔らかくて産毛が生えてて白くて傷つきやすくて切るとすぐ変色しちゃって蜜がたっぷりで甘いところが、なんか若い人を連想させるのかもな。野口あや子の
頑張ってる女の子とか辛いからわたしはマカロンみたいに生きる
を連想しました。
蜜が沁み出している桃は、おそらくそれ自体に傷があるのかもしれません。若い日はいつ、どのようにして終わるんだろうか、とあるので、まだ若い日の歌なんだろうか。しかしながら、人生100年時代であり、自分がまだ若いのかそうでないのかすら私にはよく分かりません(笑)。「いついかに終わらむ」と思っている間に気付けば80代、とかなのかもしれませんが、この歌を読んでいると、「桃」が自分とはかけ離れた存在であると感じたとき、もう若くはないのかもしれないとも思いました。
ふと畳に眠りゐるなり自らに多く苦しみし青春終る
これも青春の歌です。畳で寝てると顔にあみあみの痕付くよね…。ふと目覚めて、ああー、青春って終わったんだ…、苦しかった…みたいなシーンなのかしら?春って希望があるようでぐちゃぐちゃしてるよね。暑かったり寒かったり安定しないしさ。
花桃のごとき紅葉あふぐときわれの骨さへしづかに紅し
この歌の迫力すごいです。紅葉をみて「われの骨さへしづかに紅し」って言葉出てくるかなぁ…。出てこないですよね…。少なくとも私は出てこない。というより紅葉にそれほど興味がないのかも…。
前回の「朴の大樹も星も」の歌もそうですが、同じものを見ていても全然違うことを人って考えるんだと思いました。いや、同じものは多分見てないんだな。目の前に同じものがあっても、私には見えないものが見えているんだろうと思います。
逃げたいのだらうか桃の瑕のごと二十歳の染みとなりてくるしむ (yuifall)
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