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現代歌人ファイル その35-新城貞夫 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

新城貞夫 

bokutachi.hatenadiary.jp

地下室の壁にわれらを張りつけて押ピンは血の革命叫ぶ

 

テロリスト太古もやさし若妻を恋いつつ海を映しすぎる空

 

 沖縄出身の歌人です。先に伊舎堂仁を知ってから出会ったので、沖縄でイメージしていたテイストと違いすぎてびっくりした。1938年生まれの新城貞夫と1988年生まれの伊舎堂仁では故郷沖縄のイメージも大きく異なるのかもしれません。1938年生まれだったら戦争の記憶あるだろうし…。解説にはこうあります。

 

 沖縄生まれというバックグラウンドを背負い、米統治下の沖縄に育った。そのことが革命思想へのシンパシーを呼び起こすことは想像にかたくない。(中略)理想郷を求めての革命は若者が人妻を恋い慕うようなものだという複雑な心情にも囚われていたのかもしれない。自由と平和を希求することと、報われない欲情を抱くことが同一視されている。これが新城のポエジーの根幹をなしている。

 

一枚の蝶まなかいをよぎるときたたかいにわが敗ると知りき

 

 報われないと知りつつも革命を胸に抱き、そして敗れたのでしょう。「人妻」への「欲情」だったのだから、諦めるか奪い取るかしかなかったはず。その青春に敗れて「朱夏」が来たのですね。

 

まさぐりて冬を少女は指長し標本室に蝶を凍らしむ

 

 こういう歌、解説には「塚本邦雄の影響が色濃い」とあります。「いかにもな塚本的モチーフ」というのはつまり、「蝶」「熱帯魚」「レモン水」「マネキンの血」「マニュキュア」「眩暈」「義母」とかなのかな?一方で、

 

塚本にはなくて新城に目立つモチーフというとなんといっても「黒人」である。沖縄生まれの新城にとっていかに黒人が身近な存在であったかもさることながら、被抑圧者どうしでありながら決して連帯しえない存在である沖縄人と黒人の関係への鋭い考察がみてとれる。

 

とあるように、

 

黒人の蜂起近づく真夏かも池は電柱逆さに吊りて

 

のような歌もあります。

 

 沖縄、革命、耽美、挫折、と盛りだくさんで、熱量がすごく、未だに消化しきれていません…。なんか圧倒されました。

 

 

革命は女が白き手を伸べて我に与へし一個の檸檬 (yuifall)