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現代歌人ファイル その33-松木秀 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

松木秀 

bokutachi.hatenadiary.jp

平日の住宅地にて男ひとり散歩をするはそれだけで罪

 

 この人の歌は時事ネタがらみのブラックユーモアが面白いです。川柳出身だとか…。この歌なんて、住宅地男ひとり散歩したり、子供にうっかり声かけたりするとすぐ通報されるという悲哀がちょっと笑える感じの歌になってます。世知辛い世の中と思う反面、昭和時代はこういう普通の人に混じって変質者もその辺うろついてたっていう現実もあるわけで…。無闇に男女とか子供の有無とかで対立するよりも、こうやってブラックジョークにするのが落としどころなのかなぁ。

 

とりあえずいつでも壁は壊せても瓦礫を捨てる場所はもうない

 

 ほんとうに「いつでも壁は壊せる」のかしら、と思いながら瓦礫に思いを馳せる。この歌っていつできた歌なんだろう。この記事は2009年5月だから、ベルリンの壁とか同時多発テロをイメージしてるのかな。三枝昂之の

 

立ち直るために瓦礫を人は掘る 広島でも長崎でもニューヨークでも

 

を思い浮かべました。今となっては「瓦礫」って、震災とか津波とか原発とか温暖化に集約される自然災害とか様々なイメージが折り重なって更に複雑な陰影をなしています。

 

時事ネタ絡みの歌も多いのだが、すぐれた批判精神は社会現象の表層だけではなく本質をも見抜いている。それゆえにそうそう賞味期限切れを起こさない。もとになっている事件はありながら、ある種の普遍を衝いているのである。

 

という解説もあり、2021年になっても頷かせてくれるところが本当にすごいなぁ。(歌もすごいけど解説もすごい)

 

銀縁の眼鏡いっせいに吐き出されビルとは誰のパチンコ台か

 

 「銀縁の眼鏡」の中には自分も含まれているのか、それとも違うのか?前回の大野道夫の「男と女」の歌とか、荻原裕幸の一部の短歌(「群衆という美しき」みたいなやつ)など、そこに自分も入っているのか?それとも自分だけはその中にいなくていわば「神の視座」なのか?と考えてしまいます。多分私自身が「その他大勢」側というか、この歌で言うと「銀縁の眼鏡」側だから、それを面白がる視点に共感しづらいのかもしれません。。でも、もし自分自身も「銀縁の眼鏡」側である、と自覚したうえでこう詠めるんだったらそれはすごいなって思います。

 

 

Such a small world (世界って小さいでしょう) POKETALKよりもBORDER超えて病魔は (yuifall)

 

 

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