書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
おつぱいといふ権力がなつふくの女子らによつて語られてゐる
おっぱいは男の夢かもしれませんが女にとってはもっと切実な何かであり、実は権力でいられる時期はとても短く、その後は乳腺というものは本来乳汁を分泌する臓器であって臓器としての機能を果たし、果たし終えたのちは静かにしぼみ、そして最後は命を奪ったりもします。癌になっても乳腺を切除することを拒絶して命を落とす人もいるし、女にとっては最早権力どころではない存在かもしれません。
なんでしょう、男女とも、身体の外側にあって出っ張った何かに自分の性の自我を託そうとするのは何か滑稽なような愛おしいような。そして男の子はおっぱいに憧れるんだね。まあ、女子としては権力でいられるうちに存分に誇示しておいた方がいいのかもしれないよ(笑)!
この人の歌はこういうのがある一方でというかこういうのはむしろ少数だから目に留まったのですが(笑)、全体的には文学の香りが強く漂っていて、
燃えおつるせつなの紙の態(すがた)して百合咲きてあり燃えおちざりき
なんか、ちょっと切なく美しくもセクシーな感じがしますね。多分岡野弘彦の
耐へがたくまなこ閉づれば白百合の白くづれゆくさまぞ眼にみゆ
からの連想なのかも。
びいだまを少女のへそに押当てて指に伝はるちひさき鼓動
というのもあるし、セクシーな感じは間違ってないと思う(笑)。
権力といふよりむしろ業でありMalignantの文字など眺む (yuifall)
しどけなき裂け目に舌を差し入れてwild knotほどいてみなよ(yuifall)