書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
山崎聡子
骨のない場所は身体にいくつあるバスルームにて煙る前髪
全体的に死を連想させる作品が多いです。ちょっと不気味な感じの。「もろい両膝」「心臓、縮んだ」「ほの暗い目」「ともに住む怖さ」「生きてない人の顔」など。骨のない場所はいくつあるんでしょうね。というか、身体の場所ってどうやって数えるのかな。内臓とか考えると骨のない場所はいくらでもありますよね。むしろ骨は身体の外側にしかないですからね。
さようならいつかおしっこした花壇さようなら息継ぎをしないクロール
これは多分小学校あるいは少女時代にさよならってことなんだと思いますが、これも何となく明るい感じはしません。花壇のおしっこは堂々とするもんじゃないし、息継ぎをしないクロールは苦しい。でもなんか鼻の奥に塩素のツーンとした痛みが蘇るような臨場感を感じさせます。
ほのぐらい感じの歌が多いなーと思いながら読んでいたのですが、中でも一番ぐっときたのが
わたくしを不気味な子供と呼ぶ母がジャスミンティーを淹れる休日
ですね。母に不気味な子供って呼ばれちゃうのか…。親子関係の閉塞感とか密室感も相まって、「塩素剤を吐いた」みたいな歌よりももっと絶望感が漂ってます。ジャスミンティーとのギャップがまた、急に明るい場所に出てきた時みたいな酩酊感でたまらないです。ほんとくらくらするわ。
きみだって心惹かれているだろう飛び込み橋の有刺鉄線 (yuifall)
木工用ボンドで傷は塞げるわ、躊躇わないで骨までおいで (yuifall)