書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
山崎郁子
わたくしが生まれてきたるもろもろの世のありやうもゆるしてあげる
ひらがなと旧かなづかいで、柔らかい印象を受ける歌が多いですが、その反面ちょっと切ないような感じがします。他に紹介されている歌も、なんとなく、子供だった頃の夕暮れの風景を思い出させる感じで。「はがれくるなつの破片」とか「忘れたゆびきり」とか「見上げられずにゐる」っていう言葉から受けるイメージかなあ。
ひかうきが好きだつた兄にとどけよとみづいろの紙ひかうきをとばさう
とか、なんかこのお兄ちゃんはもはや生きてはいないのではないだろうかという感じがして…。旧かなづかいのせいだろうか?
この人の歌も、なんというか、ワールド系ですね。自分のワールドがある感じです。自分語というか。
夜の向かうの海の濃くなりゆくにつれ透きとおりゆくわたしの右腕
みたいに、ああ、この人の目には本当にこう見えてるんだろうな、って感じです。
執着に倦む夕なりき にんげんはどうしておなかがすくのでさうね (yuifall)
突つ込んだ手はこんにやくでびにゐるは黒くて一目きみに会ひたい (yuifall)