書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
山下泉
へやべやの夜を流れたる細き風はくるしみ括るリボンの靡き
この人の作品は全体的に言葉の使い方が美しい反面、解釈が難しいです。この歌は薄く窓が開いた夜の部屋に細く風が入ってきて何かを靡かせる様子が浮かんで、ちょっと「秘密の花園」を連想しました。
三つ編みは昏き蔓草 昼を編みほのかに垂れる夜のうちがわ
これは何となく「赤毛のアン」を連想しました。全体的に、外国の文学作品を連想させるような歌が多いなーと勝手に感じています。ただ、「靡く」といい、「夜のうちがわ」といい、何となく淫靡な感じもあるよね。いや、どうなんだろう。子供らしい闇への恐怖なんだろうか。夜がこわい、みたいな。私はセクシー説を推したいです(笑)。
身体の冥府と思う脳髄を掲げて歩む百合の影まで
も好きだな。20首の中に「脳髄」「モルヒネ」といった言葉が使われた歌が見られ、なんとなく病院を連想させますね。しかもホスピス的なところ。「へやべやの夜」も病室なのかなぁ。「くるしみ括る」だし。
粘膜の奥の薄手のカーテンの向こうの窓の空をください (yuifall)
ペルノーに沈める夜の一欠片 淫雨に浅くなりゆく呼吸 (yuifall)