書肆侃侃房 出版 東直子・佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。
生命線ひそかに変へむためにわが抽出しにある 一本の釘
寺山修司は一時期すごく傾倒してて、歌集めっちゃ読んでました。その中で強烈に印象に残っているのがこの一首です。すごい勝手なイメージなんですけど、山小屋みたいなところに住んでて、木の机があって、抽出しはがたついてて、ぽつんと一本錆びた釘が入ってて、時々手に取って見るの。で、手のひらを削るところを想像するんだけど結局いつもやらなくて、またしまって、指に錆びが残る、みたいな感じです。釘を隠し持ちながらどこかで生命線を信じてるあたりが切ないですよね。このイメージ、自分でもなんで山小屋なのかなって思ったんだけど、多分(このアンソロジーには載ってないですが)
わが撃ちし鳥は拾わで帰るなりもはや飛ばざるものは妬まぬ
からの連想だろうな。
あとこの歌を見るといつも石川啄木の
いたく錆びしピストル出でぬ
砂浜の
砂を指もて掘りてありしに
を思い出します。。錆びた釘のイメージからの連想だろうな…。釘が錆びてるというのは私の完全なる妄想なんですけど…。
寺山修司は好きな歌多すぎるんですが、
きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えんとする
は鉄板で好きです。この歌のおかげでクロッカスを見ると気持ちが昂ります(笑)。
愛といふ煉瓦幾重に積み上げてあまりに朱夏の傷癒え難し (yuifall)