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「一首鑑賞」-110

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

110.きざすとききみはいなくて弦楽のうねりに脚をからめていたり

 (佐藤弓生

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」で石川美南が紹介していた歌です。

sunagoya.com

 きざす、という言葉から、とっさに身体的な欲求を連想しました。鑑賞文にも

 

「きざす」とは微妙な言葉だが、ここでは単に恋心がめばえるというより、身体的に「きみ」を欲している、というニュアンスだろう。今すぐに抱きとめたい「きみ」は、ここにはいない。きみの不在によってぽっかりと空いてしまった穴を満たしていくように、彼女は弦楽に身を任せている。

 

とあります。

 「きざす」にはある想いが生まれる、という意味の他、「芽生え」という意味合いもあるので、どちらかというと男性的な欲求がイメージされます。一方で「脚をからめていたり」は女性的な雰囲気があります。最初は性別が分からないまま読んでいて、リンクを開いてから作者名を見て女性の歌と分かったのですが、それでもどちらの読み方もして楽しんでいます。

 

官能的な歌を作るのは、意外に難しい。露骨なキーワードを入れれば良いというものでもないし、独りよがりになると読者が引いてしまう。

 

とあり、かつて林あまりの歌が読めなかった頃の自分を思い出しました…。

 

 

くちなわが頸の温度に馴るまでをうつくしきひとに強請るためいき (yuifall)

 

本歌取り、というほどでもないですが…

ダリアの蟻灰皿にたどりつくまでをうつくしき嘘まとめつついき (寺山修司

 

 

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