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桜前線開架宣言-山崎聡子 感想2

左右社 出版 山田航編著 「桜前線開架宣言 Born after 1970 現代短歌日本代表」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

山崎聡子②

 

 連作「グロリア」は太平洋戦争末期に日本軍が開発した「風船爆弾」という兵器がモチーフになっており、祖母の戦争体験が背景にあるのではないか

 

と解説にある、と前回書きましたが、戦争が背景にあると思われる歌を引くと、

 

封筒のただ一枚を棺として還ってきたという兄たちよ

 

まだ青いすすき野原をゆくときにわたしを追ってあそぶ影、影

 

などがあります。

 

 今の教科書に載ってるかどうか分からないのですが、『ちいちゃんのかげおくり』とか『一つの花』を猛烈に思い出したわ…。小学校時代の記憶ってもうほとんど残ってないような気がしてたのですが、この人の短歌読んでると猛烈に蘇ってきます。すごいパワーだ…。

 

 そういえば図書館に『きょうはこの本読みたいな』というシリーズがあり、『○○した日に読む本』みたいなタイトルで、それぞれのテーマに沿ったアンソロジー的な内容だったのですが、その1番目が『だれかを好きになった日に読む本』だったんですよね。で、やっぱり小学生としてはちょっと恥ずかしいタイトルだし、でもこれを最初に借りて、順番に借りていけば1から読んだって感じになるし、と覚悟を決めて真っ先に借りたのですが、これがトラウマな内容で…。特に最後の2編、『電話がなっている』(川島誠)と『The End of the World』(那須正幹←この人『ズッコケ3人組』の人じゃん…。マジで今まで知らなかった…)が、もう、今でも忘れられません。あれを読み終わった時、仰向けに横たわったまましばし呆然としたよ。あの時の部屋がへんに明るかったことを今もまざまざと思い出せるわ。あの内容、しばらく夢に見たもん(笑)。

 あのショックは、後で『野火』(大岡昇平)、『沈黙』『海と毒薬』(遠藤周作)読んだ時も感じましたが、多分今読んでも同じショックは感じられないと思う。子供の頃にトラウマ本とね、接したのはいい経験でした(笑)。てかトラウマ本他にもいくつかあったと思うんだけどタイトルが思い出せないんだよな…。もったいない。多分筒井康隆とか星新一とか一時期ハマってたからそれ系だと思うのですが。

 ちなみに大人になってから読んだトラウマ本で思い出せるのが平山夢明の『他人事』で、でもこの中の『クレイジーハニー』という短編だけ妙に好きだったな(笑)。ハニーフラッシュ!

 

 いや、マジでこの人の短歌すごい。小学校時代のトラウマを直で抉ってきますからね…。

 

 最後に戦争と関係ない歌を一首、

 

水飲み場で洗う傷口わたしから奪われていく熱の悲しさ

 

 こういうの読んでると、前にも何度か書いたと思うのですが、”人生を四季に例えると”、っていうのを思い出します。小学校時代は”青春以前”だから、”冬の時代”なんだよなって。子供として生きていくのってしんどかったなって今でも思う。だから子供が無邪気で純粋とかあんまり感じたことなくて、生きてくの大変だろうけどとりあえず生き延びなよ、っていう目で見ています(笑)。

 

 

膝小僧真っ赤に染めてわたしたち身体全部に産毛生やして (yuifall)

爆撃のようにひかって終わったの、あなたが去った時に世界は (yuifall)

 

 

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