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S2x06;NEVER BEEN KISSED 感想

glee感想については注意書きを必ずご覧ください。

yuifall.hatenablog.com

 望んでもキスもできない人生だったビースト先生と、望まないキスを強いられたカート、両方がとても切ない回でした。この回めっちゃ何回も見ちゃう。ビースト先生が「キスもしたことない。キスからすべてが始まるのに…、2人で作る未来や将来への希望」的なこと言ってますが、その直前にカートが暴力でキスされたのを目撃してしまった身としては何とも言い難い悲しい感じがしてなりません。。そしてシュー先生のキスは何の意味があんの?ただキスしたってだけで何もそこにそれこそ将来への約束とかなくないか?ただ自信持ってっていうだけ?

 しかしタイトル、日本語だと「初めてのキス」になってたけど、英語だと明らかな受け身だよな。「Never Kissed」じゃないんだ。「キスされたことがない」だよね。これってビースト先生はともかく、カート的にはどうなの?って思ったけど、カートが言ってるんだよな、Because until yesterday, I had never been kissed. Or at least, one that counted.(だって昨日まで、僕はキスされたことがなかった。それか少なくとも、数に入れられるようなものは)って。分かんないですけど、これって普通の表現なの?それとも受動態なのはわざとなの?

 

 この回はKlaineのことしかほぼ感想がないのでその他を先に書くと、パックとアーティの友情燃えます!男子はビースト先生にひどすぎ!

 

 さて話を本題に戻しますと笑、ブレイン初登場の「Teenage dream」がまず最高でしょう!この「Teenage dream」、最初はただかっこいいなーって思って聴いてただけだったのですが(アホ)、よく考えるとブレインって、男子校でロックスター並みの人気で、ケイティ・ペリー(女性)の曲を堂々と歌う男らしいイケメンのゲイっていう、カートの憧れを詰め込んだような存在なのか…。その後P!NKとかも歌うしね…。ブレイン、マジ王子だな。

 gleeってけっこうみんな歌ってる時誰か思い描いた相手の顔をまっすぐ見てることが多いんですけど、ブレインは一緒に歌ってる相手を真剣に見つめるので、デュエットの相手が勘違いして恋しちゃう気持ちとか、カートが後のエピソードで「君の恋人でいるのがどれだけ大変か分かってないよ。君は男らしいゲイで、女の子だって夢中にさせちゃう」みたいなこと言うのもすごく分かる。「Teenage dream」ではブレインはまっすぐカートを見つめていて、「君が僕の夢だ、後悔なんてしないよ、愛だけ」って歌詞もすごくハマるし、このシーンはほんとすごいなと思います。カートは一目惚れだよね。ずっとひとりぼっちだと思って戦ってきて、でもいじめられて心が折れそうな時に、王子様みたいな素敵な人に手を引かれて、見つめられて歌を贈られて、ゲイだって普通に打ち明けられて、心の底からめろめろだったのではないかと。

「見つめられるだけで心臓が止まっちゃうよ、運命の相手に出会ったんだ」

 

 そんな中カロフスキーにいきなりキスされてさー。あのシーンもマジでびびったわ。

 カロフスキーもカートに対してかなり複雑で屈折した気持ちがあったんじゃないかなと思います。カミングアウトできる勇気があって、カミングアウトしても去っていかない友達に囲まれて、父親にも認められてて、才能もあって、顔も綺麗で、自分が欲しいものを全部持ってる気がしたんだと思う。彼は体つきも趣味(アメフト)とかも男らしいし、特にアメフト的世界っつーかいわゆるマッチョ界にいるとゲイ的なものに対する侮蔑感とかすごそうだし、でも自分の話が合う友達はみんなそんなタイプで、ファッションや音楽が好きで女の子と違和感なく仲良くできるカートみたいにはなれないし、すごくすごく苦しかったんだと思う。

 羅川真里茂の『ニューヨーク・ニューヨーク』好きなんですが、ケインはアメフト部のエースでそこから警察になって、ずっとマッチョ界にいて、その世界だとカミングアウトはほぼありえなくて、隠れゲイとゲイフォビアが跋扈する場所で苦しんでるんだよね。自分自身もゲイであることを完全には受け入れられなくて、ゲイをどこかで憎んでて。高校時代はチア部の女の子と付き合ったりしてさ。

 逆に『Lの世界』なんか見てると、アート、ファッション業界はLGBTQ当事者はじめ、マイノリティが牽引していく世界で、やっぱりカートの生きてる場所とカロフスキーの生きてる場所ではカミングアウトに対するハードルが違いすぎると思う。カートは男だけど女子の世界に馴染んでるからよくても、カロフスキーは友達にゲイばれしたら今までの友達もアメフトも全部失うかもしれない、多分カートよりもカミングアウトの壁はかなり高かったと思う。

 だからこそ自由に生きているように見えるカートが妬ましくて、でも彼を見るたびに好きで触れたくて、同時に自分をそんな風に思わせる彼が憎くてたまらなかったんだと思う。惹かれるごとに苦しくて、底なし沼に引きずり込まれるように絶望して。本当はそうじゃないって分かっていても、お前さえいなければ俺は普通でいられたのに、って思っちゃうだろうな。そんな彼にお前はずっと無知なままだって罵倒されて、そんなんじゃないっていうどうしようもない苦しさとか彼にむかう性衝動とか恋心とかが溢れて抑えきれなくなってキスしちゃって、自分でもすごくショックだったのではないかと思います。

 

 でもカートも本当にショックだよね。それ以前にブリトニーとキスとかしてたけど、男の子とするキスは初めてだし。多分カートのことだからすっごくロマンチックな夢を見てたんだと思うんだけど、それが台無しにされて。その後殺すとか脅されたりして、もしかしたらだけどレイプされたりするんじゃないかって怖さもあったのではと思います。カートにとっては初めて自分が誰かの性の対象だって気付く瞬間だったんだろうし。

 後のエピソードでカートは性の話を避けてるってブレインに指摘されるシーンがあったけど、実際彼は一昔前の少女漫画の世界に憧れるロマンチストで、多分想像するロマンスのピークは素敵な彼と両想いになって終わり的な感じで、体は男の子だから女の子みたいに男に性的な目で見られることにも慣れてないし、誰かを具体的に性的な目で見たこともなくて、ゲイっていうのはいじめられる存在だということは現時点で痛感してきていても、男にそういう目で見られるってことは想像してなくてショックだったんじゃないかと思う。

 

 まあ、私には男性同性愛者の性の目覚めについては全く何とも言えないのですが、基本女子はさー、美人でもそうでなくても、男に値踏みされた経験がないわけじゃないじゃん。全然知らん相手にいきなりかわいいとかブスとか言われたりさ。カートはそういう経験ないままいきなりキスされて、カミングアウトっていうのはただ単に目立つこと、男を性的対象として見ていると周囲に知られること(これもきついよなー。何でわざわざこんなこと公言しなきゃないのかって思うよな)だけじゃなくて、男に性的対象として見られることも含むんだっていうことに初めて気づいたんじゃないかな。大人になると、誰かと性的なものも含めた関係性を築くためにも自分の性志向を(少なくともある一定のコミュニティ内においては)明らかにする必要が生じるわけだけど、まだ17歳のカートにとっては単純にアイデンティティの問題であって、性的なつながりというところまで考えが及んでなかったんだと思う。そこでいきなり結構ガチなキスされてめちゃくちゃショックだったんじゃないかな。

 今回、「Been Kissed」って受動態が使われてるのって、そういう「選別される」ってことに対する抵抗みたいな意味合いなのかなってちょっと考えました。男に性の対象として見られる体験を初めてしてしまうカートと、ずっと男に性の対象として見られてこなかったビースト先生と。どちらも「選別される」側の痛みだよね。S1のマドンナの回でもそういう感じがありましたが、この回では暴力と嘲笑というより痛ましい形でそれが描かれているなと。ティナやクインもそれに加担するんだけど、女子の立場からすると「私は男に選ばれた女(だから「選ばれない」あなたとは違う)」っていう目線になるんだよね。どうしても「選別される」側から抜けられないの。そして男の子たちが最後女性の曲を歌ってビースト先生に謝罪するシーンは、無意識に「選別する」側に立っていたことへの傲慢さを省みる場面なのかなと思いました。

 

 ブレインはカートに「逃げて来てもいいし、でも僕は後悔してる。いじめに立ち向かうって手もあるよ」ってアドバイスして「courage」のメッセージを送って、カートはそれですごく励まされるんだろうけど、でもその結果カートはキスされちゃうんだよね。。よかったのか悪かったのか分からないよ。というか、むやみにいじめに立ち向かうのが本当に正しいのかどうかよく分かりません。でもここでブレインのできるアドバイスってやっぱり限られちゃうよね。高校生が高校生に対して、学費の高い私立に転校しろってのは言えないだろうし…。カートもブレインもカロフスキーも子供だし、やっぱり周りの大人(先生たち)がもっとしっかりするべきだったのではとずっと考えてしまう。本気で対処してくれたのパパ(とキャロル)だけだもんな…。

 まー、そのキスのこととかも含めてブレインに打ち明けて、彼に大丈夫って言ってもらえて、一緒に立ち向かってもらえて、そのことはよかったなと思います。だってあのキスのことは、カートは他の人には言えなかったと思う。性的被害ってやっぱりどんなに心を許してても肉親には打ち明けにくいし、特にカートは男っていうのもあって、S4でライダーのセカンドレイプのエピソードもあったけど、友達に打ち明けてもそんなんどうってことないって言われたり、最悪、お前は男が好きなんだからよかったじゃん、みたいに言われたりしちゃうかもしれないっていう怖さはあっただろうし…。

 カロフスキーのことは、確かにブレインのメッセージがきっかけでこういうことになっちゃったっていうのはあったのかもしれないけど、正直遅かれ早かれみたいなところもあったんだろうし、今回ブレインがいて彼にだけでも打ち明けられたっていうのはカートにとってよかったなと思います。

 

 この辺のことすごい色々考えちゃうんだよな…。カロフスキーはこの後もずっと自分を受け入れられなくて苦しんでて、覚悟ができないまま強制的にアウティングされてしまって自殺未遂までしちゃうけど、その後S3でカートが「友達になろう」って支えてくれたことだけじゃなく、最初出会った時にブレインが「きみの力になれると思う」って言ってくれたこと、ずっと覚えてたんじゃないのかなって。S6であんな展開になっちゃったしそもそもS1S2でカートをいじめたりしてたけど、私はどうしてもカロフスキーのこと嫌いになれなくて。Brittanaが言うように、きっとこの2人に憧れてたんだと思うんだよな。自分にも居場所があるんだって、カートやブレインの生き方を見ながら考えたんじゃないかな。ブレインと別れた後、幸せになってほしいなって思ってます。

 

 カートの「courage」のロッカーほんとかわいいよねーー。あの写真どこから手に入れたんだって思ったけど(笑)。あのキメ顔なんなん(笑)?学生証の写真か??

 それはともかく、2人でカロフスキーと話した後「あれが初めてのキスだったんだ」ってカートが打ち明けて、ブレインは「ランチおごるよ」って慰めてくれるけど、ここ見てるといつもこいつキスしたことあるんかいって思ってしまうわ(笑)。最初はブレインがカートよりしっかりした感じだったから色々経験あんのかなーとか思ってみてたけど、後から恋も知らないし付き合ったこともないしセックスしたこともないし肉食系でもないみたいに本人が言ってて、じゃああの時ってキス未経験??っていつも考えてしまいます(そしてその後レイチェルとガチなキスしてましたけどそれはいいのか…)。

 

 何かこの人って多分後からどんどんキャラ変されてるので後から論じることにあんまり意味はなさそうですけど、S2x20プロム回で「(通常11月に行われる)Sadie Hawkinsの前にカムアウトしいじめにあって転校」って言ってて、S6x12(2009)では高1の冒頭(9月頃?)ですでにカムアウトした状態でダルトンの制服着てるから、カムアウト14歳??みたいな感じで、S2ではカートに「実は恋がよく分からないし、ボーイフレンドもいなかった」発言、S3ではアーティに「(セックスはしたことなくて)時期を待ってる」発言、S4でティナに「彼女がいたことはないし肉食系のゲイでもない」発言してることから考えると、かなり早い段階でセクシャリティを明らかにしてる割には恋愛関係の発展は男女問わず全くないということになりますがいいのですか?初登場から何でこんな自信満々キャラなの?ふしぎー。現時点ではある意味カートのが経験値高いよ!男女ともにキスしたことありますからね!正直、あんなに堂々とゲイでいるからにはせめて女子との交際経験くらいはあってほしかったなー。本人もアルコール回で言ってたけど、恋も知らんし女子と付き合ったこともないのになぜセクシャリティがそんなはっきり分かんの?まあ私だって誰かと交際する以前から自分は異性愛者という自己認識だったので交際経験はなくてもある程度分かるだろうとは思うのですが、恋も知らないって言われるとさー。。カートはずっと男の子に恋してたし女子ともキスした上でゲイって自己認識だから分かるけど。

 なのでブレインも男子とキスくらいはしたことあると思うな。レイチェルと素面でキスしたときにはっきり「僕はゲイだ」って言うのはさー、やっぱり男子とはしたことあるから違いが分かるんだと解釈したいよね(笑)。ゲイ友いたって言ってたしさ…。ノリか好奇心でキスくらいしてるよ、絶対(笑)。そうじゃなかったらあんなめちゃくちゃセクシーなキスはできません(笑)!

 

 

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