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「一首鑑賞」-316

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

316.アイスクリーム君が食べしと死の四日前に記せり読むたびに泣く

 (草田照子)

 

 砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで大松達知が紹介していました。

sunagoya.com

 アイスクリームを死ぬ前に食べる、というとどうしても『永訣の朝』(宮沢賢治)を連想してしまいます。これは、「君」はどういう状況だったのだろうか。もう明らかに衰えていてアイスクリームくらいしか喉が通らない状態だったのだろうか。それとも、あの時はまだアイスクリームも食べられていたのにまさかその四日後に亡くなるなんて、ということなのだろうか。

 鑑賞文には

 

 アイスクリームは、かわいいというか、大のオジサンにはあまり似合わない食べ物かもしれない。子供が嬉々として食べるのがイメージ的には合っている。

 かなり衰弱していたはずの夫が子供のようにアイスクリームを食べていたというだけで泣ける。

 

こんな風にありますが、実際はむしろアイスクリームは衰弱した人にぴったりな食べ物に思えます。冷たくて口当たりがよく、噛まなくても食べることができ、保存がきき、少量である程度のカロリーを摂ることができるので。それでも、確かにイメージとしては無垢な感じがあります。ここで想像するのはやはりカップのバニラアイスで、甘くて白くて幸せの象徴というか「天の食べ物」みたいな。きっと「君」は微笑んだだろう、と思う。もしかしたら最後に摂ったまともな食事だったのかもしれない。もう死は避けられなかったのかもしれない。時間を戻せるとしてもこの時点ではないだろう。

 それでも、「君」は生きていたんだ、と思う。四日前。

 とても切ないですね。

 

 

衰えは無論知れどもその時が来ればまさかと呟くだろう (yuifall)