「一首鑑賞」の注意書きです。
364.沈黙は苦手といふより恐怖なり 顔まつしろな牛がひしめく
(石井幸子)
砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで棚木恒寿が紹介していました。
顔まつしろな牛!すごい表現。しかもそれが「ひしめく」となるとそれは本当に恐怖ですね。たぶん「ひしめく」の漢字表記である「犇く」からこの歌のイメージは成り立っているのだと思いますが、それでも「顔まつしろ」はなかなか出てこないよなぁ。
この歌そのものもとても面白いのですが、鑑賞文に他の短歌も引用されていて(棚木恒寿の「一首鑑賞」コーナーは同作者の他の短歌も色々引用してくれていてありがたいです)、生き物が登場する歌がどれも面白かったです。
自転車が夏の坂道下りゆく育ち盛りのイルカぢやないか
牧場に放し飼はるるほはほはの羊にもある老若男女
花冷えの真夜を目覚むる新生児この世に縋るやうに乳飲む
特に「ほはほはの羊にもある老若男女」が好き。この発想も言葉遣いもとても好きです。
生きてゐる人ばかりなりスクランブル交差点の信号かはる
は、
ことごとく生きてゐる人、生きてゐる人だけがどつと電車を降りくる (花山多佳子)
と似ていて、人が多すぎる空間では生者の向こうに死者が幻視されるのだろうか、と思いました。
目的のない会話落ち着きない仕草つまんねえ台詞聞いてたいずっと (yuifall)