邦楽歌詞感想の注意書きです。
ダンス・ダンス・ダダ (MAISONdes feat. EMA, たなか) 2021年
作詞作曲:Tanaka
転倒 明滅 閃光 延長戦の
その果てにあなたが待ってるはず
今日も踊る
現象 抵抗 冷凍 螺旋を描いた
その果てにあなたが待ってるはず なの に
明滅してよ ほらダンス・ダンス・ダダ
乱れた昏い step を抱きしめて
ただ曖昧な衝動
ダンス・ダンス・ダダ
壊れてしまえばどこにだって行けるね
転倒してよ ほらダンス・ダンス・ダダ
その手でいま確かめて 生きてるってこと
あなたじゃなきゃ踊れないの
ダンス・ダンス・ダダ
醜い海に一緒に落ちていこうね
この曲はここ半年くらいで一番ハマりました。歌詞のダークな感じはダダイズムから来てるんですね。メロディやリズムも難解なのですが、コンポーザーはたなか(ぼくのりりっくのぼうよみ)だそうです。歌っているのはDUSTCELLのEMA(いずれも敬称略です)。
歌詞では、ダダを踊る、というイメージが繰り返されます。「乱れた昏い step」「踊れダダの証を」「暗闇で体揺らして」「繰り返しのなかで少しずつ変わってく」「盲目かつ堅牢な step」「螺旋を描いて」「奇妙な軌道を描いた腕」「今日も踊る」「螺旋を描いたその果てにあなたが待ってるはずなのに」。でも「あなたの残した思いは骨へ」「描いた腕はどこかに消え」「淡い青した残響が居残る部屋」という断片的な言葉から、すでにあなたは待ってはいないのではないかという感じも受けます。「私だった何かが排水溝つたって取り返しがつかないところまで滑り落ちていく」「壊れてしまえばどこにだって行けるね」「醜い海に一緒に落ちていこうね」という言葉からは死を連想させられますが、一方で「その手でいま確かめて生きてるってこと」とも歌っており、まだ死は訪れていないとも思えます。
ダダイズムとは1910年代半ば、第一次世界大戦中のヨーロッパやアメリカで起きた芸術運動です。 第一次世界大戦に対する抵抗やそれによってもたらされた虚無を根底思想に持っており、既成の秩序や常識に対する否定、攻撃、破壊を大きな特徴としています。 ダダイズムに属する芸術家たちをダダイストと呼びます。
「ダダ」とは辞書から無作為に選んだ意味のない言葉だとか。無意味を意味し、理性を破壊し、科学的・技術的な進歩と合理性を否定し、武力や戦争を否定し、純粋な美を否定し、フォトモンタージュやコラージュなどの技法で“芸術とはアーティストが自分の手で制作した一点もの”という精神を否定したダダイズムは、最終的にシュールレアリスムへ変化し終焉したのだとか。日本では美術よりも詩の分野で取り入れられ、中原中也が最も有名です。
詞に中原中也のダダイズムが反映されているかやタイトルから村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』が意識されているのかということは文学に詳しくない私には分からないし、この曲にコラージュ的手法が使われているかどうか音楽に詳しくない私には分からないのですが、ここで歌われている「わたし」や「あなた」は、既成の秩序や常識のことなのかもしれないなーと漠然と思いました。わたしたち、壊れてしまえばどこにだって行けるね。
透明になるまで踊る 壊れたら足をハートを目を挿げ替えて (yuifall)