「一首鑑賞」の注意書きです。
216.都会にもあるけど帰りたくなるよ金木犀が写メで届いて
(木下龍也)
砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで山下翔が紹介していました。
「帰りたい」と「金木犀」で『僕の地球を守って』(日渡早紀)を連想しましたが、あれは「木蓮」だったっけ??最初読んだ時、この内容で少女漫画雑誌に載ってたんだ…、ってびっくりした記憶が。
なんていうか、「帰りたい」ところは、この歌では多分ふるさとなんだけど、今そこにあるふるさとじゃないんだろうな、って感じました。あの頃のふるさとなんだろうなって。つまり、帰りたいところはもうないんだって感じがします。多分誰にとってもそうなんだろうけど。あと、「ふるさとはあの場所じゃなくあの頃」って言葉をどこかで聞いたことがあるような気がするのですが出典が全く分かりません。
ただ、そう思ったのはこの歌に漂うどうしようもないノスタルジックな雰囲気のためで、実際は「ふるさとから金木犀の写メが届いて、その木自体はその辺でも見られるけど、帰りたくなった」っていう現実の状況を指しているんだと思います。それでも、「ああ、とても帰りたい、今はもうどこにもない場所に(あるいはどこへかは分からないけど猛烈に帰りたい)」というような寄る辺ない感情が湧き上がって来るような歌です。
鑑賞文には「写メ」に触れられていました。
ここで自分のいま暮らすところを「都会」と認識する感じや、この写真が「写メ」(写メール、写真つきのメール)つまり携帯電話のふるい機能によって届く感じそのものに、そもそも、ある種の「古さ」がまつわることに注目する。
単に「写メ」とか使ってた時代の歌なのかと思って読んでいたのですが、この鑑賞文を読んでからよくよく出典を見てみると
木下龍也『オールアラウンドユー』(ナナロク社、2022年)
と書いてあります。めっちゃ最近の歌でした(これ書いてるの2023年4月です)。そうなると、確かに「写メ」という言葉は古いかも。というか、口頭で「写メ送ってね」って言われても「携帯電話で撮った写真を何らかの形式で添付して送ってください」という意味合いだなって感じで特段「今さら写メとか言わんだろ」とか引っかからないけど、文字になった途端に「写メ」っていつの時代の機能??ってなるのが不思議です。この「写メ」がまた、「あの頃」感を醸し出してくるんでしょうね。
それにしても、自分には、いきなり花の写真を送ってくるような人は誰もいないなって思った。まあ自分も送らないんですが…。
でも友達にいきなりするかな。もしかしたら送ってきた相手はお母さんなのでは?と思ったりした。
また同じ夢だと分かるどの道を行っても揺れている立葵 (yuifall)
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