「一首鑑賞」の注意書きです。
217.夜の十時をまわってもにぎやかなモスバーガーでひと息をつく
(土岐友浩)
砂子屋書房「一首鑑賞」コーナーで山下翔が紹介していました。
「モスバーガー」という固有名詞がいい感じです。やっぱ、「マクドナルド」じゃないなって。マクドナルドだったら、夜10時も当然にぎやかだろうしひと息はつけない気がします。モスバーガーの適度なにぎやかさと、そこでちょっと落ち着ける感じ。
この歌に心惹かれたのは、学生時代を思い出したからです。当時、サークル活動の後でモスバーガーとかファミレスに寄るのが習慣になっていて、大勢で押しかけてはジュースやら軽食を摂って、しゃべって、夜中に解散してた。大学行って、その後家のこともして、サークル活動もして、それからさらにモスやらファミレスやらでおしゃべりして、それから帰ってお風呂に入ったり家事したりしてから寝るわけで、いかにも学生の時間の使い方というか…。そんなことを「モスバーガー」は思い出させてくれます。
今だったら、あんな時間にあんな人数でお店に押し掛けるのは社会通念上あまりよいことだと思われないかもしれない。未成年飲酒も、講義への出欠も、当時より今の方がずっと厳しいし、多分今どきの学生さんは自分たちの頃よりもずっと真面目なんだろうなって思う。もしかしたら、ちょっとした馬鹿をしたりとか羽目を外した経験とか、友達や仲間とみんなで何かしたり、そういうことに価値を見出す人は減っているのかもしれない。でも、こういう歌を目にしてすぐに思い出せる何かがあることを私は愛しているし、形は変わってもきっと誰もがそういう何かを持っているんじゃないか、とは思っています。
鑑賞文では、にぎやか「な」、とか、ひと息「を」、という助詞に着目して、細かい心情を読んでいます。この「モスバーガー」には、深い意味はないのかもしれない。単に近くにあったからとか、マクドナルドよりは落ち着けると思ったとか、そういうことなのかも。
でも、どこかで、「モスバーガー」を安らぎの場所として認識している人だったらいいなって思いもあります。どこでもよかったわけじゃなく、ここでひと息つきたかったんだ、と。
ファミレスでライチ盛ってた先輩が「社長」になってる「おはよう日本」で (yuifall)