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伊坂幸太郎『PK』 感想

 不定期読書感想文。以前 読書日記 2024年5月15-21日 でそのうちアップしますと書いていた、伊坂幸太郎『PK』の感想です。

 というか、謎多い話だったので覚え書き的なメモであってほぼ感想ではないかもしれません。あと別に謎は解けてなくて投げてます。

 

 以下ネタバレそのものなので畳みます。

 

「PK」

A;小津・宇野パート(2001年):ワールドカップフランス大会のアジア予選リーグでイラクと対戦し(@カタール)、PKを決めて勝利する。対戦の数カ月前、海外遠征中のホテルで見知らぬ男から「PKを外せ」と要求される。ある日海辺のマンションへ連れていかれ、監禁されて脅される。宇野に打ち明けられなかったが、宇野も「命令されたのか」と言い、何か知っている風(宇野も脅されていた?)2人は17年前小学生でいじめにあっていた。ある日ゾンビのように生気のない集団を目撃する。その後、マンションから落下する幼児を背広を着た男性が助けるところを目撃する。

B;作家:息子たち(兄弟)に友達の「次郎」の話をする。見知らぬ男から作品の検閲を受け、「書き直し」を要求される。作家には浮気の前科がある。

C;大臣(2011年):秘書官と父の思い出(「次郎」の話、未来の話)をする。嘘を強要されている。小津はワールドカップの後怪我を負い引退、海外でタイフーンに巻き込まれ死亡。小津は2001年当時夫婦仲が悪かった。その数年前に不貞行為があった。最終予選開始の半月前に小津と宇野は揃って行方不明になっている。その頃、伊豆にある古い分譲マンションで特定の部屋から1週間ほど悲鳴や怒声がきかれていた。大臣は27年前、30歳の時に子どもを助けたことがある。ワールドカップ予選の日に都内で小津と宇野の小学校時代の上級生(当時のいじめっ子・スポーツ賭博に関与)が殺されている。車の事故で、即死。犯人は見つかっていない。大臣の父親は浮気をしていたとき、浮気相手から家に電話がかかってきた。たまたま家の床にゴキブリがいて、母親は二階へ逃げた。父親が電話に出て事なきを得た。ゴキブリは殺した。最後、秘書官が「次郎」かもしれないと分かって終わる。

D;モブ?:男が女にPKについて話している。殺人を事前に予知してそれを防ぐ人間の話をする。宇野は2001年に(PKの2カ月後に)死んでいる。小津は予選のはじまる少し前に2週間くらい行方不明になっている。小津には当時小学1年生の息子がいた。

E;新人議員:これは大臣の若い頃?父親が作家。父親は議員が中学生の頃癌で死亡。その頃、東南アジアの広範囲で大きな地震が起きていた。弟の家に向かう途中、ゾンビのように生気ない集団を目撃する。

 

 時系列的には、

大臣は1954年生まれ。父親が死んだのは60年代後半。つまり、ゴキブリが現れたのは60年代のどこかと思われる。

1984年に30歳の新人議員が幼児(本田)を助け、それを小学生だった小津と宇野が目撃する。

2001年、ワールドカップフランス大会アジア予選リーグが行われる。その数カ月前、小津は見知らぬ男から「PKを外せ」と脅される。拒否したところ拉致・監禁される(半月前)。同時期に宇野も行方不明になっている。カタールでのイラク戦で小津はPKを決める。同日、サッカー賭博に関与した小津と宇野の小学校時代の上級生が殺されている。宇野はこの2カ月後殺される。小津は2002年のワールドカップ後怪我をして引退、その後死亡。

2011年、57歳の大臣は嘘を強要されている。小津と宇野の会話について秘書官に捜査を依頼。父親が作家であること、父親の友人に「次郎」という名前の不幸な人間がいたことを話す。

秘書官が「次郎」であることが分かって終わる。

モブ?が話している「殺人を予知して防ぐ人」は本田。

 

 普通に読むと、「作家」パートが50年代とかになっちゃうし、秘書官は80歳とかになっちゃうのでかなり矛盾がある。

 

 

「超人」

1.三島が「スーパーマン」の映像を見ている。

2.三島の自宅

三島:二子玉川の一戸建てに暮らす独身。作家。スーパーヒーローが好き。

私(田中):半月前に一夜限りの浮気をし、妻と別居中

本田:警備会社の営業社員を名乗る。殺人をする人が事前に分かると言う。二十代後半に見える。

この世界では、2002年のワールドカップは日韓合同開催。宮城県で日本とトルコは対戦し、負けている。

東京レッドジンジャーはこの日PKで敗退。

3.居酒屋: 大臣は就任後2カ月。秘書官と一緒にいる。父親は昔浮気相手から自宅に電話をかけられた。家にいた母親がそれに出て大騒ぎになった。大臣は27年前、30歳の時に子どもを助けて有名になった。この世界では、秘書官は普通の青年風。大臣は秘書官に人探しを依頼している。

4.三島の自宅。2の続き

5.本田の回想シーン。名前マリオかよ。2年前から、殺人をする人の名前、日付、住所、数字が書かれたメールが送られてくるようになる。

6.4の続き。三島はこの日のサッカーの審判の判定はおかしいと憤っている。

7.審判。ファウルではないと思いながらPKを与える。

8.本田のところに、「10年後に大臣が1万人の被害者を出すようなことを起こす」と通知が届く。本田は帰る。三島は「本田の言っていることは『デッド・ゾーン』だ」と言い、スーパーマンの続きを再生する。

9.本田の回想シーン。年齢ははっきりしないが、幼児。27年前、落下する場面。「君には役割があるからね」「これが、こうなります」という声が聞こえる。

10.平日の夕食時。レストランで本田と大臣が会っている。8の5日後。母とは絶縁状態だが、大臣が本田を探していると連絡があり会うことになった。食事中会社から電話がかかってきて中座する。レストランの前で大臣を狙う男たちに襲撃されるが、マントの男に救われる。「君も闘っているのか」「俺たちは楽じゃない」と言われる。

11.サッカーの試合で八百長が発覚。審判がサッカー賭博に関わっており、不正に敵チームにPKを与えた。本田のところには、大臣の件は誤報であるという通知が来る。

それを聞いている「俺」がいる。俺は空に消える。

 

「密使」

僕:握手をするとその相手から6秒間奪える能力があることを知る。日付が変わる直前、1人につき6秒間のみ。握手をするためだけにヒーローショーの仕事につき、子供たちと握手をしている。名前は三上。

私:青木豊(50代前半、七三、背広)という人物と話している。私は30代くらい。場所は千葉県市川市の物流倉庫の地下。「将来耐性菌が蔓延して人がたくさん死ぬ」「その未来を変えるにはこのゴキブリが必要」「ただし世界を救うとあなただけは死ぬ」と言われている。ゴキブリはある家庭に送られる予定。ゴキブリが来なければ、そこの夫人は夫の浮気相手からの電話を受けてしまう。ゴキブリが送られれば、夫人は2階へ逃げ出し、夫が電話を受けることになる。ワールドカップの開催地が変わる。耐性菌蔓延は阻止される。私は消え去り、どこかの幼児になる。

 

僕は「誰か」からの命令で30分を手に入れ、ゴキブリを奪って代わりに記憶媒体を置いて行く。「誰か」の目的は耐性菌蔓延を止めることで、そのためにそのゴキブリを必要としている。「誰か」は2010年よりずっと先の未来にいるような話しぶりをしている。

僕がゴキブリを奪い取ったためにゴキブリは私の世界から消え去る。外で緑色のコスチュームの男が目撃されている。

 

 

「密使」から読むと、「耐性菌蔓延」という未来を変えたい集団が2つあることが分かる。集団Xはゴキブリを過去に送り込むことで人の行動を変えようとしており、集団Yは「時間スリ」の能力がある「僕(三上)」にゴキブリを盗ませることで耐性菌に対する抗菌薬を作ろうとしている。集団Yは未来人っぽい(パンデミックは今起きていると語っている、2010年を遠い昔のように語っている)。一方集団Xは未来をシミュレーションできるだけの現代人?「PK」の舞台が2011年であることを考えると、だいたいそのくらいの年代の出来事?

 

 集団Xの方法が成功した世界が「PK」。

 ゴキブリは「作家」の家に送られ、妻は2階に避難し、作家は修羅場を免れる。ただしこの世界では未来を変えるために何らかの脅しが常に行われている。脅しているのは「秘書官」のように見えるし、もしかしたら「青木さん」かもしれない。

 彼は小津・宇野については「PKを外せ」と言う。(おそらく)2人ともどこかへ監禁して脅してすらいる。しかし小津は宇野の言葉でPKを決める。結果として宇野も小津も死亡する。

 作家に対しては小説の内容の変更を求める。作家がどうしたのかは分からない。また、この作家と大臣の父親の作家が同一人物であるかは不明だが、大臣の父親は癌で死んでおり、その時東南アジアで大地震が起きている。

 大臣も信念を曲げるよう脅されているが、相手は同じ政治家(幹事長)だし、「破廉恥なスキャンダルが起こるだろう」みたいな脅しなので、これは政治的駆け引きに感じる。秘書官からのアクションは特になし。

 この世界ではゴキブリ作戦が成功しているので、耐性菌蔓延っぽい話は特に出てこない。

「密使」の「私」は幼児(本田)に生まれ変わり?、若き日の大臣に助けられている。

 2002年のワールドカップはフランスで行われることになっている。

 

「作家」の世界と「大臣」の世界がうまくクロスしない謎?

「大臣」の父親は「作家」っぽい。「次郎」の話、未来の話、浮気の話などに整合性がある。一方で「作家」の子どもたちはテレビゲームをしていたりして、50年代後半~60年代前半とは思えない。

 第一の説としては、大臣の父親の「作家」とBパートの「作家」は別人である説。この場合、おそらくBパートの「作家」は大臣の弟。同じ父親から育てられているから、昔自分が聞かされたように子供に「次郎」の話や未来の話をしている。大臣が話す「次郎」のエピソードに登場する小道具は「時計、ミシン、テレビ」で、作家が子供に話している次郎のエピソードに登場する小道具は「テレビ、ゲーム、ミシン、歯ブラシ」だった。「ゲーム」の有無は、語られた時代が違うこと、語り手が違うことを意味しているのではないか?

 ただしこの説だと、「作家が脅されている」ことと「大地震」の因果関係が分からない。

 第二の説は、「PK」自体が集団Xのシミュレーションである説。「密使」では集団Xが未来を変えた結果「私」は死ぬことになっていたが、実際は「私」は幼児の本田になって助かっている。この時大臣(新人議員)に救われたことで時空がねじれた?本当は「私」は死ぬはずだったし、小津と宇野はPKを外すはずだったし、作家の小説はもっと「きれいごと」で埋め尽くされていたはずが、ここで運命が変わってしまった?

 ただしこの説でもタイムパラドックスみたいなものはうまく説明できないように感じる。

 

 他にも、

・Dパートの謎(おそらく本田の話をしているこの男女は何者?)

・この世界でも本田は人助けというか人殺しというかしてるっぽいけど、誰の指示?

1984年に目撃されたゾンビのような集団は何?(仮説:集団XもしくはYなのか?新人議員が幼児を救ったことで、未来を変える決意をした?)

・小津と宇野の先輩が殺されたエピソードは何を意味する?犯人は誰?また、サッカー賭博はどう関わる?(仮説:小津と宇野がもし脅しに屈してPKを外していたら、先輩と今もつるんでいてサッカー賭博に関与し、わざと負けたことにされていた?PKが決まってしまいそのシナリオが使えなくなったために消された?)

・青木さんが作家を脅していることは間違いなさそうだが、青木さん=秘書官(=次郎)?それとも2人は別人?青木さんは集団Xの一員だが、秘書官は?XなのかYなのか?

 

 

 集団Yの方法が成功した世界が「超人」

 集団Xよりスマートな方法で未来を変えているので、脅しなどは行われていないっぽいが、誰かが(集団Yが?)本田に命じて殺人を防がせたりしてる。

 ゴキブリは盗まれているので「作家」の家には送られず、浮気はバレている。でも特に作中に「作家」は登場しない。

 2002年ワールドカップは日韓合同開催(より現実に近い?)

 この世界での「作家」は三島(独身)で、浮気をしたのは「私(田中)」(職業不詳)。本田は27年前に大臣に救われている。大臣は現在、就任2カ月目。

 小津と宇野については言及されず。おそらくJリーグと思われるが、サッカーの審判がサッカー賭博関連で八百長をしていることが発覚する。

 

 おそらく「密使」が「正史」なので、こっちが「世界A」になっているはずだが、幼児の本田は落下する時「これが、こうなります」という声を聞いている。

「私」は「密使」では死なず、よって幼児にならなかったはずでは?「世界A」と「A’」がクロスしてる?

 本田に送られてきた「大臣が将来1万人を殺す」というのは、「PK」で描かれてきた、「信念を曲げなければ災いが起きる」ということ?つまり「PK」と「密使」を合わせると、「大臣が偽証しなければ将来(耐性菌が蔓延して?)1万人が死ぬ」ということを言っているように思える。

 途中で大臣を殺そうとする集団が現れる。つまり、「本田にメールを送ってくる誰か」と「男たち」のどちらも大臣を排除しようとしている。

 しかし「男たち」を「俺(青い服の男)」が追い払うと、本田に「大臣の件は間違いだった」とメールが送られてくる。この時同時に八百長の件も発覚する。

 これは、「審判が八百長を認める(勇気を示す)」→未来が変わる、ということ?

 

 これ分かんないのですが、「PK」の世界ではむしろ「信念を貫く・勇気を示す」→「悪いことが起こる」という未来が描かれます(だから信念を曲げさせようとする人が現れる)。一方「超人」では「審判が八百長を認める」→「大臣が1万人を殺す未来が変わる」という流れに見える。これも「よりスマートなやり方」になっているから?

 でも一方で殺人を防ぐために本田に殺人させたりもしていて、あんまりスマートに見えない点もある。

 

解決してない謎

・この世界でも本田は「密使」の「私」なのか?でも集団Yは「私」の犠牲を防ぐためによりスマートなゴキブリ窃盗作戦を行ったはずで、「私」が「本田」になっていたら矛盾しているのでは?

・本田にメールを送り付けているのは誰か?

・大臣が1万人を殺すことになるのはなぜ?(どういう手段で?)

・大臣を狙う男たちはどこからやってきた?

・「俺(青い服の男)」は三島なのか?

・集団Yは「ゴキブリから抗菌薬を作る」と言っているということは、集団Yの作戦が成功した「超人」世界では結局のところいずれ菌そのものは出てくるということ?

 

 

「密使」にも分からない点があって、

・「僕(三上)」は「PK」「超人」で登場した?

・青いスーツの三島と緑のスーツの三上は関係ある?

・ゴキブリはあの後どうなった?未来にどうやって送った?それとも現代の誰かが受け取って、未来のために抗菌薬を作ったのか?

 

 

 色々考えてみたのですが全ての謎は解けませんでした。まあいっか。