いろいろ感想を書いてみるブログ

短歌と洋楽和訳メインのブログで、海外ドラマ感想もあります

短歌タイムカプセル-木下龍也 感想

書肆侃侃房 出版 東直子佐藤弓生・千葉聡編著 「短歌タイムカプセル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

木下龍也

 

B型の不足を叫ぶ青年が血のいれものとして僕を見る

 

 これ、面白いなーと思ったのですが、いつも通る大きい交差点のそばで献血を呼び掛けている若い男の人がいて、いつ見てもすごい一生懸命で、勝手に好青年だなって思ってたので、どっちかっていうとこの「青年」の方に感情移入してしまう私です(笑)。献血してあげて!「血のいれもの」でもいいじゃない。血はまた作れるんだし(笑)。この人B型なんかな。

 

 この人の歌には「飛び上がり自殺」「鮭の死」「僕が鬼」「火葬場の煙」「死ぬ子どもたち」など、死のモチーフが多くあります。でも何となく言葉が綺麗なんだよな。どうしてかな。

 その中で

 

立てるかい 君が背負っているものを君ごと背負うこともできるよ

 

っていうのも混じっていて、なんだか胸が痛くなった。こう言ってくれる男の人のやさしさが嬉しいと思う時期も人生にはあるのかもしれません。でも、私が背負っているものはあなたには背負えないんだよ、ってことをいつか2人とも知るのだろう。

 

ゆうぐれの森に溺れる無数の木 つよく愛したほうがくるしむ

 

 っていうのも、若い恋だなと感じました。本当は愛せないことの方がくるしいし、愛して、全身全霊で愛を注いで、少しも返ってこない愛に人は人生を捧げるのです。

 俵万智の短歌で

 

食べたいでも痩せたいというコピーあり 愛されたいでも愛したくない

 

ってあったけど、これも若い頃の歌で、多分今だったらこういう歌は作らないんじゃないかなって思います。

 

 だけど、「血のいれもの」みたいな都会的風刺のセンスが効いた歌を詠む一方で、「立てるかい」みたいな、こういう情熱、生活や現実に摩耗しない詩的な美しさ、そういう言葉を持ち続けていられるということにときめきました。なんていうか、ギャップ萌えですよ(笑)。だってさ、

 

鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい

 

みたいな歌読んでると、この人ってスタイリッシュな都会のイケメンなんやろうなーって思うんですよ(勝手なイメージ)。でもそこで「つよく愛したほうがくるしむ」って言われちゃうと、なんだか急に心の柔らかい部分を差し出されたような気持ちになって、触れていいのかな、ってどきどきしてしまいます。多分モテるんだろうなー(笑)。だってスタイリッシュな都会のイケメンにさ、「つよく愛したほうがくるしむ」って言われたらそのギャップにときめくし、つよく愛して苦しんだことがある人なんだな、とか、そんな弱みを私には見せてくれるのね、とか、さらに言うなら私のことも強く愛してくれるのではないか、という期待すら抱かせるのではないだろうか。

 

 こうやって色々妄想すんの好きだわ(笑)。でもそんなイケメンは私には手に負えないので恋はしないな…。

 

 

こわくてもいいよ、ちょっぴりねむってもいいよ、たてなくなってもいいよ (yuifall)

One of a kind になんかなれねーし名前はないんだ家畜みたいに (yuifall)

 

 

桜前線開架宣言-木下龍也 感想 - いろいろ感想を書いてみるブログ

桜前線開架宣言-木下龍也 感想2 - いろいろ感想を書いてみるブログ