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01x21 - Many Happy Returns 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 原題がすごく意味深です。日本語タイトルは「運命の日」。リースの運命の日についての話です。

 この回はフィンチのリースに対する思いが、ちょっと切ない回でもあります。

 

 いつものオープニングシークエンスが入らず、S1E1冒頭のリースの語りが入ります。ここからS1ラストに向けて、リース回→フィンチ回→ラスト、と繋がっていくクライマックス感が出て来たよ。「その人を突然奪われたら人はどうなるのだろうか」、というモノローグに重なるように、バスに揺られるリースのシーン。E1冒頭の地下鉄のシーンを思い起こさせる感じですが、マンハッタンの地下鉄ではなく郊外のバスで、声をかけてくれるのもチンピラではなくて純真そうな子供です。「おじさん、どうしたの?」リースはスーツの前をかき合わせて「仕事を辞めたんだ」と答えます。スーツの中のワイシャツには血が…。ここで「次はニューロシェル」とアナウンスが入ります。

 このシーン、最初はニューロシェルにこれから行くところなんだな、としか思っていなかったのですが、後から考えるとおかしい。この回では、リースがジェシカのかつての勤め先の病院とジェシカが住んでいた家を訪ねるシーンのフラッシュバックが入るのですが、どちらのシーンでもワイシャツに血なんてついてなかった。しかもジェシカを訪ねる前だったなら、これほど絶望的な表情ではないのでは?彼女がすでに死んでいることを知ったのは病院に着いてからです。ということは、このバスのシーンはジェシカの家を訪ねる前ではなくて後ということになります。ジェシカの家を訪ね、そこで何かがあって、血がついて、そしてどこかで「用事」を済ませてからまたニューロシェル方面に向かうバスに乗っていると考えるしかない。

 

 この回では3つのエピソードが同時進行で進みます。一つはフィンチが対処している「番号」の話。もう一つはドネリー捜査官がニューロシェルで見つけた「スーツの男」の手がかりをカーター刑事が追う話。そして、リースのフラッシュバックです。このエピソードはすごくよくできているなーって何度見ても思う。リースのジェシカに対する思いだけでなく、リースに向けるフィンチの思いやりと罪悪感、カーターがリースを思う気持ち、そしてリースがピーターをどうしたのかはっきりと描写されない終わり方、全部がすごいなって思う。

 

 冒頭の会話。

 

Morning, Finch.

おはよう、フィンチ

You're off to an early start, Mr. Reese.

早いね、リース君

Maybe I'm trying to impress the boss.

ボスの心を捉えようとしてるのかもな

Should have called first. As it stands, our docket is clear.

まず電話をしてくれたらよかったのに。現状、我々の予定表は空白だ

We don't have a number?

番号がないのか?

You sound disappointed.

がっかりしているように聞こえる

Oh, a little surprised.

あー、少し驚いてる

No one in New York is in danger or planning to hurt someone?

NYの誰も危険に陥ったり、誰かを傷つけようとはしていない?

If they are, they're keeping it to themselves.

もしそうだとしても、まだ実行にはうつされていないようだ

Anyway, I think you've earned some time off.

いずれにせよ、休みを取るといい

Especially today.

特に今日は

Or did you think I didn't know?

私が知らないとでも思ったか?

Happy Birthday.

誕生日おめでとう

Thanks.

ありがとう

You're welcome. Now go.

どういたしまして。さあ、行きなさい

 

 冒頭リースが読んでいた本は Stress Fractures in Titanium ですが、この単語でググるとPOIが引っかかってきちゃいますね…。架空の本なのか?この辺のことやタイトル等に関するエピソードはWikiに色々書いてました。

 それにしても、S1E2では「電話はするな。こちらからする」と言っていたフィンチが「電話してくれればよかったのに」って(笑)。どうなっちゃってんの。あと仕事がなくてがっかりしてるリース君かわいい。仕事ないとすることないもんね…(フィンチの尾行以外)。

 

 最初穏やかに始まって、誕生日プレゼントまであげちゃってオフの日かと思いきや、ここからかなり切ない展開です。実は番号は出ていて、DV被害にあっている女性、サラ・ジェニングスだった。フィンチは初めから、彼女は被害者だと分かっています。詐欺とかの軽犯罪で逮捕状が出ている女性ですが、それでも、フィンチは最初から確信している。おそらく、リースと出会う前に何度か番号が出た女性だったんだろう。一人では対処できなくて見送ってきた番号の一人だったのかも。でもリースと出会う前と違って、今はファスコもカーターも協力してくれるから、リースなしでもどうにかなると考えたんでしょう。

 

 最初はカーターに相談しようとするフィンチですが、カーターがニューロシェルに行くことになったと知り、頼る相手をファスコに切り替えます。しかしファスコは普通に対象者に尾行をまかれてしまう…。

 仕方ないので自ら現場に出ますが、速攻で保安官に事情を聞かれピンチになります。フィンチ、嘘とか得意なんじゃないの??時々超詰めが甘い時があって心配だよ…。

 ところで暇になったリース君は相変わらずボスのストーキングをするわけですが、それでボスのピンチを颯爽と助けてくれます(怒りながら)。

 

Hello, Harold.

やあ、ハロルド

Detective Stills--Organized Crime.

組織犯罪対策課のスティルス刑事だ

This guy you're talking to is my CI.

あんたが話してるこの男は俺のCIでね

He's a Confidential Informant?

彼が秘密情報提供者?

And money launderer for the late Don Moretti.

前はドン・モレッティ資金洗浄もしていた

Hey, I've got some questions for him.

やあ、俺はただ彼にちょっと質問したいだけなんだ

You were risking his cover by even approaching him.

あんたが彼に近づくだけで彼の身元が割れるリスクがある

Let's go.

行こう

What did he want?

奴はなんだって?

Just to ask me some questions.

ただちょっと質問されただけだ

Funny, I've got a few of those for you too, Harold.

それは面白いな、俺もあんたにちょっと質問があるんだ、ハロルド

 

So am I to assume that you were following me?

つまり、私が察するに君は私をつけまわしていたのか?

I think the bigger question is... Are you working a case without me?

もっと大きな問題は…、あんたは俺なしで仕事をしていたのか?

I feared that, with this case, you had certain sensitivities.

私は、このケースについては、君が何らかの感受性を持ち合わせていると危惧していた

I thought it best to let you sit it out.

君には加わってもらわないのがベストだと考えたんだ

What kind of sensitivities?

どんな種類の感受性だ?

 

 フィンチのピンチにキレ気味で駆けつけてくるリース萌える。まあ、キレてるのは全然違う理由ですが…。てか、オフの日にボスのストーキング以外にすることないのかこの人は?

 ここでも

you were following me?

Are you working a case without me?

とか

you had certain sensitivities.

What kind of sensitivities?

みたいにフィンチの口調を繰り返すリースが面白いです。字幕では「君の感情に配慮したんだ」「どんな感情だ」ってなってましたね。Sensitivitiesという言い方は、フィンチの語彙にはあってもリースの語彙にはなさそうに思えます。

 

When I was first building the machine, I kept seeing the same numbers come up-- a week, a month, six months apart.

私が最初にマシンを設計していた時、私は何度も同じ番号を見続けた。一週間に一度、月に一度、半年ごとに出てくる同じ番号を

Usually women.

だいたいは女性だ

At first I thought it was a mistake.

最初、私はそれをミスだと考えた

How could anyone's life be repeatedly threatened?

どうして誰かの命がそんなに繰り返し脅かされることがある?

And then I realized... They were living with the person who would eventually kill them.

そしてじき私は悟った…、彼女たちは彼女たちをいずれ殺す人間と一緒に暮らしているのだと

 

 このくだり、本当にすごく辛かった。フィンチは凄腕ハッカーではあったかもしれないけど人間的にはごく一般的な常識人で、人間の汚さとか凶悪犯罪には縁がない世界で生きてきた人なんだろう。マシンに「人間とはどんな存在か」を教える過程で、自分もそれを目の当たりにすることになった。

 マシンを設計した時(番号が出た時)というのは、マシン起動の2002年以降と考えるとフィンチはもう40代くらいなはずで、DVについて咄嗟に思い至らないというのはだいぶ初心ですよね。保険の査定業とかしてたやん。フィンチは、大学入学時からIDを偽って暮らしていたという背景がある反面、本当はずっと純粋な世界で生きてきた人なのかもしれない、と思った。マシンの設計の過程で人間の表も裏も直視することになり、その苦しみの中で真に純粋なグレースと出会い、ネイサンを失って、それで生き方を大きく変えざるを得なくなったのかも。

 一方でリースは、ジェシカがDVの被害にあっていることにいつ気づいたのだろうか。正直、薄々察する程度だったと思うんだよね。確信したのはこの回のラストで「彼女の番号も繰り返し出たのか」とフィンチに尋ねた時だろう。フラッシュバックの2011年2月の時点でリースが持っていた情報は、ジェシカが震える声で「話したい」「あなたが言っていた通り、人は一人。助けは来ないのね」と電話をくれたこと、彼女が交通事故にあって死んだこと、これだけだったはず。結婚相手と一緒にいるのに泣きながら「独りぼっちで戦場にいる」と訴える彼女に、家の中で何が起きているのかおそらく悟ったでしょうが、何にせよ、それだけの情報で夫をこの世から消すというのは明らかに過剰です。

 リースは多分、もともと、過剰な部分と欠落した部分を同時に抱えている人だった。S4で幻のカーターに「あなたはジェシカを言い訳に使ってる」と指摘されるように、ジェシカと別れたことで心を閉ざしたんじゃなくて、もともと心が閉じていたからジェシカと生きる道を選べなかったんだろう。

 じゃあ、リースにとってone person who connects you to the worldって一体誰のことだったんだろう、って何度も考えます。一体誰とだったら、一緒に生きていきたいと思えたんだろう。カーターに「君となら」って言ってたし、カーターだったのかな、って気持ちもあるんですが、やっぱり堅気の人とまっとうに結ばれたとは思えない。どのエピソードを見ても、この人は最後フィンチを守って死ぬしかなかった、って思って胸が締め付けられます。

 この事件からリースを遠ざけようとしたフィンチの優しさと罪悪感、リースの怒り、全部が見ていて苦しいです。

 

 カーターはニューロシェルで「不動産ブローカー、ピーター・アーント」が消えた事件に迫ります。ピーターの死体は出ていないが、生きているとは考えにくいほど大量の血痕があった。ドネリーは、「スーツの男が雇われて殺したんだろう」と言います。そして事件の2カ月前、ピーターの妻ジェシカは交通事故で死んでいた。そのX線写真を見ると、彼女が繰り返しDVを受けていた形跡がある。殺した後で事故に見せかけたのでは?と考えたカーターはフィンチに連絡を入れます。

「いつもは事件が起きる前に駆けつけるのに、あなた達は間に合わなかったのね」

 でもカーター、よく考えてよ…。リースが「仕事」始めたの2011年9月以降だし、ジェシカが死んだのは2010年12月です(解剖の日付は12月7日)。明らかに2人が組んで仕事始める前だよ。

 

 カーターは更にリースとこの事件の繋がりを探ります。ところでジェシカ、ワシントン州ピュアラップ出身じゃなかった?なぜ母が近所に住んでんの??家建てて母も呼び寄せたのか??とにかくカーターとドネリーはジェシカ母の家に向かい、カーターはジェシカの荷物の中からリースの写真を見つけます。ジェシカとリースが2人で写った写真。リースはそこで幸せそうに微笑んでいた…。

 このシーン何度見ても涙出てくるわ。S4E20のエピソードが重なるからかもしれない。

「ここには私の知らないあなたがいた。幸せそうで、愛に満ちていた。いつかあなたが私に心を開いて話をしてくれたら、その時写真は返そうとずっと思ってた」

 リースはジェシカもカーターも失ったのか…って思ったら涙止まんなくなってしまった。タラジさんの演技も超いいし。多分、一緒に仕事はしていたけど、カーターにとってもずっとリースは「謎の男」だったんだと思うんですよね。でもあの写真を見た時、「ああ、この人は、愛する人を失った一人の男だったんだ」って気づいたのでは。あの後リースの来歴(軍歴)を確かめていましたが、そういう経歴以上に彼の深い部分に触れたような。

 

 ちなみにここでカーターが知ったリースの情報でこちらも分かる部分は、2001年の6月から9月の間にフォートルイスにいた特殊部隊員で、ファーストネームはジョン、ミドルネームのイニシャルはH、ファミリーネームの最後の単語がsであることです。出身地はワシントン州ピュアラップになっていたし、誕生日は5月1日だった。これは本編と同じです。誕生年は分からない。

 

 さてリースとフィンチの方は、対象者の命を脅かしているのは夫であると突き止めます。しかも夫は連邦保安官で、逃げた妻に偽の罪状で容疑をかけ、職権乱用して指名手配し彼女を探していた。リースは保安官事務所に押し入って夫を脅します。

 

Only one way to deal with guys like this, guys who hide who they really are until they get home.

こういう、家の中に入るまで正体を隠している奴らを扱う方法は一つしかない

What will you do, Mr. Reese?

どうするつもりだ、リース君

Show 'em what a real monster looks like.

本物の怪物がどういうものか見せてやる

 

 これ以上続けるなら殺すと脅しますが、結局サラは夫に連れ去られてしまいます。フィンチは保安官の車をハッキングし、ジェニングスの位置情報を特定するのですが…。

 

That's him.

これが奴だ

West Side highway. He's taking her out of the city.

ウェストサイド高速にいる。彼女を街から連れ出そうとしているんだ

Get out.

降りろ

Excuse me?

何だって?

Leave the laptop now, Harold.

パソコンを置いていけ、ハロルド

And get out.

今すぐ降りろ

 

 フィンチは完全に気圧されて、車を降りてしまう。降りたらどうなるか薄々分かっていても、止めることができない。カーターに「止められない」と訴え、カーターも追いかけるんだけど、「警察にはできないことがある」と言ってリースは行ってしまう。

 

Your friend told me I might find you up this way.

あなたの友達が、あなたはここで見つかるだろうって教えてくれたの

I can't let you take him, John. This can't end like New Rochelle.

彼を連れては行かせないわ、ジョン。ニューロシェルのようには終わらせない

Do I need to look in the trunk?

トランクを見てもいいかしら

You can do whatever you like. It isn't gonna change what I have to do.

君は君の好きにしろ。俺がすべきことはそれで変わったりしない

Let me have him, John.

私に彼を任せて、ジョン

If I do, he'll get away with it.

もしそうしたら、奴は逃げおおせるだろう

I'll see that he doesn't.

そうはさせないわ

It won't be up to you. That's my point.

君にはどうすることもできない。それがポイントなんだ

There are things you can do, detective, and things you can't.

警察にはできることとできないことがある

And that's where I come in.

だから俺がいる

I can't allow you to just execute people.

あたしはあなたが人を処刑するのを許すことはできない

This isn't on you. It's on me.

これは君の問題じゃない。俺の問題だ

All I'm asking for is your trust.

ただ信じてほしい

What? For you to do the right thing?

何を?正しいことをすると?

That I'll do what needs to be done.

俺はやるべきことをするだけだ

 

 リースはフィンチに自分が「怪物」になるところを見せたくなかったんだろうか。「警察に任せるべきだ」と言うフィンチに、「これが俺のやり方だ。気に入らないのなら別の奴を雇え」とリースは終始ブチ切れモード。サラを助け出したリースが「もう終わりだ」と言うとDV夫は笑います。

「あんたは人を愛したことがないな。本気で人を心から愛したことが。もしあれば知っているはずだ、終わりはないと」

 リースはこれを聞いてどう思ったんだろう。今までの人生でたった一人愛したのはジェシカだったはず。まだ終わっていない、それを誰より知っているはずです。

 

 最後の2人の会話。

 

I was beginning to wonder when I was going to hear from you again.

君からもう一度連絡があるのだろうかと考え始めていたところだった

I had some business to take care of, out of town.

街の外でするべきことがあったんだ

I trust you now fully appreciate why I couldn't tell you about Sarah's case.

私がサラの件について君に話すことが出来なかったのはなぜか、今や君は完全に理解していると信じているよ

I hope you now understand why you should have.

俺はあんたが話すべきだったと理解していることを願っているよ

Did you know?

知ってたのか?

Was she one of those numbers that came up again and again?

彼女も、何度も何度も上がってくる番号の一人だったのか?

What I know, Mr. Reese...

私が知っていることは、リース君…

Is that New Rochelle happened before we started working together.

ニューロシェルで起きたことは、我々が共に働き始めるより前のことだった

And because of that, there was nothing that either one of us could have done.

だから我々のうちのどちらも、そのためにできることはなかった

Forgot to include that in your birthday present.

君の誕生日プレゼントに添えるのを忘れていた

Must have slipped my mind.

すっかり頭から抜け落ちていたに違いない

 

I trust you now fully appreciate why~~

I hope you now understand why~~

とここでもフィンチの口調を繰り返すリース。

 ここでリースはフィンチに「知っていたのか」と尋ねます。ネイサンが死んだ時フィンチがマシンに尋ねたのと同じように。ジェシカの番号はどんなに遅くても2007年からずっと出ていた。当然フィンチは知っていた。そのことをS2ラストでリースは知ることになりますが、この時点ではフィンチはリースに打ち明けられません。

 

 プレゼントのメッセージは、本当に添えるのを忘れていたのだろうか、それとも、リースが突き止めるのを待っていたんだろうか。あの時鍵だけを渡したのは、リースの注意を鍵に集中させて、自分や「仕事」から目を逸らすためだったんだろうと思うんだよね。

 この家、もともと持っていたセーフハウスなのか、新しく買ったのかどっちなんだろう。もともと持っていた家でたまたまリースが公園にいるのが見えたからあげたのか、フィンチもリースをストーキングしていてお気に入りの公園が見える家を買って与えたのか、どちらなのか考えてしまった。本編ではリースのストーカーぶりが目立ってますが、実際はリースを調べ上げて余すことなくストーキングしているのはフィンチの方ですからね…。

 

 実際、リースがフィンチを認識するよりもずっと以前のシーンが最後に描かれます。ニューロシェルの病院で、リース、ジェシカ、ピーター3人の顔写真を見てフィンチが I’m sorry. と呟くラストシーン。フィンチは車椅子で、事故の後遺症からまだ十分に回復していない時期にも関わらずニューロシェルの病院にいるのは、多分ですけど、ピーターかリースかどちらかの番号が出たから来たということなんじゃないかな。3人の顔写真の挟まったファイルを持っているわけだし。ジェシカの番号は繰り返し出ていて、その後亡くなったことを知った。「繰り返し出ていた番号」だったことでおそらくDV被害者であることは気づいていたはずだし、当然事故死じゃないことは知っていたはず。そこでピーターかリースの番号が上がって、計画殺人があるのを知って、それを止めようと思ってニューロシェルに来ていたのでは。

 リースは衝動的に殺したのかもしれないと思っていたのですが、マシンが検知するのは計画殺人なはずで、マシンは通話記録やネット上のやり取りだけじゃなくて挙動でも殺意を検知するような描写がたびたびあるから、それで分かったのだろうか。

 この辺のことはよく分かりません。ジェシカとリースの通話記録、X線写真記録、そういうデジタルデータからマシンが導き出した結論だったのかもしれない。でもやっぱりフィンチがここにいたのはマシンが「殺意」を検知したからだろうし、つまりピーターはリースに殺されて死んだのだと私は思っています。

 

 これは議論の余地がありますよね。最後、カーターのところにメキシコの刑務所長から電話がかかってきて、サラの夫(ジェニングス保安官)はここに投獄されていることが分かる。そして、アメリカ人はさらに1人か2人いる、と言われます。リースがこの手を使うのは初めてではないことが示唆される。だから、当然ピーターもここにいる、と考えるのは流れからするとごく自然です。結局決め手は全くないのですが、

 

リースはピーターを殺した説

・冒頭のシーン。ワイシャツに血がついた状態でバスに乗っていた。フラッシュバックを全て見ると、あれはジェシカの家を訪ねた「後」のシーンであることが分かる。つまり、ジェシカの家で何かがあった後血の付いた服を着て一人でバスに乗っているのだから、メキシコの刑務所に行ったはずがない。しかもバスのアナウンスが「次はニューロシェル」であったことを考えると、一度ニューロシェルから離れた後でニューロシェル方面に戻るところであると推測できる。はっきり言うと、ピーターをどっかに埋めて戻るとこみたいに思えます。行くときはピーターの車で行って、帰りは乗り捨てて。

・死体は見つかっていないが、生きているとは思えないほどおびただしい量の血が現場で発見されている。ドネリーはmess and violenceと言っている。かなりの暴力的な状況だったと推定される。仮にメキシコに運ぼうとしたとしてもその前に死ぬだろう。

・そもそも、最愛の女性を殺されたとリースは思っているのだから、その相手と乱闘になって相手が大量出血する状況になって、そこから冷静に刑務所に運ぼうとか思う?その上、メキシコの刑務所に入れるには大量の麻薬と一緒に運ぶ必要がある。ジェシカの家に行くのにそんなもの持って行ったとは思えない。車もなさそうだったし。

・フィンチがニューロシェルの病院に駆けつけたのは、「番号」が出たからだろう。つまり「殺意」を検知している。

・S1E3、S1E4の感想でも書いたのですが、リースは「戦場で人を殺すのと無抵抗な人間を殺すのとは違う」「大切な人を奪われたとしても、その相手を殺せば自分の最も大切な部分を失う」と言っています。つまり、「自分は大切な人を奪われ、戦場以外の場所で人を殺し、最も大切な部分を失った」と言っているのでは?

・S1E4ラストでベントンをどうするべきか迷っているシーンがある。もしピーターをメキシコの刑務所に送っていたとしたらその手があることをすでに知っているわけだから、ここで迷う必要などないのでは?また、悪人であっても丸腰の人間を殺すことに迷いを見せた最初のシーンがここなわけで、それ以前のリースは殺しを躊躇う人間ではなかったのでは?

・カーターに「信じてほしい」とリースは言います。S3E9でリースはカーターに「君が俺を変えた」と言っていた。悪人であっても殺さない自分になれたのは、フィンチとカーターに出会った後だったのではないのだろうか。

 

一方リースはピーターをメキシコの刑務所に入れた説をとると、

・そもそもこの話の流れがそうなっている。リースがその手を使うのは初めてではないと示唆され、「俺はやるべきことをするだけ」と言っている。

・ワイシャツの血のシーンについてはよく分からない。ジェシカの家に向かうところだとするとカーラから撃たれた傷?とも思ったのですが、あれは腕だったし2カ月前のことです。しかも病院やジェシカの家のシーンでは血はついていない。やはりピーターと話した「後」です。血を見る乱闘になったのは間違いないからその後でしょうが、メキシコの刑務所説をとるとどういう状況なのか合理的な説明はできないように思えます。

・大量の血痕の一部はリースの血である可能性もある?(でもピーターがリースに血を見せられるほど戦えるとは思えませんが…。あと調べれば誰の血なのかは分かるから、もしリースの血がそんなに流れていたらドネリーがそれを言っていたと思う)

・リースが無抵抗な人間を殺して「人殺し」になったのはCIA時代のことを言っているのかもしれない。実際、2008年の時点ですでにカーラに「私たちは人として許されないことをしてきた。私たちが闇なのよ」と言われていた。

・「番号」は拉致でも出ることがS1E17「レイラ」の回で分かっている。S1E1でも「殺人や誘拐」とフィンチは言っている。

・CIA時代もダニエル・ケーシーを殺さなかったエピソードがある。無駄な殺しはしない?

 

 こう考えると、やっぱりピーターは殺されたと考えた方が筋が通ると思うんですよね。。

 

 前にも書いたかもなんですが、S5E13のラストで、「人は死ぬときにどんな人間かが分かるの」とマシンがフィンチに言います。もともとS1E1の段階でリースはフィンチに出会わなければ自殺するところだった。この時は、ジェシカを失ってピーターを殺した後だったんだと私は思ってる。だから、リースがこの時もし死んでいたら、リースは「愛する人を失い、復讐のために人を殺した人間」として死んだはずだった。でもフィンチがリースを助けて「仕事」に巻き込んで、リースは人助けの仕事をすることになり、最後はフィンチを守って死にます。つまり、「愛する人を守り、人を救った人間」として死ぬことになります。だからここでピーターを殺したと考えるのとそうでないと考えるのではリースの人生の受け止め方そのものが違っちゃうんじゃないかと思ってて…。

 それに、リースはここでカーターに「ニューロシェルのようにはさせない」と言われ、「俺は自分のすべきことをするだけ」と返し、ジェニングスを殺さなかった。S3ではカーターがリースに「あなたはかつてあたしに言った。自分を信じろと。自分がすべきことをするだけと。今度はあなたがあたしを信じる番」と言う。そしてリースはカーターに「君が俺を変えたんだ」と言います。つまり、カーターと出会う前と出会った後でリースが変わったと解釈するならば、やっぱりピーターは殺した、ということになるのでは?

 

 まあ、これは私の勝手な考えであって本編内ではっきりと描写はされていません。ちなみにWikiではピーターはメキシコの刑務所説が採用されてます。今回のエピソードの流れが示唆するのはその方向であることもまた理解はできます。

 

 この回ではフィンチがリースの「sensitivitiy」に配慮しようとしていて、リースはそれを全く無視することもできたのに、

 

Send me her address and we'll finish discussing my sensitivities later.

彼女の住所を送れ。俺の「感受性」について議論するのはその後だ

 

と話し、最後に2人で話し合うシーンがあります。「それでも番号の仕事から外さないでほしかった」と。

 この2人言葉で多くを語り合わないのにどんどん絆が深まってくとこたまらんですよね…。フィンチはリースが何をしたのか聞かず、ただプレゼントに添えるメッセージを渡して立ち去ります。リース君はあの家見てどう思ったんだろうか…。愛され過ぎじゃね??誕生日に家くれんの??愛人??

 ラストシーンでかかる歌、とてもいいですね。Danger Mouse & SparklehorseのRevengeです。

yuifall.hatenablog.com

 最後、フィンチの抱えている罪悪感が垣間見える。そもそもフィンチがリースのことを知ったのはジェシカ絡みだと思う。フィンチが2007年にジェシカの番号を「無用」として無視していたのはみんな知っての通りですが、S3E16 RAMを見ると、フィンチは2010年12月の段階でリースを「CIAだ」と認識しています。つまり、ネイサンの死後2010年9月以降もジェシカの番号が出ていて、フィンチはジェシカの関係者としてリースのことを知っていたと思われます。2001年9月11日にリースが何をしていたか知っていたのは、リース自身を調べて分かったわけじゃなく、ジェシカを調べていて分かった付帯情報かもしれない。

 タイムラインを見るとフィンチがディリンジャーと一緒に仕事していたのは長くても2カ月程度ですが、もしこの間にジェシカの番号が出ていたら助けることができていたのかも。ジェシカが亡くなったのはディリンジャーが死んだ数日後です。おそらく最後に「番号」が出た時にはすでに実行役がおらず、助けることができなかったのだと思われます。でも実際はもっと前から繰り返し番号が出ていたはずで、最初から気にしていたら助けられていたかも、と後悔しているだろう。更にこの後フィンチが売ろうとしたラップトップの色々でリースがオルドスに行かされたことが分かってくるので、病院の「I’m sorry」のシーンが後日きいてきます。

 

 この2人、お互いへの思いが重くて、さらに運命が重なり合っていて、それが徐々に分かってくるのがまた何とも…。

 

POI:サラ・ジェニングス(被害者)

本編:2012年5月1日~

フラッシュバック:2011年2月、リース(ニューロシェル)