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01x04 - Cura Te Ipsum 感想

 POI感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

 日本語タイトルは「復讐」です。原文タイトルはラテン語で、「汝自身を癒せ」という意味だそうです。もともとはラテン語の「Medice, cura te ipsum.(医者よ、汝自身を癒せ)」ということわざから来ているそうで、

だから復讐を企てる医師が主人公なんですね。

 

 この回はめちゃくちゃ重いテーマで見ていて辛いのですが、Wiki

 

In the first three episodes, we see Reese shifting from cold-blooded killer due to the influence of Finch.

最初の3つのエピソードで、フィンチの影響を受けたリースが冷血な殺人者から変わっていくことが分かる

 

とあってかなり萌えました。この回はリドルストーリーになっていて、ベントンがどうなるかはっきりと描写されません。リースが彼を殺したかどうか分からない、という終わり方とても面白いですよね。

 

 対象者はメーガン・ティルマン。ERで働く医師です。ちなみにこの女優さんはドラマERでナースを演じていたとか…。フィンチはメーガンと接触するために患者を装って?ERを受診します。1~2年前に受けた手術による慢性痛を訴えるフィンチに、「本当は精密検査が必要だけど、あなたは今週私が診た中で一番礼儀正しい患者さんだから、3日分の鎮痛剤を処方しますね」と話すメーガン。フィンチがリースと出会う前に何らかの理由で脊椎固定術を受けたことと、そのために首が自由に動かせなくなったことが分かります。

 

 2人がメーガンを追跡すると、彼女は1日平均12時間労働をしながら毎晩バーで遊んでいました。そんな無茶な生活をしている理由が分からないのですが、調査を続けるうちに彼女の周りに一人の男が浮かびあがってきます。クラブでレイプドラッグを持って遊びまわっているアンドリュー・ベントンです。彼がメーガンを狙っているのではないかと疑い調べると、彼はレイプを繰り返し、女性の写真をコレクションする卑劣な性犯罪者であることが明らかになります。

 しかし前回のジョーイと同様、犯罪者だからと言って「殺人者」であるとは限らない。調べるうちに、ベントンがメーガンを狙っているのではなく、メーガンがベントンを狙っていることが分かる。ベントンは1996年、大学4年生の時に新入生をレイプして訴えられていました。結局不起訴になったのですが、訴えを取り下げた後自殺したその女性はメーガンの姉だった。メーガンは復讐を企んでいることが分かります。

 

Finch, she's a doctor who saves lives.

フィンチ、彼女は命を救う医者だ

She doesn't know what it's like to take one.

命を奪うことがどういうことなのかを知らないんだ

It'll destroy her.

それは彼女を破壊してしまうだろう

 

 2人は何とかしてメーガンが人を殺すのを止めようとします。

 

 この回ではフラッシュバックはないのですが、「スーツの男」を追うカーターと麻薬組織に追われるファスコのエピソードが挟まります。どちらも見ごたえがあって面白いです。

 

 カーターは、前回証拠保管所で強盗団と会話していた男、パラリーガルのバーデット(フィンチ)が「スーツの男」とグルなのではないかと疑い、フィンチのところを訪ねてきます。フィンチのカバーアイデンティティがIFT社員の他にもあることが分かるシーン。そしてカーターの優秀さが分かるシーンでもあります。この時のフィンチ、フラッシュバックと同じ銀縁眼鏡してるわ…。一応変装なの??

 「何を話していた?」と聞かれて、「こっちを見るなと言われた」と答えるフィンチ。「普通は目を逸らすのに、おかしいわね」とカーター。フィンチは自分のミスを悟ります。リースに危険を伝えようとする一心で、カメラが警察に詳しく検証されることを考えに入れていなかった。その場はどうにか誤魔化しますが、「この男は必ず捕まえるわ。約束します」とある意味宣戦布告をされてしまう。カーターかっこいい!

 

 ファスコはスティルスが消えたことで麻薬組織に「金を返せ」と脅されます。リースに「俺を使い続けたかったらどうにかしろ」と訴えるのですが、この時のリースはファスコのことをマジで使い捨てる気満々です。

 初期のリース、ファスコに対してかなりひどいよね。まあファスコもいかにもな悪徳警官なのでちょっと何とも言えないんですけど…。麻薬組織に押し入ってあろうことか麻薬を奪い取って逃げるリース(笑)。ファスコ大ピンチだよ。リースはその麻薬をベントンを嵌めるために使ったのですが、弁護士を4人も雇ったベントンはあっさり釈放されてしまいます。

 麻薬組織に捕まったファスコはリースを売り、リースも捕まってしまう…、のですが、スペイン語ぺらぺら喋ってボスの弱みをちらつかせ、あっさり脱出するリース。かっこよすぎでは??で、ファスコに「ライオネル。次はないぞ」と言い捨て去っていきます。

 最終的にファスコをカーターの相棒として異動させ、カーターを見張らせます。S1の2人の探り合いも面白いよね。

 

 本編では、犯罪被害者の集会みたいなところでリースはメーガンと接触します。この時の会合で喋っている女の人、Wikiによるとベントンと一緒にいたシーンがあったらしく、加害者がベントンであることが示唆されていたとか。気付かなかった…。よく見直してみると、2人がベントンについて調べている時にベントンが彼女の鞄を持って一緒に出勤しているシーンがありました。会社の同僚なんですね…。

 調べるうちにメーガンは別荘とバンを借り、ベントンを消し去る周到な準備をしていたことが分かります。

 

Doctor has everything she needs to erase Benton for good.

ドクターはベントンを消すために必要な全てを持っている

What do you mean "erase?"

「消す」とはどういうことだ?

8 pounds of lye, heated to 300 degrees-- body will dissolve in three hours, give or take.

8ポンドの苛性ソーダだ。300度まで加熱すると、死体はおよそ3時間で溶解する。

I will refrain from asking how you know that.

君がなぜそれを知っているのかは聞かないでおこう

Oh, Finch, she's meticulous-- planned everything to a tee, and she's gonna get away with it.

フィンチ、彼女は用意周到だ。全てを完璧に計画している。そして逃げ切るだろう

I'm beginning to wonder if maybe she's not doing the world a favor.

彼女を止めることが世界にとっていいことなのかどうか分からなくなってきた

But Tillman isn't a killer.

だが、ティルマンは殺人者ではない

She goes through with it, it'll ruin her life.

彼女がそれをやり遂げれば、人生は破滅するだろう

What do you suggest, Mr. Reese?

君は何を勧めるんだ、リース君?

We don't give her the chance.

彼女にチャンスを与えてはいけない

I'm gonna find a way to make Benton disappear.

俺がベントンを消し去る方法を見つける

 

 フィンチは「彼女にやらせた方がいいのでは」と言いますが、この発言フィンチっぽくないな。S5まで見てから見直すと、まだキャラクターにブレがあることが分かります。何が何でもフィンチなら止めるでしょ。一方、今回はリースが必死で止めようとします。「人を殺せば人生が破滅する」と言って。

 

 メーガンの犯行をなんとか止めようとするのですが色々あって間に合わず、メーガンはベントンを拉致してしまう。追いかけるリース。

 リースがメーガンの復讐を諦めさせようとするシーンがすごく好きです。

 

I know all about Andrew Benton. I know all about you, Megan.

俺はアンドリュー・ベントンのことを全て知っている。俺はメーガン、君のことも全て知っている

I know you're a damn good doctor.

君はとてもいい医者だ

I know that you've spent years of your life healing people.

君は人々を治療することに6年もの間人生を捧げてきた。

And I know if you do this... if you murder this man in cold blood... it will kill you.

そしてもし君がこれをやれば、もし君がこの冷血男を殺したら、君は終わるだろう

You told me that you lost someone. Was that true?

あなたも大切な人を失ったと言ったわ。それって本当のこと?

How can you sit there and tell me not to do something you know in your heart you would do, too?

それならどうしてあなたはここに座って、あなたがしただろうことが心にあるのを知っていながら私にはそれをするなと言うの?

Because unlike you...I know what happens when you take a life.

なぜなら、君と違って…、俺は人の命を奪ったらどうなるのか知っている

You lose a part of yourself...Not everything...Just the part that matters the most.

君は自分自身の一部を失うんだ。すべてではない。ただ、最も大切な部分を失う。

Is that what happened to you?

それがあなたに起こったことなの?

You don't have to do this. You can turn around right now.

君はこれをするべきじゃない。今すぐ引き返すんだ。

 

 2人が会話するダイナーの近くの監視カメラの映像に、「No Turn」って看板が出てるんですよね。「引き返せない」と。メーガンは涙を流してリースにバンの鍵を渡します。

 

 メーガンが用意した美しい別荘の窓際に腰掛け、リースはベントンと会話しながら、彼を殺すかどうか考えます。最終的にどうなったのかははっきりとは描写されない。後のS1E22 Many Happy Rerurns で、メキシコの刑務所に入れたのでは?ということが示唆される程度です。

 

 リースがベントンをどうしたのか、そしてジェシカの夫ピーターをどうしたのか、というのはPOIの謎の一つです。Many Happy Rerurnsでは、メキシコの刑務所に「他にもアメリカ人は1人か2人いる」ということが分かるので、

 

①この2人とも刑務所にいる

②少なくともどちらか1人は刑務所にいる

③どちらもいない(いるのは関係ない人)

 

のどれとも受け取ることができます。あのエピソードでは①を示唆しているようにも感じるのですが、私は②だと思う。ベントンは刑務所にいるけど、ピーターは殺されたと思う。(私の勝手な感想です)

 

 前回のエピソードで、リースはフィンチに「戦場で人を殺すのと、無抵抗な人間を殺すのは違う。ジョーイは人殺しではない」と言います。そして今回、メーガンに「もし大切な人を奪われたからといって、相手を殺してはいけない。君と違って俺はそれがどういうことか分かっている」と話す。これらのことを総合すると、「自分は大切な人を奪われ、(戦場ではない場所で)相手を殺し、人殺しになった。そして最も大切な部分を失った」と言っているとしか思えないもん。

 ここでリースが話している「人の命を奪えばどうなるか俺には分かる」というのは、戦場で、あるいは任務でそうしたということじゃない。個人的にやったということじゃないのかなあ。リースが失ったsomeoneはジェシカのことだし、それでも殺すべきじゃない、と言うのは、やっぱりその殺しが人生を変えてしまったからだと思う。軍やCIAで経験した何よりも。だからその後でリースは廃人みたいになってしまうんだろうと。

(ただこれには自分でも反論があって、CIAでカーラが「私たちは人として許されないことをしてきた。私たちが闇なのよ」って言ってたから、「人殺し」というのはCIAでの経験を言っているのかなという気持ちもあります)

 もしもメーガンがベントンを殺したら、彼女は医者には戻れないばかりか、自分自身死を選ぶ道しかないだろうと私も思います。メーガンはベントンのことは本当に殺したいほど憎いけど、でも殺すことを迷ってもいて、だからリースの言葉を聞き入れてくれたんだろう。やっぱりその憎しみは自分の人生全てを賭けていいものじゃないと私は思うよ。職業が医者というのがまた切ないですよね。彼女はヒポクラテスの誓いを唱えて医師になったはず。「人を害すなかれ」。ここで引き返してくれてよかったと思います。

 

 一方リースは彼女の分まで重荷を引き受けるわけですが、一度ならず手を汚しているからといって、また相手が明らかな悪党だからといって、やっぱりリースだってどこまでも手を汚していいわけじゃないはずです。CIA時代と違って、これでは私刑になってしまうから。このストーリーは結末をはっきり描写していません。だから、リースがベントンを殺してしまったのかどうかは最後までよく分からない。

 フィンチがハッキングで証拠を押さえているんだし、警察に突き出したのかなって気もしてる。ベントンのPCに残ってた「証拠写真」、女性とのツーショットばっかりだったけど、実際はもっと過激な写真いっぱいあったと思うんですよね。明らかな証拠となるような。だから立件しようと思えばできるような気もする。

 でもその一方で、ベントンには何度も訴訟を免れてきた過去もあって、コカインと一緒に(偽装)交通事故起こしても翌日には釈放されたし、司法に委ねる選択肢はすでにないんじゃないか、という気もする。

 ここは本当によく分からないです。結局どうなったんだろうな。殺していてもおかしくないとも思う。だけど、ベントンに関してはメキシコの刑務所が落としどころかなって思ってて、だから私は②だと考えてるんですよね。

 

 リースはベントンに「人は変われるか」と話し、ベントンは「変われる、自分も君も」みたいに答えます。これからも何度か書くんですが、POIでは「人は変われるか」というのが一つのテーマであるように思われます。

 リースが変われたか、変わってないか、というのはS5の最後の最後まで解釈が難しかったんですが、少なくともこの数回のエピソードですでに人殺しを迷っている様子が描写されます。逆に言うとそれ以前は迷っていなかったんだから、ピーターを殺さない理由がないよね。それに、ピーターをメキシコの刑務所に入れていたとしたら、すでにその方法があることを分かっているんだからベントンをどうするか迷う必要がないし…。

 

 Wikiにある通りリースはフィンチに会って変わったんだと思いたいし、POIというドラマは、愛する人を守れず「人殺し」になって死を選ぼうとしていたリースが、自分の人生を救ってくれたフィンチを守り、「人を救う人」になって最後は死ぬというストーリーなんだと私は思っています。

 

POI:メーガン・ティルマン(加害者)

本編:2011年(日付はっきりせず)

フラッシュバック:なし