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小林恭二 『短歌パラダイス』感想 2-9「邪」

『短歌パラダイス』感想の注意書きおよび歌合一日目、二日目のルールはこちらです。

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 九番勝負は「邪」です。邪!どこからこんな言葉思いつくのだろうか。

 

洗われて手にひえている精巣をすべて無邪気な季節のために (一郎次郎)

スプーンで蛍をつぶしてゐた記憶「邪慳ぢやなか」と呟きながら (七福猫)

蜘蛛のごときバイクが好きな祖父なりき「いまはむかしの風邪(ふうじゃ)の夏じゃ」 (ぐるぐる)

 

 

洗われて手にひえている精巣をすべて無邪気な季節のために (一郎次郎)

 

 「一郎次郎」の歌の、この「精巣」は白子みたいな感じのやつかな?魚とか動物とか、とにかく食べるために洗っていると考えたのですが、人間のものであると仮定すると、何らかの理由で解剖された後の人か、もしくは猟奇殺人犯に殺された男性のもの、ということになります。

 でもなー、猟奇殺人犯が男性を殺して精巣を取って洗うんだったらもっと下の句が違っててほしいなーって気もしますが、この「無邪気な季節」は子供みたいな存在を想定しているのかな。ここにある命の源は全て無邪気な季節のためにあるのだ、って。

 なんで卵巣じゃないんだろう。卵巣の方が独自に人間を生み出す能力がありそうですけど…(奇形腫とかあるし)。猟奇殺人でイメージされる「女性を殺す」という単純な発想から離れたかったということ?まあそもそも殺人犯を想定した歌じゃない可能性の方が高そうですのでこれ以上ここを煮詰めても仕方ない気もする(笑)。

 かと言って解剖で取った精巣をわざわざ洗わないだろうし、そう考えるとやっぱり食べ物かなぁ。この場合「無邪気な季節」が分からないのですが、未来の栄養になってくれ、みたいなニュアンスで読みました(笑)。

 この歌に関して、納得のいく解釈はこの本の中ではされていないのですが、吉川宏志(味方チーム)の発言が面白いです。

 

 今回は、なんかヘンな奴対決っていう感じがしますね。しかし、そんな中でどこか品格を残しているのは、やはり我ら王道を行く一郎次郎チームですね。他とは一格も二格も違います。

 

だって(笑)。精巣洗ってるのに品格があるってどういうこと?分からんわ。

 

 

スプーンで蛍をつぶしてゐた記憶「邪慳ぢやなか」と呟きながら (七福猫)

 

 「七福猫」も「一郎次郎」と似たような感じですね(笑)。スプーンで蛍を潰しながら「邪慳ぢやなか」って。「記憶」なんだから、おそらく子供の頃の記憶であろうと思われます。

 前にも書いたかもしれないんですけど、なんかの短編SF小説でスプーンで苺を潰す話があって、最終的に苺に見立てられた自分が何者かにスプーンで潰されて赤い血が飛び散る、みたいな内容だったと思うのですが、それを思い出しました(でも誰のなんていう話なのかは全く思い出せない)。この場合蛍を潰すんだから、器の中に光るものをまき散らかしたかったのかな、と。

 「邪慳ぢやなか」はなんだろうな…。「これは意地悪ではない」と?ほんと、「無邪気な季節のために」と被りますね…。意地悪じゃなくて蛍を潰すというのは、何か必要があってということ?私はなんとなく、やっぱり「光を集めるため」と受け取りました。子供の頃光るものを集めたくて残酷なふるまいをしたけれど、意地悪のつもりじゃなかった、って読むと単純すぎるかなあ。

 

 

蜘蛛のごときバイクが好きな祖父なりき「いまはむかしの風邪(ふうじゃ)の夏じゃ」 (ぐるぐる)

 

 「ぐるぐる」はなんだろうなー。分からん(笑)。「蜘蛛のごときバイク」はなんだろう。未来っぽいですね。「蜘蛛 バイク」でググってもそれっぽいものには当たりませんでした。。未来じいちゃんかな。コンピューターおばあちゃんみたいな。

 「今はむかしの風邪の夏じゃ」も分からん。「風邪」は東洋医学の概念の一種のようですが、主に春の「邪」のようです。全然解釈できないな。議論を読むと味方チームの穂村弘の擁護発言が載ってますが、全体的に意味は分からない(笑)。小林恭二も、「ぐるぐるチームは申し訳ないが判断停止」と書いてて笑ったわ。でもなんか「ふうじゃのなつじゃ」って言葉が頭の中でぐるぐるしてしまう…。個人的には嫌いじゃないですね。

 

 

 それにしてもこの中から選ぶのきついなー(笑)。敢えて選ぶなら「七福猫」ですかね。「精巣」と「無邪気」よりは、「蛍」と「邪慳ぢやなか」の方がまだ分かる気がするし。

 「一郎次郎」は加藤治郎、「七福猫」は岡井隆、「ぐるぐる」は杉山美紀でした。

 加藤治郎岡井隆は1日目の「並」もでしたけど、同じお題で歌を詠むとなんとなく雰囲気が似るんですかね。やはり師弟だからでしょうか?

 杉山美紀については、

 

 前作に続いて今度も祖父もの。いや、初日から考えれば三連打でおじいさんものである。よっぽどおじいさんが好きだったんだろうか。

 

と書かれてて笑った。確かに「一郎」 の題の時も「洋一郎」っておじいさんが出て来ましたが、1日目は奥村晃作「恋」 のお題でしたよね??それを「おじいさんもの」って奥村晃作に失礼じゃね(笑)?おじいさんに恋の歌みたいになっちゃってちょっと…。

 でもやっぱりおじいさんというか「祖父」に並々ならぬ思い入れがあるのかなぁとは感じましたが…。

 

 

血統が全てだろうか稲妻の子が邪に向かう杖ふるうとき (yuifall)