山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。
日置俊次
水中に堕ちたるかほで笛鳴らす石の天使は熾(ひ)の煤まみれ
東大文学部卒でパリ第3大学に留学し、青山学院大学教授らしいです。パリを舞台にしたきらびやかな歌がたくさん紹介されていて、「天使」「ヴァイオリン」「ガラス」「モルフォチョウ」「冥王星」など、単語がいちいちキラッキラしています。
人によって短歌に使われる語彙がえらい違うの面白いなーって思いながらいつも見てます。自分の世界に親和性のある言葉なんだろうな。私の世界には「天使」とか「冥王星」はあまり存在しないので興味深く読みました。
プルースト好きの日本人(ジャポネ)がまたひとりと苦笑し教授が肩をたたきぬ
わがために流れよセーヌ 批判されし『スワンの恋』論はこべ海まで
このように留学生活を詠った歌も紹介されており、2004年に「ノートル・ダムの椅子」で第50回角川短歌賞次席、ということでした(ちなみに調べてみると第50回は小島なおの『乱反射』だったそうなので、雑誌持っていた可能性が高いな…。引っ越しの時に捨ててしまいましたが…。もったいなかったです。。)
これらの歌について、山田航は
フランスでの学徒生活を描いた歌であるが、フランスと日本との間の文化摩擦や日本人としてのナショナリティ意識といったものは薄い。厳しく批判された論文を川に捨てて「わがために流れよセーヌ」と呼びかけたりするようなやや芝居がかった女々しさの方が印象的だ。
と書いています。そういう見方していなかったので面白かったです。
フランス!って感じのキラキラした単語が使われていないような歌もあって、
「つめたい」のボタン四十二個灯る自販機でつひに天然水買ふ
とか
メロンパンの甘きかさぶた剥がしつつ飲みくだしをり彼岸の秋は
みたいな歌面白いですね。メロンパンのかさぶた!「つめたい」飲み物が42個もあるのに水買っちゃうのかぁ。こういう歌ときめきます。
ところで
遅刻せし理由の欄をにじませて傘持つ少女「蛙」と書きぬ
という歌について、解説文に
遅刻の理由に「蛙」と書かれたとき、蛙から逃げて遠回りしたのではなくついつい蛙とにらめっこして遊んでしまったと解釈した方が面白い。
と唐突に書かれていてちょっと笑いました。どういうことだ(笑)。「蛙」と何をしていて遅くなったのかは分からないので、無限に想像は可能ですが…。蛙が捕まらなかったとか、つい観察してたとか、自宅で飼っている蛙の世話してたとか、死んだとか、ペットショップから欲しかった蛙の入荷があったと連絡が来たとか、前の授業で蛙の解剖してたとか。
LVのブレスは心電図のかたち baby, show your Rhythm Bound (リズムがはずむところを見せて) (yuifall)