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現代歌人ファイル その51-吉沢あけみ 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

吉沢あけみ 

bokutachi.hatenadiary.jp

土手沿いのほたるぶくろをふくらまし急げ電車よ君の個展へ

 

あれも愛 小さな小さな伝説となりてあなたの靴の恋文

 

 かわいい歌が多いです。解説には

 

第1歌集「うさぎにしかなれない」は1974年の刊行である。この少女趣味的でセンチメンタルなタイトルはとても現代的であり、全共闘時代バリバリに出された歌集とはにわかに信じられない。作風も素直な口語短歌であり、21世紀に出た歌集だと言われても受け入れられてしまいそうな雰囲気である。(中略)村木道彦は学生運動はなやかな時代であえて「ノンポリティカル・ペーソス」を提唱し作風から政治性を排した。吉沢もまた、全共闘世代でありながらノンポリティカル・ペーソスの追求者だったのだろう。 

 

と書かれています。今、どちらかというと「社会詠」は歌人として「選び取る」道(ほっといたら詠まない)って感じがしますが、当時はむしろ社会性・政治性を排除することを「選び取る」ということだったのでしょうか。

 

 それにしても「うさぎにしかなれない」ってタイトル、1974年とは思えないですね。Wikipediaで1974年の日本を調べると、ベストセラーは五島勉の『ノストラダムスの大予言』、山崎豊子の『華麗なる一族』でした。流行のキャッチフレーズは「野球は巨人、ガムはロッテ」「ヒデキ、カンゲキ!!」などで、全く言語感覚が違いますね(笑)。

(ところでキャッチフレーズに「美人しか撮らない」というカメラの広告のフレーズがありましたが、登場する文脈がどうあれ今なら炎上案件だなーとか思って眺めてた。。)

 

 解説では「すなおすぎる」と指摘されていましたが、恋人の輪郭がくっきりしていることも特徴的で、おそらく実在の人なんでしょう。彼氏は画学生らしく、「エッチング」「恋文」「絵ろうそく」など色んなものをくれる人のようです。なんかジッタリンジンの『プレゼント』思いだすよね(笑)。

 

あなたが私にくれたもの キリンがさかだちしたピアス

あなたが私にくれたもの あの日生まれた恋心

大好きだったけど彼女がいたなんて

大好きだったけど最後のプレゼント

Bye bye my sweet darling

さよならしてあげるわ

 

この男はなんでこんなに物をくれたのだろうか…。(まあ男じゃないかもしれませんが、とにかく)

 

たわむれのスナップにわが告げ得ざる語彙ありありと写されていよ

 

 この歌読んで、昔見た映画のこと思い出しました。時々ふと脳裏に浮かぶのですがタイトルとか全然思い出せなくて、もう一生再会できないだろうなって思う映画です。確か「視線」がテーマの推理物でアメリカじゃない外国映画でした。警察が被害者の写っている写真の中で彼女を見つめている男を容疑者として追うんだけど、その警察も男女2人で、かつて男の方が女の方に思いを寄せていて、女は別の男と結婚したんだけどすでに離婚していて、捜査の過程でたまたま仲間内で撮った昔のスナップ写真が出てきて、その中で(まるで殺人犯の男のように)彼女を見つめている自分に気付く、というシーンがあったような…。全体的にうろ覚えなのがすごく悔しいです。あと覚えてるのが、犯人がサッカーファンでサッカー場で張り込みするシーン。それしか覚えておらず全然探せない(笑)。

 全然話逸れましたが、たわむれのスナップに自分の語彙がありありと写されているのは少し怖いような気がします。タイトルの「うさぎ」は「逃げていくものの象徴なのだろう」と解説に書かれていました。つまり「うさぎにしかなれない」とは、「逃げていくしかない」という意味なのかもしれず、そういうイメージも相まってより上記の映画が思い出されます(笑)。

 

 

9時過ぎてきみが眠ってしまったらハートも鶴もほどいてあげる (yuifall)