「一首鑑賞」の注意書きです。
23.マヨネーズのふしゅーという溜息を星の口から聞いてしまった
(蒼井杏)
同じ「マヨネーズ」と「星」の組み合わせで面白いなって思ったのがこの歌です。これも『橄欖追放』で出会いました。
確かに、中身が減ってきたマヨネーズの胴体を押すと「ふしゅー」ってなるんですよね。「マヨネーズ」と「星」の組み合わせがなんとなく寂しいもののように感じられます。
この人の歌、オノマトペに着目して紹介されていて面白かったです。この歌では「ふしゅー」ですけど、他に「れん びん れん びん」「ぽりん」「あわあわうふふ」「んんっ」「ぱきっぱきっ」などの歌が取り上げられています。気になった方は引用元のページもしくは歌集をぜひ。
冒頭に取り上げられている
縦向きの見本見ながら横向きに落ちてくるのを待つ缶コーヒー
読んで、そうだな!って思った。解説に
一読して「アッ!」と思った歌だ。なるほど言われてみれば確かに自販機の缶入り飲料の見本は縦向きにディスプレイされている。しかし金を投入しボタンを押して出て来る現物は横向きである。当たり前と言えばそうなのだが、「なるほど言われてみれば」感が強い。短歌はこのように日常の些細なことを取り上げて「アッ」と思わせるのに適した詩型だ。そして一首の明意 (explicite meaning)、語用論で言うところの「言われたこと」(what is said)の解釈が一応終了すると、一首は「短歌的喩」の作動によって暗意 (implicite meaning)のレベルへと跳躍する。掲出歌で言えばそれは、「外見と内実の相違」「理想の夢と現実とのくいちがい」ということになるのだろうが、たぶんこれは深読みのしすぎで作者の意図はそこにはあるまい。
とありました。
個人的には「今まで意識してなかったけど確かにそうだよなー」短歌の一種として、中澤系の
かみくだくこと解釈はゆっくりと唾液まみれにされていくんだ
を連想しました。
実はこの人のページに引っかかったのは、黒瀬珂瀾などが昔発行していた同人誌「sai」でサイト内検索したからなのですが、どこに「sai」があるんだ、と思っていたら上記の(what is said)の「sai」ですね、おそらく。『瀬戸際レモン』という歌集タイトルも面白いし、偶然だったのですが出会えてよかったと思いました。
それにしても、歌集タイトルってみんな自分で決めてるのかなー。pixivに載せてる二次小説ですらタイトルが思い浮かばない自分としては、どこからこんなインスピレーションを得ているのか不思議でなりません。タイトルとかペンネームとか考えるのすっごく苦手で、このブログタイトルとか見ていただければどれほどセンスがないか一目瞭然かと思われますね(笑)。
裏返る空の音色が気付かせる今はもうない前歯の痛み (yuifall)