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現代歌人ファイル その9-盛田志保子 感想

山田航 「現代歌人ファイル」 感想の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

盛田志保子 

bokutachi.hatenadiary.jp

世の中でいちばんかなしいおばけだといってあげるよまるかった月

 

藍色のポットもいつか目覚めたいこの世は長い遠足前夜

 

 いきなり解説を引用します。

 

 これらの歌には、無力感・不全感がある種のメルヘンというかたちで表現されている。自分の中のやりきれない気持ちを、空想というかたちで整理しようとする歌である。このような思いは普遍的なものといえ、とても共感できる。

 しかしその一方で、ファンタジックな空想の世界が濃厚な「死」の香りとともに描写されるのも特徴である。これほど世界が「死」と隣り合わせであることに自覚的であるのは若い歌人としては珍しい。

 

 そうかー。でも実はメルヘンって死と相性いいですよね。毒キノコみたいなさ…。一つのメルヘンみたいな…。ゴスロリもその一種な気がする。不思議の国のアリスみたいな作品にどこか危うい魅力があるのは、ロリータ的な性愛の予感の他に、メルヘンと死のモチーフがあるからなんじゃないのかなって思います。

 

トランプを切るとき黒い落ち葉降る一人一人に黒い落ち葉降る

 

 これはなんとなく葛原妙子ワールドを連想させられます。葛原妙子のことそれほど知らないのになんでそう思ったのだろうと考えていたのですが、

 

床に散るキング、スペイド山屋にしのび入りトランプを切りし一人あり (葛原妙子)

 

多分この歌からの連想ですね。「トランプ」という言葉だけじゃなくて、「落ち葉降る」と「床に散る」、「トランプを切る」、「一人」、という単語の類似性から連想したのだと思います。

 

 それにしても、全然作者を知らないにもかかわらず、なんとなく女の人が作っている歌なんだろうなーという感じを受けるのですが、こういうイメージってどこから来るのかなぁ…。今までずっと、作者の背景を知らないことをちょっとどこか後ろめたく思いながら感想を書いてきたのですが、本当は作者のことなんて全然何も、名前も性別も年齢も出身地も知らない方がいいのかな、って思うときもあります。

 

海水に耳までつかり実況のない夏休み後半に続く

 

 最後にこんな歌も紹介されてました。ちびまる子ちゃん(笑)!

 

 

薄青い粘液を月は隠してる暴きたいから割るわけじゃない (yuifall)

ジョーカーになって世界を出て行くよこうなることは決まってたんだ (yuifall)

 

 

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