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「一首鑑賞」-5

「一首鑑賞」の注意書きです。

yuifall.hatenablog.com

5.雨だから迎えに来てって言ったのに傘も差さず裸足で来やがって

 (盛田志保子)

 

砂子屋書房「一首鑑賞」で江戸雪が紹介していた歌です。

sunagoya.com

 場面としてはすごく単純なのですが、面白いですよね。来やがってって(笑)。これは、2003年の歌集『木曜日』からの引用歌のようですので、それ以前に詠まれた歌と考えられます。おそらくすでに携帯電話は一般に普及していた頃と思われますが、そんなもので縛られたくない!みたいに拘りの強い人だったら持っていないかもしれない時代のような。「雨だから迎えに来て」は、傘を持ってきて、という意味だと思うので、この恋人もしくは夫は家にいたのではないかと思われ、携帯であっても家電であってもあまり違いはないのかもしれないけど、なんだか携帯とか持たずにふらっと来たんじゃないかなーって気がする。

 だからこの主人公は、何かの帰り(仕事帰り?)に雨に気付いて自宅に電話して、多分駅とかで待ってて、いつ来るんだろうって思いながら雨の中立って待ってる。で、迎えに来た恋人もしくは夫を見たら、傘もさしていないし裸足だと(笑)。

 

 裸足かー。現代社会において裸足でうろつきまわるのはちょっとハードル高めですね。以前歩いている最中に突然サンダルが壊れたためにやむなく裸足で15分ほど歩いたことありますけど、結構ドキドキしました(笑)。でも、実はみんなそれほど他人の足元なんて見てないんじゃないか?とも思いました。もし雨の日に裸足で歩いてる人とすれ違っても気付くかなぁ。気付かないかも。例え豪雨の中全然傘さしてない人がいたとしても、ああ、この人朝に傘持たないで出ちゃったんだな、って思うくらいで足元まで見ないかもしれません。

 こんな感じで迎えに来られたらどうかなぁ。もしリアル世界で、自分が仕事帰りで重たいバッグと書類とか持ってて、帰ってからご飯作らなくちゃいけないんだったら、すっごい疲れそう(笑)。ですが、そんなタイプの人だったら絶対に折り畳み傘を持ち歩いているはずだし、そもそもこんな男性と交際してません。だから、この主人公は、「来やがって」とか言いながら一緒に濡れて帰ったのであろうと思います。もしかしたら自分も靴脱いじゃって、裸足で。びっしょびしょになってアパートの階段のぼって帰って、玄関で服全部脱いじゃってさ。その後のことはご想像にお任せしますが、こういう生き方してみたかったけど無理だなって折り畳み傘持ち歩いてる私は思う(笑)。

 あと、「傘」は世間の辛さ的なものから守ってくれる何かの象徴に思えなくもなく、守ってくれるような甲斐性のある男でなくてもいい、というメッセージなのかもしれませんが、この読み方はちょっと平凡すぎるな。結局、結婚生活とは裸足で傘もささずに雨の中に飛び出して行くようなものなのかも、と超適当にまとめてみた(笑)。

 

 

いくたびも見上げてしまう雨音を持たない傘は心細くて (yuifall)

 

 

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